【ドル円・日本株】トランプ政権の政策と株式市場
米国トランプ政権が3月4日からカナダとメキシコに25%、中国に対して20%の関税を発動している。トランプ大統領と政権幹部はEUに対しても25%、日本と中国に対しては為替誘導を理由に関税の発動或いは追加の関税を課すことを示唆している。
今回はトランプ政権の経済政策と主に日本株に対する影響を考えていきたい。
※5日時点でカナダとメキシコへの関税については、ラトニック商務長官が軽減される可能性について言及している。
【関税の影響と関連銘柄】
カナダとメキシコへの関税で懸念で、代表的なものだと自動車産業への影響である。
特にメキシコには自動車各社の工場があり、日本のメーカーだとマツダやトヨタ等が影響を受ける。これらの銘柄は関税の決定(発動や軽減処置の発表)によって、株価にも大きな影響を受ける可能性があり、注意が必要である。
このまま関税が発動し継続した場合、ゼネラルモーターやフォードといった米国企業も関税によって大打撃を受ける見通しである。米国の主要自動車メーカー(日本の企業含む)が加盟する米国自動車イノベーション協会は、カナダやメキシコへの関税について、車両価格が即座に最大25%上昇する可能性があると警告している。
カナダ、中国、メキシコはそれぞれ報復関税や対抗策を表明しており、このまま行けば米国経済への影響も甚大なものになるだろう。
著名投資家のウォーレン・バフェット氏はトランプ政権の関税政策について「われわれは関税について多くの経験を積んできたが、関税は実際のところ、ある程度の戦争行為だ」と述べており、最終的に消費者物価上昇をもたらすとしている。
保守的な論調で知られるウォール・ストリートジャーナルも「トランプ氏、最も愚かな関税に突入」と題した社説を掲載し、トランプ政権の関税政策を批判している。
筆者はトランプ政権における関税政策については、当初は米国企業への影響を考慮し軽減させるだろうと楽観視していた。実際に25%もの関税を発動させた場合は経済への影響は未知数である。
関税政策については、広範な影響を考慮して、ある程度緩和させる可能性が高いと考える。実際に物価や企業業績に影響が出た場合、米国共和党支持層からの支持率に影響を与える為である。
関税による業績への影響から、自動車産業、半導体産業、鉄鋼等の輸出関連銘柄は短期的な株価の乱高下に注意を要する。関税の発動又は軽減や撤回といった報道に大きく左右される可能性がある。
為替については、関税を予定通り実施した場合は一旦ドル高方向へ動く可能性が高い。一定程度の物価高によって利下げが遠のくことが考えられる為である。ただし、利下げが遠のくことにより株価が下落し、物価高や株価下落による個人消費の落ち込みによって企業業績にも影響が出た場合は、雇用や景気が悪化する可能性がある。その場合は、利下げの織り込みも始まるので、短期的にはドル高、将来的にはドル安となるかもしれない。
【日本への直接的な影響 〜ドル円や株式〜】
日本への直接的な影響がある政策として、日本への輸入関税強化と円安批判がある。トランプ大統領は日本の通貨安政策(実際にはその様な政策は行なっていない)を批判し関税強化について言及している。
日本への関税強化については、施政方針演説で関税に関する日本への言及が無く、安倍政権時の合意がある為、諸外国に比較するとマイルドになる可能性が高いだろう。
一方で、トランプ氏は大統領選の時から日本の円安を問題視しており、トランプ政権の諸外国への行動を見ると、関税をちらつかせて為替について何らかの要求はしてくる可能性はある。どの水準までの円安を問題視しているかにもよるが、現在の円安を終わらせるには、日本の政策金利を諸外国並に引き上げる必要がある。
日銀は「主な意見」でこれまでマイナス金利の解消に何度も言及しており、トランプ政権からの圧力が大きかった場合は、2〜3%程度まで段階的な追加利上げが考えられるだろう。2〜3%まで引き上げが織り込まれた場合は一気に円高に振れて、株式市場や不動産価格への影響も甚大である。
日本は諸外国に比較して、日米が協力しやすい地政学的な状況や安倍政権時の遺産があり、トランプ政権と対立しやすい政策が少ない為、トランプ政権からの圧力を躱わすことは可能なはずである。石破政権が上手く説明し、極端な事態が回避されることを祈るが、極端な事態もある程度想定して報道を注視しておいた方が良いだろう。
【まとめ】
関税等、トランプ政権の政策に世界が右往左往している。
その政策の実行度合いや影響はこれから判明してくるが、米国は民主主義国家で議会が大きな力を持ち、議会は共和党と民主党の議席が拮抗に近い状態なので、米国民や米国経済に大きなマイナスが生じるか想定された場合は、トランプ政権の思想を反映しつつもマイルドなものに着地すると考える。
※実際に日本への追加関税が発動した場合は円安に傾く可能性が高いだろう。ただし、前述の通り関税は輸出関連銘柄にマイナスであり、円安メリット株が素直に株価上昇となるとは考えにくい。
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