経済金融

【日本株】住友化学の2Q決算について

青髭

2026年11月2日、保有株である住友化学が2027年3月期第2四半期決算を発表した。

結論から言えば、決算内容は堅調であり、私の中長期的な投資仮説に大きな変更はない。引き続き保有を継続する。

上期の売上収益は1兆1,728億円、コア営業利益は1,445億円、親会社の所有者に帰属する中間利益は829億円となった。

前年同期比では、売上収益が7.1%増、コア営業利益が32.9%増、親会社帰属利益は約2.1倍となっている。

さらに会社は通期業績予想を上方修正した。

親会社帰属利益は従来の700億円から900億円へ、EPSは42.40円から54.27円へ引き上げられた。

年間配当も16円から17円へ増配された。

数字だけを見れば、明確な好決算だったと言ってよいだろう。

しかし今回の決算を見る際には、

「今期の利益がいくらになるか」

だけではなく、

「住友化学が構造的にどれだけ稼げる会社へ変わっているのか」

を見る必要があると考えている。

なぜなら、今期の利益にはエッセンシャル&グリーンマテリアルズの一時的な利益押し上げがかなり含まれているからだ。

そして、私が住友化学へ投資している最大の理由は、今期の一時利益ではない。

アグロ&ライフとICT&モビリティという二つの成長ドライバーが、中長期的に住友化学の利益構造を変えられるか

という点にある。

1.全社業績は非常に堅調

まず全体の数字を確認したい。

2027年3月期上期は、

項目前年同期今期2Q累計増減
売上収益1兆954億円1兆1,728億円+7.1%
コア営業利益1,087億円1,445億円+32.9%
営業利益1,037億円1,381億円+33.2%
親会社帰属利益397億円829億円+108.8%
EPS24.26円50.08円+25.82円

