経済金融

【ドル円・クロス円】円安は続く?日銀・FRBの利上げとユーロ安から2026年末を予想

青髭

ドル円は一時期153円台まで円高になっていたが、10月10日現在は158円台まで円安に傾いている。

9月に日銀は利上げを実施し、さらに10月6日には植田日銀総裁が「基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定さ​せていくという観点が、これまでよりも重要にな​ってきている」とコメントし、利上げペースを切り上げることを示唆している。

筆者はこれまで円高はサブシナリオとし、日銀のターミナルレートは2%前後と予想していたが、結論、この予想はまだ継続である。日銀が利上げしたとしても、FRBも利上げが予想されること、日本のインフレは欧米に比較して穏やかであり利上げのターミナルレートが意識されやすいためである。

ドル円はその名の通り日本円とドルの関係で水準が決まる。その為、日銀やFRBの動向が重要になってくる。一方で、国際的にはドルに次いでユーロが重要であり、ドル円の裏テーマにはユーロとドルの関係も重要である。

今回はユーロの状況も加味しつつ、円安の見通しについて考えてみる。

日銀の利上げはペースアップか

日銀の利上げペースは今までの半年に1回程度から3ヶ月に1回程度にペースアップしそうである。ただし、ターミナルレートは2%程度であり、それ以上の利上げは慎重に判断されることだろう。

理由は以下の通りである。

  • 10月1日付の日銀「主な意見」では、「どちらかといえば景気の下振れより物価の上振れが気になる状況が続いている。」「わが国を取り巻く金融環境に大きなレジーム転換が生じており、その確度はここ数か月で強まっている。」「引き続き、利上げによって緩和度合いを調整する必要がある。物価上振れの兆候がみえれば、そのペースを速めざるを得ない。」等、昨年と比較すると明らかに利上げに対して前向きなコメントが並んでいる。
  • ハト派寄りとされ、9月の金融政策決定会合で利上げに反対した日銀の佐藤​綾野審議委員は、7日付の共同通信の‌インタビューで、「現在の金融環境は緩和的だ」とし、政策金利を「​段階的に調整していくと​いう方針には賛成している」と⁠述べた(10月7日付ロイター通信)。
  • 高市首相は10月8日の衆院本会議で「現在日本経済は物価の持続的下落という意味でのデフレではない状況であり、いわゆるリフレ政策が必要な局面ではないと考えている。」と答弁。これは現在の経済状況が続く限り、特段利上げを牽制しない意思表明とも読める。

上記を総合すると、恐らく来年春までにあと2回は利上げが実施され、その後来年中に2%まで利上げが実施される確度が高まっていると考える。

ただし・・、今までにないペースで利上げしたとしても、直ちに円高になるとは考えにくい。理由は以下の通りである。

  • 日本経済は実質賃金プラスが続いているが、個人消費は弱い状況である。これは日銀自身が認めており、上述の「主な意見」でも言及されている。また、日本のCPIは8月が1.9%であり、上昇傾向にあるもののまた2%に到達していない。2%を大幅に超える利上げは困難な状況だと考える。仮にターミナルレートが2〜2.25%であるならば、欧米より低い水準であり金利差の大幅な縮小は難しい。
  • 10月8日公表のFOMC議事要旨で多くの高官が追加利上げに言及しており、今後更なる利上げが予想される。
  • 9月上旬以降、投機筋はネットで円ロングポジションが優勢となっている(にも関わらず、為替は円安方向)。今後投機筋の動向は不明だが、投機筋の円ロングが積み上がっており、将来その解消に伴う円売り圧力が発生する可能性がある。

※補足①
物価上昇率2%と政策金利2%は同じ意味ではない。政策金利の到達点は、中立金利、実質金利、需給ギャップ、賃金、期待インフレ率によって左右される。
ただし・・、現状では予想される中立金利の推定幅が大きいのと日本のBEIは2.2%程度であること、コアCPIは1.7%であることを考慮すると、筆者はターミナルレートは2%〜2.25%程度と考える。

ユーロ安の影響

このところ対ドルのユーロ安が続いている。原因としては以下が、考えられる。

  • フランスの財政不安が強まっている。フランスの10年国債利回りは2月の約3.2%から5%まで上昇している。
  • 原油・天然ガス高による欧州経済への打撃。特にドイツの化学、自動車、素材産業はエネルギー価格に敏感である。
  • 米国金利の上昇とECBの利上げ慎重姿勢。ECBは9月に利上げを実施しているが、追加利上げには慎重姿勢を示している。

これはどちらが先かの話になりそうだが、欧州経済が弱くユーロ安が続く状況では、相対的にドルが強くなり、結果的に円安が解消しにくい状況は考えられるだろう。

※補足②
ユーロが弱い場合は円高を妨げやすいが、絶対ではない。例えば、欧州経済や財政が深刻な状況に至った場合は当然対円でも弱くなる。

円高になる条件

冒頭に述べたように、筆者は現在のところ円高はサブシナリオと考える。しかしながら、全く可能性として考慮しなく良いとは思わない。

むしろ、一定の状況では円高に振れる可能性も十分に考えられる。備えておく必要はあるだろう。

条件としては以下が考えられる。

  • イラン戦争の終結と資源価格の下落:現在イラン戦争は終戦の兆しが見えていない。米国もイランも妥協の余地は無さそうである。ただし、以前の記事でも書いているが、イラン経済は年末から来年1月にかけてターニングポイントを迎える可能性が高い。また、9月29日にゴールドマンサックスが発表した内容によると、湾岸諸国の原油輸出量は2025年の水準まで回復している。
    原油等の価格に対する地政学的リスクの懸念が減退した場合、資源価格は下落し諸外国のインフレや経済に対する圧迫は減るだろう。結果的に利上げ観測は減退する可能性はある。資源輸入国の日本やユーロは相対的に通貨や経済が強くなる可能性はあるだろう。
  • FRBの利上げ停止:FRBが9月に利上げした要因として、原油・エネルギー高、AI・データセンター投資、底堅い個人消費と雇用が挙げられる。これらの前提条件が崩れ、FRBの利上げが停止又は利下げが意識され、尚且つ日銀の利上げペースが変動しない場合、円高に傾きやすくなるだろう。

現在のところ、重要なのはイラン戦争(資源価格)とFRBの動向と考える。

まとめ

色々と書き連ねたが、やはり円高はサブシナリオである。

イラン戦争が続き、AI・データセンターインフラへの投資が続き、米国経済が堅調である間は現在の円安が続くのではないか。

一方で、最近の日銀の動向は利上げのペースアップを示唆しており、以前のようなドル円160円台を意識するような状況ではないと考える。

もし大幅な円高に傾く事態になれば、ポートフォリオの点検も必要になってくるだろう。今後も為替の動向に注視していきたい。

出典

  • 日本銀行|2026年9月金融政策決定会合「主な意見」
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2026/index.htm⁠
  • FRB|2026年9月FOMC議事要旨
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20260916.htm⁠

  • 総務省統計局|2026年8月全国消費者物価指数
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html⁠

  • ECB|2026年9月10日金融政策決定
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2026/html/ecb.mp260910~314e508016.en.html⁠

  • CFTC|2026年10月6日時点の投機筋の円先物ポジション
https://www.cftc.gov/dea/futures/deacmelf.htm⁠

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会社員、個人投資家
会社員として本業を続けながら、日本個別株に投資。割安性、業績サイクル、構造改革、株主還元に加え、為替・金利・資源市況から企業の変化点を分析しています。
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