【ドル円・日本株】米国中間選挙を起点とするリベラル巻き戻しの可能性と市場への影響
現在、株式市場は各国の金融政策やインフレ動向に一喜一憂している。しかし、水面下では世界的な政治潮流の転換点、すなわち「リベラルの巻き戻し」が始まりつつある兆候がデータとして確認できる。
今回は、直近の各国の選挙結果をファクトとして整理し、それが今年の中間選挙、そして日経平均株価やドル円、各セクターにどのような影響を与えるかを考察したい。
立て続けに起きている政治的異変
保守派や強硬路線の勢いに陰りが見える具体的な事象が、ここ数ヶ月で連続して発生している。
1. ハンガリー総選挙でのオルバン政権崩壊
4月12日に行われたハンガリー総選挙で、親ロ・親トランプ路線で知られ、16年間政権を握ってきたオルバン首相が敗北を認めた。新興野党「ティサ」が圧勝し、16年ぶりに政権交代が確実な情勢となっている。これは欧州における強権的・保守的政治の象徴が崩れたことを意味し、国際政治の力学に大きな変化をもたらす出来事だ。
2. テキサス州とフロリダ州議会補選での民主党勝利
米国南部でも地殻変動が起きている。1月31日のテキサス州上院特別選挙では、2024年の大統領選でトランプ氏が17ポイントの大差で圧勝した共和党の牙城にもかかわらず、民主党候補が勝利した。さらに3月24日のフロリダ州議会補選でも、トランプ大統領の邸宅「マールアラーゴ」がある第87選挙区を含む上下院で民主党候補が勝利を収めている。
3. ジョージア州下院補選での猛追と大統領支持率の低迷
4月7日に行われたジョージア州の連邦下院第14区補選の決選投票では共和党候補が勝利したものの、前回選挙で約30ポイントあった差を、今回は民主党候補が約10ポイント差まで猛追している。同時に、トランプ大統領の支持率はガソリン価格の高騰などへの不満から37〜38%台で低迷している。
米国中間選挙での変動と経済政策への波及
現在の米連邦下院は、共和党と民主党でごく僅かな議席差しか存在していない。上述した補選での連続的な結果や大統領の支持率低下を踏まえれば、11月の中間選挙で議会の状況が大きく変動する可能性は極めて現実的だ。
もし米国議会で民主党が躍進し、世界的にリベラルの巻き戻しが起きれば、保守派が推進してきた減税、関税強化、極端な規制緩和といったインフレ的・財政拡張的な経済政策はやや押し戻されることになるだろう。
日経平均・ドル円・セクター別の考察
この「リベラル巻き戻し」が日本の金融市場に与えるインパクトを整理しておく。
① ドル円への影響
保守派の財政拡張政策が後退すれば、米国のインフレ懸念と長期金利の上昇圧力は緩和される。これは日米金利差の縮小に繋がり、現在まで続いているドル高・円安トレンドが転換し、円高方向への巻き戻しが起きるのではないだろうか。
② 日経平均株価への影響
円高の進行は、日経平均株価の上昇を牽引してきた自動車や機械など輸出関連企業の業績を下押しする要因となる。そのため、日経平均全体としては上値が重くなる展開が予想される。ただし、日米金利差にドル円があまり反応しなくなっていることもあり、大幅な円高の進行は可能性として高くはない。バークシャーによる東京海上HDへの投資等、依然として日本株投資へ海外投資家は積極的である。ROE基準で見ると、まだ世界と比較しても日本の株式市場は割安なので、多少の円高では上昇軌道の修正は考えにくいだろう。
③ セクター別戦略(円高メリット銘柄へのシフト)
一方で、これまで歴史的な円安で苦しんできた内需・輸入企業にとっては強烈な追い風となる。以前の分析でも取り上げたニトリや良品計画のような小売業は、輸入コストの低減によるマージン改善が期待できる。また、ドル建ての航空燃料コストが低下するANAなどの空運業にとってもポジティブな事業環境となるだろう。
青髭の結論
足元の相場は依然として不透明感が強いが、各国の選挙結果という「ファクト」は、明らかにマクロ環境の転換を示唆している。
兼業投資家として日々のボラティリティに一喜一憂するべきではないが、こうした潮流の変化を見誤ってはならないと感じている。来る米国中間選挙に向け、円高への転換というマクロの追い風と、企業ごとのミクロな業績回復が合致するタイミングを冷静に見極めながら、内需株へポートフォリオをシフトさせる機会を待ちたいと思う。
実際に、円高になるのか、内需株へのシフトが生じるかは不透明である。一方で、可能性が一定程度あるので、ある程度日本の内需株を保有しておくのはリスクヘッジになるかもしれない。