となった。

通期予想についても、

親会社帰属利益700億円 → 900億円

へ29%近く上方修正。

EPSも、

42.40円 → 54.27円

へ引き上げられた。

さらに年間配当も、

16円 → 17円

へ増額された。

利益、EPS、配当のすべてが上方修正されており、全社決算としては文句の少ない内容だったと思う。

2.財務体質も着実に改善している

今回もう一つ評価したいのが財務面である。

親会社所有者帰属持分比率、いわゆる自己資本比率は、

2026年3月末29.6% → 9月末32.1%

まで回復した。

さらにD/Eレシオも、

0.93倍 → 0.73倍

へ改善。

有利子負債も1兆1,515億円から1兆874億円へ減少している。

住友化学は数年前まで、石化不振や住友ファーマの問題を抱え、財務体質そのものが大きな懸念材料だった。

その状況から考えれば、自己資本比率が32%まで戻り、D/Eレシオが0.7倍台まで改善した意味は小さくない。

住友化学の投資判断では、利益成長だけでなく、

「財務再建が本当に進んでいるか」

も重要なポイントとして見てきた。

その点については、今回も良い方向へ進んでいる。

3.アグロは増益。ただし中身は少し分けて見る必要がある

アグロ&ライフソリューションの上期コア営業利益は、

112億円 → 208億円

と96億円増加した。

大幅な増益である。

農薬については国内販売が堅調だった一方、海外では事業環境の回復にやや遅れがみられている。

一方、メチオニンは中東情勢に伴う供給懸念によって交易条件が改善。

さらに円安による海外子会社の円換算効果も利益を押し上げた。

したがって、アグロの208億円をすべて構造的な利益成長と評価するのは少し早い。

メチオニンや為替には一時的な追い風も含まれている。

それでも、国内農薬が堅調であり、海外農薬市場の回復余地が残っている状態で上期208億円まで利益を積み上げたこと自体は悪くない。

会社は今期のアグロのコア営業利益を650億円と予想している。

中期経営計画における2027年度目標は800億円である。

つまり、現在の650億円から中計目標まではあと150億円。

約23%の増益が必要となる。

決して低いハードルではないが、海外農薬市場の正常化や新剤の拡大が進めば、十分検討可能な水準には近づいてきたと感じている。

4.ICTは表面上減益だが、中身はむしろ良い

今回、私が最も注目したのがICT&モビリティである。

上期のコア営業利益だけを見ると、

331億円 → 319億円

と12億円減少している。

したがって「ICTが前年同期比で増益だった」と書くのは正確ではない。

しかし、中身を見ると印象はかなり違う。

大型液晶ディスプレイ向け偏光フィルム事業の構造改革や事業譲渡による影響がある一方、

半導体プロセス材料では、高純度ケミカルやフォトレジストの需要が拡大し、売上・コア営業利益ともに増加した。

会社もこれを受けてICTの通期コア営業利益予想を、

550億円 → 600億円

へ上方修正している。

私はここを非常に評価している。

住友化学のICTについて期待しているのは、液晶関連ではなく、

半導体材料を中心とした高付加価値領域の成長

だからだ。

会社の2027年度目標は、ICTのコア営業利益800億円。

今期予想600億円から考えると、来年度さらに33%程度の利益成長が必要になる。

まだ簡単な数字ではない。

しかし今期の半導体材料需要と会社の上方修正を見る限り、

800億円という中計目標の達成確度は、今回の決算によって一段上がった

と私は考えている。

5.エッセンシャルは絶好調。しかし、そのまま評価してはいけない

今回の利益を最も大きく押し上げたのがエッセンシャル&グリーンマテリアルズである。

上期コア営業利益は、

前年▲186億円 → 621億円

と、実に807億円改善した。

非常に大きな数字である。

ただし、この621億円を住友化学の新しい通常利益と見るのは危険だ。

会社資料によると、中東情勢の影響を受けたペトロ・ラービグ社の業績改善に加え、合成樹脂などで市況上昇に伴う在庫評価差益が発生している。

通期予想も750億円まで引き上げられたが、私はこの利益水準が恒常的に続くとは考えていない。

住友化学自身も中期経営計画では、2027年度のエッセンシャル&グリーンのコア営業利益目標を250億円としている。

したがって私自身は、

エッセンシャル&グリーンの平常時の利益水準は年間250~300億円程度

を一つの目安として見ている。

今期750億円という数字は非常に良い。

しかし、そのうちかなりの部分は一時的な追い風と考えた方が良い。

6.ファーマも数字の見方には注意が必要

住友ファーマの上期コア営業利益は436億円。

前年同期の973億円からは減益となっている。

したがって、ファーマも前年同期比増益ではない。

ただし前年にはアジア事業の一部売却など特殊要因が含まれており、単純比較だけでは事業の実態を捉えにくい。

足元では米国で「オルゴビクス」「ジェムテサ」の売上が拡大している。

今回、住友ファーマの通期コア営業利益予想も940億円から1,080億円へ上方修正された。

住友化学にとってファーマは依然重要な利益源ではあるが、私は今後の住友化学の構造的な成長を考える際には、やはりアグロとICTを中心に見るべきだと考えている。

7.今期EPS54円をそのまま「実力」と考えない

今回の上方修正によって、会社予想EPSは54.27円となった。

現在の株価だけを見ると、かなり割安に見える。

しかし私は、この54円をそのまま住友化学の実力EPSとは考えていない。

理由は先ほど述べたエッセンシャルの一時利益である。

では、実力EPSをどの程度と考えるべきなのか。

私は一つの目安として、約42円を置いている。

根拠は意外に単純である。

2026年5月時点で住友化学は、

  • エッセンシャル&グリーン:200億円
  • ICT:550億円
  • アグロ:650億円
  • 住友ファーマ:940億円

という前提で、

親会社帰属利益700億円、EPS42.40円

を予想していた。

エッセンシャル200億円という前提は、私が考えている正常化利益250~300億円にかなり近い。

その後、ICTや住友ファーマの予想はむしろ上方修正されている。

したがって、

正常化EPSを40円台前半、保守的には約42円

と置くことは、現時点ではそれほど不自然ではないと考えている。

これは厳密な会計上の「調整後EPS」ではなく、あくまで投資判断上の実力値を考えるための私自身の目安である。

8.過去10年のEPSを見ると、住友化学の課題がよく分かる

住友化学の過去のEPSを見ると、非常に大きく変動してきた。

3月期EPS
2017年52.31円
2018年81.81円
2019年72.17円
2020年18.91円
2021年28.16円
2022年99.16円
2023年4.27円
2024年▲190.69円
2025年23.59円
2026年37.16円

