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【日本株】住友化学は半導体銘柄になれるか|株価再評価の条件と2Q決算の確認点

青髭

現時点の住友化学は「半導体材料を成長ドライバーに持つ総合化学株」であり、半導体純粋株ではない。ただし、半導体材料がICTの増益を牽引し、前者のROIC・ROE改善につながれば、市場の評価軸が変わる可能性はある。

住友化学は、AIや先端半導体の成長を取り込める企業なのか。

半導体材料の事業展開を見ていると、私はその可能性を感じる。フォトレジストや半導体用ケミカルに加え、後工程材料、光通信向けの材料へと領域が広がっているからだ。

一方で、半導体関連の発表が増えることと、住友化学全体の利益が増えることは、同じではない。筆者は住友化学を保有しているが、この点は期待と分けて考える必要がある。

今回の結論は、住友化学の再評価を考えるには、半導体材料の成長がICT部門の採算と全社の資本効率を改善するかを確認したいというものだ。低収益事業の改革と現金創出も進めば、企業全体への評価が変わる可能性がある。

その仮説を、現在の利益構造、中期計画、次の2Q決算で確かめてみたい。

※情報基準日は2026年10月4日。2026年度は2026年4月~2027年3月を指す。会社の実績・計画と、筆者の計算・考察を区別して記載する。

半導体材料は、既に具体的な成長事業である

住友化学は、アグロ&ライフとICT&モビリティを成長ドライバーと位置付けている。中期経営計画では、戦略投資の約8割をこの2領域に集中させる方針だ。半導体だけへの配分ではないが、事業構成を変えようとする経営の意思は読み取れる。[1]

具体的な目標もある。高純度ケミカルと機能性ケミカルでは、2030年にそれぞれ2024年度比で売上収益を2倍にする方針を示した。[2]

2026年8月には、光通信などに使うInP(インジウムリン)エピウエハの量産・販売開始も発表している。この製品群で売上高100億円規模を目指す時期は2030年代半ばであり、足元の利益とは時間軸が異なる。[3]

これらを踏まえると、半導体材料を単なる研究テーマとして扱うのは適切ではない。ただし、売上目標を達成することと、投資に見合う利益を得ることは別の課題である。

ICTの利益比率は約25%。半導体単独の比率は分からない

まず、現在の会社全体の利益を確認する。

|コア営業利益      |2025年度実績|2026年度会社予想(5月公表)|
|全社            |2,084億円  |2,150億円         |
|ICT&モビリティ  |530億円   |550億円           |
|ICT/全社(筆者計算)|25.4%   |25.6%           |

出典:2025年度決算および経営戦略説明会資料。[4]

ICTには、半導体だけでなくディスプレイやモビリティ関連も含まれる。ICTの25%を、そのまま半導体の利益構成比として扱うことはできない。

確認した資料では半導体材料単独の利益が示されていない。他事業に損失があれば、半導体利益がICT全体の利益を上回ることも計算上はあり得るため、「半導体の比率は必ず25%未満」とも断定できない。

分かるのは、半導体を含むICTが利益の柱の一つであり、半導体以外の事業も全社利益を大きく動かすということだ。農薬、石化、医薬品などの変化を無視して、半導体需要から住友化学のEPS(1株当たり利益)を予測するのは難しい。

この複雑さは、企業評価を考える際の論点になる。ただし、事業が多いという事実だけで、現在の株価が割安だとも、市場が半導体事業を見落としているとも結論付けられない。

1Qには「半導体出荷が伸びてもICTは減益」という反証がある

2026年度1QのICT部門は、売上収益が前年同期の1,374億円から1,486億円に増加した。一方、コア営業利益は184億円から130億円へ減少した。会社は半導体の出荷増を説明しているが、ディスプレイの売価下落や前年の事業売却益の剥落などが重なった。[5]

筆者計算のICTコア営業利益率は、約13.4%から約8.7%への低下となる。

これは今回の仮説を検証するうえで重要な反証だ。半導体材料が成長していても、その効果が他事業の減益や費用増に吸収される可能性がある。

さらにICTの増収112億円には、邦貨換算差86億円、数量差21億円、売価差5億円が含まれる。セグメント全体の増収率を、半導体材料の販売成長率と読み替えることもできない。[5]

今後確認したいのは、需要の強さに加え、実際の販売数量、価格、固定費の吸収である。半導体材料の採算を独立して確認できない間は、部門全体の利益率と会社の要因説明を組み合わせて読む必要がある。

