【日本株】10年国債3%時代、高配当株を持つ意味はあるのか
日本銀行は9月の金融政策決定会合で追加利上げを決定し、政策金利は1.25%まで上昇した。
これに伴い、日本の10年国債利回りも一時3.1%台まで上昇している。
日本では長年、国債や預金から十分な利息を得ることが難しかった。しかし、現在は元本の安全性を重視しながら、ある程度の利回りを得られる環境へ移行しつつある。
そこで浮かぶのが、次の疑問である。
国債で3%前後の利回りを得られるなら、価格下落や減配の可能性がある高配当株へ投資する意味はあるのだろうか。
筆者の結論を先に述べれば、長期的な資産形成の中心は、今後も株式投資とする方針である。
理由は二つある。
第一に、長期の歴史では、株式のリターンが債券を上回ってきたためである。
第二に、AIは新たな産業革命の初期段階にあると筆者は考えており、半導体企業だけでなく、AIを利用する幅広い企業にも生産性向上と利益成長の機会が存在するためである。
ただし、国債利回りが3%を超えたことで、単に「配当利回りが高い」というだけでは、株式を買う理由として不十分になったとも考えている。
国債3%は本当に魅力的なのか
仮に、100万円を年3.1%の利回りで運用できる国債に投資し、税金や購入価格と額面との差を単純化すると、満期までの年率換算収益は税引き前で約3万1,000円相当となる。収益全体に20.315%課税されると仮定すれば、税引き後では年間約2万4,700円相当、利回りにすると約2.47%となる。
物価上昇率を2%とすれば、税引き後の実質利回りは約0.5%となる。
決して高い実質リターンではないが、日本国債の信用力と、満期まで保有した場合の額面償還を考えれば、十分に魅力的な水準とも言える。
特に、数年以内に住宅購入、教育費、老後資金の取り崩しなどを予定している場合、株式よりも国債や預金が適している。
一方、国債には大きな制約もある。
満期まで保有した場合に得られる名目リターンは基本的に決まっており、経済や企業が成長しても受取利息が増えるわけではない。
また、満期前に売却する場合には、さらなる金利上昇によって債券価格が下落する可能性もある。
※市場で取引される10年国債の利回りと、個人向け国債の適用利率は同一ではない。
国債利回りと株式の益回りは意味が違う
国債と株式を比較する際に使われる指標の一つが、株式の「益回り」である。
益回りとは、株価に対して企業がどれだけの1株利益を稼いでいるかを示す数字であり、PERの逆数で計算できる。
例えば、株価1,000円、1株利益100円の企業はPER10倍である。
この企業の益回りは、
100円÷1,000円=10%
となる。
100万円分の株式を購入したと考えれば、その企業は現在、投資額100万円に対して年間約10万円相当の利益を稼いでいる関係になる。
同じ100万円を投資した場合、国債とPER10倍の株式は次のように比較できる。
| 10年国債 | PER10倍の株式 | |
|---|---|---|
| 投資額 | 100万円 | 100万円 |
| 年率換算収益・企業利益 | 年率換算で約3万1,000円相当 | 企業利益約10万円相当 |
| 利回り・益回り | 3.1% | 10% |
| 実際に受け取る金額 | 利息は表面利率と額面による。償還時には購入価格との差額も生じる。 | 配当分のみ |
| 残った利益 | なし | 成長投資や借入返済などに使用 |
| 元本・価格 | 満期保有なら額面償還 | 株価変動・元本割れあり |
ただし、株式の10万円相当の利益を、投資家がそのまま受け取れるわけではない。
仮に配当性向が40%なら、10万円の利益のうち、約4万円が配当として株主に支払われ、残りの約6万円は会社に残る。
会社に残った利益は、設備投資、研究開発、買収、借入金の返済、自社株買いなどに使われる。
その資金が有効に活用され、将来の利益が増えれば、増配や株価上昇として株主に還元される可能性がある。
反対に、採算の悪い事業や高値での買収に使われれば、企業利益は出ていても株主価値は増えない。
したがって、益回り10%は投資家の期待リターンが10%になることを意味しない。
国債利回り3.1%は、満期保有を前提とすれば比較的確実に受け取れる収益である。一方、株式の益回り10%は、企業が現在生み出している利益を株価と比較した数字であり、将来の配当や値上がり益を保証するものではない。
要するに、国債は比較的確実な3.1%を受け取る投資である。
株式は、企業が生み出す利益の一部を配当として受け取り、残りを将来の成長へ再投資する仕組みに参加する投資である。
高配当株4%との差は意外に小さい
配当利回り4%の株式を課税口座で保有した場合、税引き後の配当利回りは約3.19%となる。
国債の税引き後利回りを約2.47%とすれば、その差は約0.7%ポイントにすぎない。
株式には、株価が20%や30%下落する可能性がある。業績悪化によって減配される可能性もある。
わずか0.7%程度の受取利回りの差だけを目的に、そのリスクを引き受けるのであれば、必ずしも合理的とは言えない。
NISAで株式を保有する場合は配当や売却益が非課税になるため差は広がるが、それでも「配当利回りが国債より高い」という理由だけでは弱い。
株式を選ぶ理由は、現在の配当に加え、企業利益の成長、増配、自社株買い、株価上昇を含めた総合的なリターンにある。
歴史的には株式が債券を上回ってきた
UBSの「Global Investment Returns Yearbook 2026」は、1900年から2025年までの126年間にわたり、世界各国の株式、債券、短期国債、インフレなどを分析している。
米国では、この期間の株式の実質リターンが年率6.6%だったのに対し、債券は年率1.6%だった。
物価上昇分を除いたうえで、年率約5%ポイントの差が存在したことになる。
仮に100万円を30年間運用し、実質リターンが毎年6.6%続けば約680万円になる。一方、毎年1.6%なら約161万円である。