住友化学は過去10年、

「安定してEPSを積み上げる企業」ではなかった。

石化市況、医薬、資源価格、事業売却などによって利益が大きく上下してきた。

私は、現在の住友化学の構造改革を見るうえで、ここが非常に重要だと考えている。

住友化学が中期経営計画でアグロとICTへ経営資源を集中しているのは、単純に成長分野だからというだけではない。

市況や一時利益に左右されやすかった利益構造そのものを変えようとしている

のだと思う。

9.アグロとICTに集中投資する理由

住友化学は現在、アグロ&ライフとICT&モビリティを成長ドライバーと位置付けている。

この2領域へ、

研究開発投資2,200億円強

を投入。

さらに戦略投資約1,800億円のうち、約8割をアグロとICTへ集中する方針である。

2027年度のコア営業利益目標は、

アグロ:800億円
ICT:800億円

である。

今期予想は、

アグロ650億円
ICT600億円

まで来ている。

単純計算すると、中計最終年度までに必要な利益成長は、

アグロ:約23%
ICT:約33%

となる。

簡単な数字ではない。

特にアグロについては海外農薬市場の回復がまだ十分ではなく、今期の利益にはメチオニンや為替による追い風もある。

一方でICTは、半導体プロセス材料の伸びによって今期予想が550億円から600億円へ引き上げられた。

そのため現時点では、

ICTの800億円達成については、今回の決算によって確度が明確に上昇した

と考えている。

アグロについても成長余地は大きいが、海外農薬市場の回復と新剤の販売拡大を引き続き確認したい。

10.中計達成時のEPSは約60円

住友化学は2027年度の全社目標として、

親会社帰属利益1,000億円

を掲げている。

現在の発行株式数を基準に単純計算すると、これはEPSでおよそ60円に相当する。

つまり私が現在見ている住友化学の利益水準は、

今期会社予想EPS:54円
現在の正常化EPS:40円台前半
中計達成時EPS:約60円

というイメージである。

ここで大切なのは、

54円→60円

と単純に見ることではない。

今期54円にはエッセンシャルの一時利益が大きく含まれている。

したがって、本当の成長シナリオは、

正常化EPS40円台前半
→ アグロ・ICTの成長
→ EPS60円程度

という形になると考えている。

これが実現すれば、住友化学は単なる「業績回復銘柄」から、

利益を継続的に成長させる企業

へ変わったと評価できるだろう。

11.好決算なのに株価は9%下落

今回の決算発表後、住友化学の株価は前日比9.47%安の511.5円まで下落した。

上方修正と増配を伴う好決算だったことを考えると、かなり大きな下落である。

なぜこれほど売られたのか。

私は、今回の決算そのものが悪かったというより、

市場の期待値が高くなりすぎていた

ことが大きいと考えている。

実際、上期純利益は829億円だった一方、通期会社予想は900億円。

単純計算では、下期の親会社帰属利益は約71億円しか見込んでいない。

また7~9月期単独の最終利益は前年同期比4.8%減だった。

そして、上期利益を大きく押し上げたエッセンシャルには一時的な要因がかなり含まれている。

つまり市場は、

「上方修正されたか」

ではなく、

「この利益水準は来期以降も続くのか」

を見たのだと思う。

決算前までに株価が上昇し、強い業績をある程度織り込んでいたのであれば、材料出尽くしとなっても不思議ではない。

12.現在の株価は割安なのか

決算後の株価511.5円に対して、会社予想EPS54.27円をそのまま使用すると、

PERは約9.4倍となる。

数字だけを見るとかなり割安である。

しかし私は、先ほどの理由から正常化EPSを約42円として見る。

すると、

511.5円 ÷ 42.4円 ≒ PER12.1倍

となる。

この水準を見る限り、

現在の株価が極端に割安だとは考えていない。

一方で、現在よりさらに株価が下落すれば話は変わってくる。

例えば、

450円ならPER約10.6倍