再評価の兆候は「利益比率」だけでなく「増益への寄与」に表れる

現在の利益構成比だけでは捉えきれない変化がある。

例えば、全社利益が200から300へ増え、半導体利益が40から120へ増えたとする。半導体の利益構成比は40%でも、全社増益100のうち80を半導体が生んでいる。

これは説明用の仮例だが、こうした状態になれば、半導体の需要や採算が企業の利益成長を左右するようになる。私は住友化学でも、この変化を追いたい。

中計には手掛かりがある。ICTの主力製品販売拡大による増益効果230億円のうち、半導体材料が160億円、新規ディスプレイ等が70億円とされている。半導体は、この販売拡大効果の約7割を担う計画だ。[1]

ただし、これは全社増益の7割を半導体が担うという意味ではない。 全社の利益改善には、石化の改革や農薬の拡販なども含まれる。また、増益への寄与と、会計上の「限界利益」は別の概念である。

会社計画から読み取れるのは、半導体材料がICTの有力な成長要因だということ。全社の増益を継続的に牽引する事業になったかは、今後の実績で確認する必要がある。

2027年度のICT利益800億円を、現在地から見る

中計で示されたICTのコア営業利益目標は、2027年度800億円である。ただし、資料の「650億円→800億円」の起点は、2024年度の当時の予想だ。2025年度の実績や2026年度の予想を起点にした数字ではない。[1]

2025年度実績530億円から目標までの差は270億円。2026年度会社予想550億円からなら250億円で、約45%の利益拡大が必要になる。どちらも筆者の差し引き計算であり、会社が新たに示した増益予想ではない。

なお、全社の2027年度中計目標2,000億円は、2026年度会社予想2,150億円を下回る。「800÷2,000=40%」だけを将来の利益構成比と捉えると、更新された全社見通しとの違いを見落とす。[4][6]

2024年の経営戦略説明資料では、当時のICTソリューションについて2030年度のコア営業利益1,000億円を目指す方向も示されていた。[7] 長期の方向性を考える材料だが、半導体単独の利益目標ではなく、その後の部門再編や計画の更新を踏まえて読む必要がある。

私は、半導体の売上が大きくなったという説明以上に、ICT利益800億円へ向けて、何が、どれだけ利益を増やすのかを確認したい。

株価再評価を支えるのは、ROICとROEの改善

半導体事業が拡大しても、多額の投資を続け、資本に対する利益が低いままなら、企業全体の評価改善は容易ではない。

そこで見るべきなのが、ROICとROEである。

● ROIC:事業に投入した資本から、どれだけ利益を生むか。

● ROE:株主に帰属する自己資本に対して、どれだけ利益を生むか。

中計の公表目標は、2027年度の全社ROE8%、全社ROIC6%、ICTのROIC11%である。会社は、成長領域への資源集中と構造改革を通じた資本効率の改善を掲げている。[6]

一方、2026年度の会社予想はROE6.8%、ROIC5.5%だ。利益回復が、そのまま全ての資本効率指標の改善につながるわけではない。[4]

半導体などの成長事業で利益を増やすことに加え、採算に見合わない資本を減らすことが必要になる。ただし、売却や撤退には損失や費用も伴い得る。部門の縮小自体を評価するのではなく、残る事業の収益力と現金創出が強くなったかを見たい。

PBRとROEの関係をどう読むか

PBR、PER、ROEの関係は、概念的には次のように整理できる。

PBR ≒ PER × ROE

|ROEの仮定|PER14倍の仮定|PER18倍の仮定|
|6%    |PBR0.84倍 |PBR1.08倍 |
|8%    |PBR1.12倍 |PBR1.44倍 |
|10%   |PBR1.40倍 |PBR1.80倍 |
|12%   |PBR1.68倍 |PBR2.16倍 |

※全て筆者の説明用計算。住友化学の株価予想や会社目標ではない。ROEは小数に直して乗じている。

この関係は、利益と自己資本の基準をそろえた場合の算術関係である。一般的なROEは期中平均の自己資本を使うため、期末BPSを使うPBRとは厳密にはずれる。

また、ROEが上がればPERも上がる、という法則ではない。 成長が既に株価に織り込まれていたり、利益が一時的だったりすれば、PERが低下することもある。借入によってROEが高まった場合も、事業の収益力改善とは分けて考えたい。

