【地政学リスクと日本株】イランミサイルは「残り半分」。継戦能力の多角的分析と終戦に向けた投資戦略
足元の株式市場は、中東・イラン情勢の緊迫化を伝えるヘッドラインに大きく揺さぶられている。原油高やそれに伴う為替の変動(過度な円安)は、日本株市場にもダイレクトに影響を与える重大なテーマだ。
メディアは「第三次世界大戦の危機」と煽り立てるが、我々投資家は感情を排し、冷徹にファンダメンタルズを見極めなければならない。最大の論点は「果たしてイランに、全面戦争を長期間継続する能力(継戦能力)があるのか」という点である。
結論から言えば、イランの継戦能力は既に限界が見えており、長期的な全面戦争に踏み切る可能性は極めて低いと私は分析している。今回は、その理由を多角的な視点から紐解き、当ブログなりの投資戦略の「結論」を提示したい。
イランの継戦能力を測る「4つの視点」
イランが長期戦に耐えられない理由は、以下の4つの物理的・経済的な制約にある。
1. 弾薬の「半減期」が示すタイムリミット
一部の報道によれば、イランの主力である弾道ミサイルの在庫は「まだ半数近く残っている」という。これを脅威と捉えるメディアも多いが、投資家の視点は逆だ。「すでに半分を消費してしまった」のである。 制裁下にあるイランにとって、高度なミサイルの補充は容易ではない。仮に今回の開戦から現在までの期間で半分を消費したのだとすれば、単純計算で「在庫が完全に枯渇するまでの期間は、今回開戦してから現在に至るまでの期間と概ね同等」つまり、全面戦争となった場合は残り1ヶ月半〜2ヶ月というタイムリミットが弾き出される。つまり、彼らには今のペースで戦闘を継続できる期間が数学的に限られており、遠からず「停戦」というカードを切らざるを得ないのが現実なのだ。
2. 革命防衛隊(IRGC)の資金繰り
イランの軍事力を実質的に担保するIRGCの資金源は、制裁の網の目を縫った中国などへの闇原油輸出に依存している。戦争が激化し、この密輸ルートへの海上封鎖などが強化されれば、資金繰りは瞬時にショートし、周辺の代理勢力への支援も立ち行かなくなる。
3. インフレという「時限爆弾」
イラン国内はすでに数十パーセントの深刻なインフレに見舞われている。これ以上の戦費を捻出するために紙幣を増発すれば制御不能なハイパーインフレに陥る。生活必需品の高騰は国民の暴動に直結し、指導部にとって最も恐れる「体制崩壊」の引き金になりかねない。
4. 孤立した経済の脆弱性
長年の経済制裁によりイラン通貨(リアル)は暴落を続け、経済のファンダメンタルズは平時ですでに満身創痍に近い。近代戦の長期化を支える強靭な経済基盤と生産力は、現在のイランには存在しないのである。
青髭の結論:歴史は韻を踏む。終戦と「逆回転」に備えよ
以上の分析を踏まえ、地政学リスクに対する我々個人投資家の戦略を結論づけたい。
第一に、これまで当ブログでも「歴史的に見て戦争は買いである」と触れてきたが、足元のNYダウや日経平均株価の反発・底堅い動きを見ていると、やはり今回も「歴史は韻を踏んだ」と言えるだろう。我々は今後も、日々の戦況を伝えるノイズに過度に振り回されないことが重要である。
第二に、弾薬の残量や経済の限界を見れば明らかなように、イラン側も米国側も、本音では自分たちにできる限り有利な状況で手早く手仕舞いしたいはずである。そう遠くない未来に、何らかの合意(あるいは事実上の幕引き)ができてもおかしくはない。
第三に、時間が経つほど不利なのはイランである。
米国は巨額の予算編成によって弾薬生産を急ピッチで進める構えを見せている。また、イランは世界の原油の20%が通過するホルムズ海峡の封鎖を「切り札」としてチラつかせているが、これは海峡が平和的に活用されている現状だからこそ有効な脅しに過ぎない。
事態を重く見た日本や韓国など、エネルギーを依存するアジア各国は、死活問題としてテクノロジー、外交、通商を駆使し、死力を尽くして代替ルートの構築や調達先の多角化に奔走している。代替策の構築には年単位の時間がかかり全てをカバーできないかもしれないが、ゆっくりと確実に進行していく。つまり、時間が経てば経つほどホルムズ海峡の戦略的重要性とイランの交渉力は低下していくのである。
最後に、現時点では可能性は高くないかもしれないが、急な停戦やホルムズ海峡の安全確保(解放)が決定された場合、現在の「原油高・円安」というトレンドは一気に逆回転する可能性が高い。
ミサイルの残量が示す通り、戦争は時間がかかってもいつかは必ず終戦する。
我々本業を持つ個人投資家は、目先の恐怖に駆られて狼狽売りをするのではなく、来るべき「終戦」と「相場の逆回転」にしっかりと備え、業績の伴う優良銘柄をどっしりと握り続けていくべきだろう。
※補足
ちなみに、トランプ政権も手早く手仕舞いしたい思惑は当然あるだろう。5月1日以降の継戦には議会の承認が必要である(戦争権限法。ただし、過去オバマ政権がこれを法解釈で逃れているので、現実にはあまり問題にならないかもしれない)。また、気になるのは米国のガソリン高と中間選挙だろう。世論調査によるとイラン戦争に反対の米国人が多いが、一方で共和党支持者、MAGA派、福音派の大半はイラン戦争を支持しており何らかの成果無く戦争を終わらせるのは難しい状況である。イスラエルは再攻撃にスタンバイしている。複雑な状況だが、何らかの合意が締結されても、再び全面戦争になってもどちらも十分に考えられる状況である。
全面戦争になった場合は今度はイランのインフラ設備が標的にされ、イランも当然湾岸諸国等に同様の攻撃を加えることが十分に考えられる。米国も返り血を浴びることになるが、前述の通り最も被害を被り不利な立場になるのはイランである。市場は一旦はかなり鋭敏に反応することだろう。
