【ドル円・日本株】円高反転を見越して「ニトリ」は買いか?5つの好材料と3つの懸念点を徹底分析
長らく続いた歴史的な円安によって、大きなダメージを受けてきた銘柄の筆頭といえば「ニトリホールディングス(9843)」だろう。輸入コストの増大が利益を圧迫し、株価もかつての勢いを失い、歴史的な低水準で低迷している。
しかし、ここに来てマクロ環境(為替・金利)に変化の兆しが見え始めている。「為替の反転(円高)を狙って、今のうちにニトリを仕込むべきか否か」。
今回は、マクロとミクロの両面から「ニトリを買う根拠」と「買わない(見送る)根拠」を整理し、私個人の投資戦略について考察してみたい。
ニトリの「買い」を検討すべき5つの根拠
まずは、現在のニトリを取り巻く環境の中で、ポジティブに評価できる(買いの根拠となる)要素から見ていこう。
① 歴史的低水準にある株価
何と言っても、現在の株価は過去のバリュエーションと比較しても明確な割安水準(歴史的低水準)にある。悪材料はある程度織り込まれており、ダウンサイドリスク(下値不安)が限定的になりつつある点は、長期投資家にとって魅力的だ。
② 円安の「限界」が見えてきた
足元の為替動向を見ると、イラン戦争の緊迫化という強烈なドル買い(有事のドル買い)要因がピークに達した際でも、ドル円は160円の壁を明確に超えることはなかった。これは、投機的な円安進行がいよいよ限界に達しつつある強力なサインではないだろうか。
③ 日米CPIの鎮静化と円高バイアス
日米ともにCPI(消費者物価指数)の伸びは落ち着きを見せている。米国の大幅な追加利上げは見込みにくく、日米金利差の拡大余地は乏しい。今後、イラン情勢の鎮静化というプロセスを経れば、リスクオフの円買いが入りやすく、為替は円高方向に振れやすい地合いが整っている。
④ ヘッジファンドのポジション変化
投機筋(ヘッジファンド)の動向にも変化の兆しがある。これまで積み上がっていたドル円のロングポジション(円売り・ドル買い)が徐々に解消され、今度はショートポジション(円買い・ドル売り)が構築され始めている。
(※ただし、ショートポジションの積み上がりはいずれ「買い戻し(将来の円売り)」に繋がるため、中長期的な為替のトレンド転換とまでは断言できない点には注意が必要だ。)
⑤ 月次売上の「逆転の発想」
ニトリの月次国内売上高を見ると、客単価こそ上昇しているものの、客数などは前年割れが目立つ。一見ネガティブだが、株式投資は「変化率」を買うゲームだ。ハードルが下がっている分、今期は少しの改善で「前年同期比プラス(伸びしろ)」を作りやすく、決算でのポジティブサプライズを生みやすい土壌ができているとも言える。
ニトリを「買わない」と判断すべき3つの懸念点
一方で、為替の追い風が吹いたとしても、ニトリの「企業としての根力(ミクロ要素)」には看過できない懸念点が存在する。
① 本業(商品力)の衰退リスクとブランドイメージのジレンマ
月次の客数減少傾向は、単なるマクロ要因だけでなく「ニトリの競合力自体が落ちている」可能性を示唆している。客単価の上昇は価格転嫁(値上げ)によるものだが、消費者の脳内には依然として「お、ねだん以上。」という「安さ」のブランドイメージが根強く残っている。このイメージから脱却し、高単価でも客を呼べるプレミアムなブランドへと昇華できていない現状は、非常に苦しい。
② 円高回帰の「限界」
仮に円安が是正されたとしても、日本の構造的な貿易赤字などを踏まえると、昔のように「1ドル100円〜120円」といった大台まで円高が進行する可能性は極めて低いだろう。つまり、ニトリの輸入コストが劇的に改善されるような「ボーナスタイム」は二度と来ないかもしれないのだ。
③ 海外展開の足踏み
国内市場が人口減少で縮小する中、ニトリの成長ストーリーの要は「海外展開」である。しかし、足元ではその海外展開が足踏み状態にある。成長エンジンが点火しないまま国内のジリ貧を為替でカバーするだけの構造では、長期的な株価上昇は見込みにくい。
青髭の結論:ニトリは「買い」か?
以上を踏まえ、私個人の投資判断を結論づけたい。
現在のニトリは、「マクロの追い風(円高期待)」と「ミクロの向かい風(客数減・海外不振)」が激しく綱引きをしている状態だと言える。
会社員の個人投資家として長期保有を前提とするならば、為替という「外部要因」に依存したトレードは少しリスクが高いと感じている。ニトリが真に「買い」となるのは、円高への反転時ではなく、「客数の回復」や「海外事業の再成長」という、企業努力による本業のモメンタム回復がデータとして確認できたタイミングではないだろうか。
もちろん、為替の反転を狙った短期〜中期のスイングトレードとしては、今の歴史的低位な株価は絶好の「仕込み場」になる可能性は十分にある。しかし、ポートフォリオのコアとして長期でどっしり構えるには、まだミクロの不安要素が大きすぎるというのが私の見立てだ。
相場は逃げない。焦って飛び乗るのではなく、引き続き月次データと為替の動向を冷静にモニタリングしながら、自分の中の「買いシグナル」が灯るのを待ちたいと思う。