私が期待するのは、半導体材料の利益成長と改革によって、資本効率と利益の持続性が改善することだ。それが継続して確認されれば、企業を見る際の評価軸も変わる可能性がある。

最近の発表は、収益化までの距離を分けて見る

  • InPエピウエハ:2026年8月に量産・販売開始。2030年代半ばに売上高100億円規模目指す→顧客採用、販売拡大、投資回収を要確認。
  • サムスン電機とのガラスコア基板事業:2026年7月に合弁契約。2027年度下期を目標に供給体制を整備予定→設立・量産の進捗、初期費用、住友化学への利益寄与を要確認。
  • タタ・エレクトロニクスとのインド展開:2026年9月に協業検討の覚書を締結→正式な事業化、投資額、供給開始時期を要確認。
  • 九州大学とのKNN薄膜基板研究:2026年9月に光変調器の高速動作・高い変調効率を実証→顧客評価、量産性、商用採用を要確認。

出典:各社公表資料。[3][8][9][10]

これらは成長領域の広がりを示す。ただし、量産・販売、合弁契約、協業検討、研究成果では、利益への距離が異なる。合弁の業績が全額住友化学へ帰属するわけでもない。

短期の利益は、既存材料の販売と採算を中心に確認する。新規事業は、発表後の進捗と資金負担を追い、中長期の可能性として評価したい。

2Q決算で確認したい数字と判断基準

会社のIRイベントページでは、2026年度2Q決算は11月2日の発表予定となっている。[11]

まず、上期累計と2Q単独を分けて比較する。次の表は、8月公表の上期予想から1Q実績を差し引いたものだ。2Q単独欄は筆者の計算であり、会社が独立して公表した2Q予想ではない。

|コア営業利益(億円)  |1Q実績|上期会社予想|差し引きによる2Q単独の目安|
|全社          |623 |1,250 |627           |
|ICT&モビリティ   |130 |280   |150           |
|アグロ&ライフ     |96  |290   |194           |
|エッセンシャル&グリーン|272 |420   |148           |
|住友ファーマ部門    |188 |320   |132           |

出典:2026年度1Q決算説明資料。[5] 億円単位の丸め値を使用。全社には未掲載部門・全社費用等も含む。住友ファーマ部門は住友ファーマ単体の公表値と異なる。

① ICTは、増収が利益率改善につながったか

ICTの2Q単独利益の目安は150億円だ。同様に逆算した売上収益は1,614億円で、コア営業利益率は約9.3%となる。

この水準との比較に加え、半導体の販売数量、設備稼働、固定費負担の説明を確認したい。部門利益が増えても、ディスプレイの改善や売却益が主因なら、半導体の採算改善とは区別する。

出荷が伸びても利益寄与が限定的なら、先行費用の期間と回収の見通しが次の論点になる。部門全体の利益率だけで、半導体単独の利益率を断定しないことも重要だ。

② 石化の利益は、市況の追い風が弱まっても残るか

1Qの全社利益改善には、エッセンシャル&グリーンの回復が大きく寄与した。会社は、ペトロ・ラービグの交易条件改善や一時的な在庫評価益を説明している。[5]

同部門の2Q単独の目安は148億円で、1Qの272億円を下回る。前四半期比減益だけで回復の失敗とは判断できない。

確認したいのは、在庫要因を除いた製品と原料の価格差、操業状況、下期の採算である。市況の追い風が弱まったときの損失耐性が改善していれば、半導体や農薬の成長を全社利益に残しやすくなる。

③ 通期予想は、どの事業・前提で更新されるか

会社は8月資料で、上期決算時に年間公表予想を改めて説明する予定としている。[5]

見るべきなのは、上方修正の有無と同時に、その中身だ。半導体や農薬の販売拡大によるものか、石化市況・在庫評価・為替によるものかで、翌期以降への評価は変わる。

特に、全社予想が上がってもICTの見通しが変わらなければ、今回の半導体成長の仮説が直接裏付けられたとは言えない。下期に必要な利益、為替・原料の前提、事業別の利益見通しを合わせて確認したい。

1Q好決算で投資家の期待が高まっている可能性はある。ただし、実際の市場期待や織り込み度合いは別途検証が必要だ。会社計画の達成度だけで、決算後の株価反応を予測することはできない。