もちろん、これは過去の米国市場の結果を機械的に延長した計算であり、将来の日本株が同じリターンを実現する保証はない。
株式は10年単位で停滞することがあり、投資を始めた時期によって結果も大きく異なる。個別株では、市場全体を大幅に下回る企業や、最終的に価値を失う企業も存在する。
それでも長期的に株式が債券を上回ってきた背景には、企業が利益の一部を設備投資や研究開発へ回し、利益そのものを成長させてきたことがある。
債券の利息には基本的に上限があるが、企業利益と配当には上限がない。この違いは、運用期間が長くなるほど大きくなる。
AIは新たな産業革命の初期段階
筆者が株式投資を選ぶもう一つの理由は、AIによる生産性向上が始まったばかりだと考えているためである。
AIの成長というと、半導体やデータセンター関連企業に注目が集まりやすい。しかし、最終的な恩恵はそれらの企業だけに限られない。
製造業では、需要予測、品質管理、設備保全、研究開発の効率化が考えられる。
金融業では、審査、不正検知、事務作業、顧客対応の効率化が進む可能性がある。
小売業や物流業では、在庫管理、価格設定、配送ルートの最適化に利用できる。
医薬品や化学産業では、候補物質の探索や実験条件の絞り込みによって、研究開発期間を短縮できる可能性がある。
OECDも、生成AIには業務の自動化や労働者の能力補完を通じて、企業の生産性を向上させる可能性があると分析している。
また、IMFは必要な環境整備が進んだ場合、AIが世界の生産性を年間最大0.8%ポイント程度押し上げる可能性を示している。
AIは単なる一つの商品ではない。
電力やインターネットと同じように、幅広い産業の生産方法を変える基盤技術になる可能性がある。
その意味で、現在は新たな産業革命の初期段階にあると筆者は考えている。
ただし、AIが経済全体を成長させることと、AI関連株をどの価格でも買ってよいことは別問題である。
過大な設備投資、電力不足、競争激化、技術の陳腐化、割高な株価などのリスクは存在する。
AIによって成長する企業がある一方、競争力を失う企業も出てくるだろう。
必要なのは「AI関連」という言葉を買うことではなく、AIを実際の利益やキャッシュフローに変えられる企業を見極めることである。
金利3%時代に保有したい企業の条件
国債利回りが上昇したことで、株式投資の選別基準は以前より厳しくなった。
安全性の高い国債から3%前後の利回りを得られるなら、株式にはそれを上回るだけの配当と成長性が必要になる。
筆者が今後重視したい条件は以下である。
- 国債を十分に上回る益回りがある
- 一時的な高配当ではなく、配当を維持・増加できる利益がある
- 営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローが安定している
- 金利上昇に耐えられる財務体質を持つ
- 値上げや事業構造の改善によって利益率を高められる
- AIや自動化を利用し、生産性向上を利益へ転換できる
- 成長投資と株主還元のバランスが取れている
配当利回りだけを見て割安と判断するのではなく、その配当の原資となる利益が持続するのか、会社に残された利益が株主価値の増加につながるのかを確認する必要がある。
保有3銘柄をどう考えるか
筆者は現在、双日、日本製鉄、住友化学を保有している。
双日は、現在の配当だけでなく、事業投資による利益成長、保有資産の入れ替え、株主還元を含めて評価する必要がある。金利上昇による資金調達コストには注意が必要だが、事業価値を継続的に高められるなら、国債にはない成長を期待できる。
日本製鉄は、株主還元だけでなく、米国やインドへの投資が将来の利益成長につながるかが重要である。一方、景気循環、巨額の設備投資、買収後の財務負担、政治リスクを抱えている。現在の配当利回りだけを理由に保有できる企業ではない。
住友化学については、現在の配当だけでなく、事業再建によって利益水準を正常化し、将来的に24円配当へ回復できるかを重視している。半導体材料やインド事業には成長機会があるが、それが利益とキャッシュフローに表れるまでは、決算ごとの点検が必要である。
3社とも、単なる高配当株ではない。
事業成長によって利益と株主還元を拡大できるかが、保有継続の判断基準になる。
筆者の結論
10年国債利回りが3%を超えたことで、安全資産の魅力は明らかに高まった。
近い将来に使用する資金や、値下がりさせてはいけない資金については、国債や預金を選ぶ合理性がある。すべての資金を株式へ投じる必要はない。
それでも、筆者は長期的な資産形成の中心として株式投資を選ぶ。
長期の歴史では、企業の成長を取り込める株式が、債券を上回るリターンを生み出してきた。
また、現在はAIという新たな基盤技術が、多くの産業の生産性と収益構造を変え始めた段階にある。
ただし、金利のある世界では株式の選別基準も厳しくなる。
「配当利回りが4%あるから買う」のではなく、企業が生み出した利益を成長投資や株主還元へ適切に配分し、国債を上回るリターンを長期的に実現できるかを確認しなければならない。
国債3%は、株式投資をやめる理由ではない。
むしろ、成長しない高配当株と、長期的に企業価値を伸ばせる株を選別するための新たな基準になると考えるのである。
参考資料
- 財務省「国債金利情報」
- 日本銀行「2026年9月金融政策決定会合」
- UBS「Global Investment Returns Yearbook 2026」
- OECD「The effects of generative AI on productivity, innovation and entrepreneurship」
- IMF「Leveraging Artificial Intelligence and Enhancing Countries’ Preparedness」
※本記事は筆者個人の見解であり、特定の金融商品や銘柄への投資を推奨するものではない。