400円ならPER約9.4倍

となる。

アグロとICTの成長性を考えれば、この水準まで下落した場合には、かなり割安感が出てくると考えている。

逆に株価600円では、

PER約14.2倍

となる。

正常化EPS42円を基準とするなら、PER15倍となる株価は約636円である。

したがって600円を明確に超え、600円台半ばへ近づいてくると、

現在の実力利益だけではなく、中期経営計画の達成までかなり織り込む株価

になってくると考えている。

結論――決算は堅調。重要なのはアグロとICT

今回の住友化学2Q決算は、全社としては非常に堅調だった。

売上収益は増加。

コア営業利益は前年同期比33%増。

親会社帰属利益は829億円まで拡大。

通期業績は上方修正され、配当も増額。

自己資本比率は32.1%まで改善し、D/Eレシオも0.73倍まで低下した。

財務再建についても着実に前進している。

一方で、今期の利益については冷静に見る必要がある。

エッセンシャル&グリーンの利益には中東情勢や在庫評価差益など一時的な要因が大きく含まれており、今期予想EPS54円をそのまま住友化学の実力と見るべきではない。

私は正常化EPSについて、現時点では40円台前半、約42円を一つの基準として見ている。

現在の株価511.5円で考えれば、正常化PERは約12倍。

つまり、

今回9%下落したからといって、株価が異常に割安になったわけではない。

市場が一時利益を割り引いて評価していると考えれば、現在の株価水準にも一定の合理性がある。

しかし、私が住友化学を保有している理由は今期EPS54円ではない。

重要なのは、

アグロとICTが本当に成長し、住友化学の利益構造を変えられるか

である。

過去10年間、住友化学のEPSは大きく変動してきた。

だからこそ会社はアグロとICTへ研究開発費と戦略投資を集中させ、利益の安定性と成長性を高めようとしている。

今回の決算では、

アグロは上期208億円まで増益。

ICTでは半導体材料が好調で、通期利益予想が600億円へ上方修正された。

特にICTについては、中計800億円への道筋が以前より見えやすくなった。

2027年度に会社目標である親会社帰属利益1,000億円を達成すれば、EPSは約60円となる。

そこまで成長できれば、現在の株価評価は大きく変わる可能性がある。

したがって、今後私が最も注目するのは、

エッセンシャルの一時利益ではなく、アグロとICTの成長率である。

今回の決算によって、その二つの成長ドライバーに対する投資仮説は崩れていない。

むしろ、特に半導体材料については期待が強まった。

株価は決算後に大きく下落したが、現時点では過度に悲観していない。

一方で、現在の株価が無条件に割安とも考えていない。

今後も、

アグロ800億円、ICT800億円、そして全社EPS60円

という中期経営計画への道筋を確認しながら、引き続き保有を継続したい。


参考資料

住友化学株式会社「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信・決算概要」

住友化学株式会社「2027年3月期通期業績予想の修正及び配当予想の修正に関するお知らせ」

住友化学株式会社「2025~2027年度 中期経営計画 Leap Beyond ~成長軌道へ回帰~」

住友化学株式会社「2026年3月期 連結決算概要」

住友化学株式会社「住友化学レポート2019・2020・2025」

※本記事は筆者個人の投資判断を記録したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

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青髭
会社員、個人投資家
会社員として本業を続けながら、日本個別株に投資。割安性、業績サイクル、構造改革、株主還元に加え、為替・金利・資源市況から企業の変化点を分析しています。
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