④ 利益は現金になり、資本効率につながっているか

1Qの営業キャッシュ・フローは約50億円、フリー・キャッシュ・フローは約443億円のマイナスだった。[12] 季節性や投資時期の影響があるため、この四半期だけで良否は決められない。

2Qでは、上期累計の現金回収と、売上債権・棚卸資産の変化を見たい。成長投資による支出は将来の利益につながるか、負債への負担は管理できているかも確認する。

農薬や医薬品の採算も欠かせない。他部門が悪化すれば、全社の資本効率は改善しにくい。ROEを見る際は、コア営業利益から金融損益・税金・非支配持分を経て、住友化学株主に帰属する利益がどれだけ残るかまで追いたい。

⑤ 半導体の利益貢献が、より明確に開示されるか

半導体材料の売上や利益が独立して開示されれば、成長と採算を検証しやすくなる。開示が増えること自体は有用だが、それだけで経営側の意図や将来の高評価を断定することはできない。

特に期待したいのは、「半導体が好調」という説明から一歩進み、増益への寄与、投資回収、資本効率を継続して確認できる情報である。

配当24円は、利益と資金配分の結果として考える

現在の2026年度会社予想配当は年間16円だ。会社は将来的な年間24円以上の早期実現を目指しているが、24円は確定配当や下限保証ではない。[13][14]

仮に配当性向30%で24円を賄うなら、必要なEPSは80円となる。

24円 ÷ 30% = 80円

これは筆者の説明用計算であり、会社が公表した増配条件ではない。実際には設備投資や負債削減、利益の持続性も考慮される。

配当回復を期待する立場だからこそ、利益の総額に加えて、その利益が翌期も続くか、投資後の現金が残るかを確認したい。

まとめ

住友化学には、半導体材料の成長を取り込む事業と投資計画がある。ただし、半導体の出荷が増えてもICT全体が減益する現状を踏まえると、企業全体の再評価が既に確実になったとは言えない。

私は今後、半導体の販売拡大がICTの利益率を改善し、構造改革と合わせて全社の資本効率を高めるかを追っていく。目指す姿として考えたいのは、半導体・農業などの高付加価値分野が、利益成長を持続的に支える企業である。

2Qでは、ICTの2Q単独利益約150億円という目安、半導体の採算、石化の利益の持続性、通期予想の事業別前提、現金創出を確認したい。

これらが改善していれば、保有の根拠は強まる。一方、売上成長が利益に結び付かず、他事業の悪化や資金負担が増えるなら、期待する収益水準と投資の前提を見直す必要がある。

半導体事業への期待を、利益・資本効率・現金創出の実績で確かめる。 これを住友化学の中長期保有を判断する軸にしたい。

※筆者は住友化学株を保有している。本記事は公開情報に基づく筆者の考察であり、将来の業績や株価を保証するものではない。

出典

● [1] 住友化学「2025~2027年度 中期経営計画説明会資料」(2025年3月4日、26~30頁など)

● [2] 住友化学「韓国拠点への追加投資で半導体用ケミカル事業をさらに強化」(2025年5月13日)

● [3] 住友化学「AIデータセンターの進化を支えるInPエピウエハの量産・販売を開始」(2026年8月31日)

● [4] 住友化学「2025年度決算および経営戦略説明会資料」(2026年5月14日、6~9頁)

● [5] 住友化学「2026年度第1四半期 決算説明資料」(2026年8月4日、7~10・17~20頁など)

● [6] 住友化学「中期経営計画」

● [7] 住友化学「2024年 経営戦略説明会資料」(2024年4月30日、34頁)

● [8] 住友化学「サムスン電機とのガラスコア基板事業に関する合弁会社設立について」(2026年7月2日)

● [9] 住友化学「インド タタ・エレクトロニクスと半導体材料の協業検討に関する覚書を締結」(2026年9月19日)

● [10] 住友化学・九州大学「KNN薄膜基板を用いた光変調器の研究成果」(2026年9月28日)

● [11] 住友化学「IRイベント」

● [12] 住友化学「2027年3月期 第1四半期決算短信」(2026年8月4日)

● [13] 住友化学「株主還元・配当」

● [14] 住友化学「企業価値向上に向けた取り組み」

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青髭
会社員、個人投資家
会社員として本業を続けながら、日本個別株に投資。割安性、業績サイクル、構造改革、株主還元に加え、為替・金利・資源市況から企業の変化点を分析しています。
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