【ドル円・日本株】石破政権誕生と日経平均株価への影響を考える
9月27日に自民党総裁選が開催され、石破茂氏が自民党の新総裁に選出された。市場は事前に高市早苗氏選出の織り込み(株高・円安)が進んでいたこともあり、石破氏選出決定後は一時4円もの円高が進み、日経平均先物も大幅下落している。
今回は個人投資家として、来週以降石破政権が開始となるが、石破氏の総裁選挙中等の過去発言から具体的な政策とそれによる日経平均株価に対する影響を考えていきたい。
【石破氏の経歴と総裁選出の経緯】
石破氏は鳥取1区選出で当選回数11回のベテラン衆院議員で、かつては「水月会」と言う自分の派閥を持っていたが現在は解散し無派閥となっている。水月会の構成人数は10人〜20人程度の小派閥だったようだ。石破氏は大学卒業後三井銀行に就職。国会議員になった後は防衛大臣、農林大臣を務め、第二次安倍政権発足時に幹事長に就任している。今回の総裁選が最多タイの5回目の挑戦であり、安倍政権下での総裁選でも当時の安倍首相に挑戦している。そのためか、自民党の主流である安倍氏や麻生氏等と折り合いが悪かったようだ。党内で非主流であった為、仲間は少ない印象である。
今回の総裁選では、最終的に岸田首相と管元首相の支援により当選したと、各種報道がなされている。特に、石破氏は岸田首相の経済政策を引き継ぐ姿勢を示すことで最終決戦で岸田氏の支援を得ることができたようだ。この点は今後を予想する上で大変重要である。つまり、基本的な経済政策は継続され、大幅な転換(例えば、アベノミクスへの回帰)の可能性は遠のいたと考えて良いだろう。また、かつて存在した自派閥が小派閥で「仲間が少ない」と言う点も重要である。政権運営のために岸田氏、菅氏、小泉陣営等、今回の総裁選で石破氏を支援した陣営が掲げる政策が反映される可能性が高い。次項からは、過去の言及から気になるポイントを挙げていく。
※石破氏の過去の発言を調べると地方創生、防災、安全保障、外交や軍事には信念やこだわりがあるようだが、経済と金融については言及があまり無く、こだわりは少ないようだ。経済金融政策については非主流が長く続いたこともあり、比較的フラットかつ周囲の影響を強く受ける可能性が高いと考える。
【法人税と金融所得課税強化】
法人税と金融所得課税強化は今回の総裁選中に提言している。問題は実際に実行されるかどうかである。実行された場合は株価にはマイナスで、為替に対しては円高を支援する可能性がある。
金融所得課税強化については岸田氏も言及したが世論や党内の反発を受けて実行されなかった。岸田氏は経済政策の柱の一つに「資産運用立国プラン」を掲げており、石破政権でも継続が見込まれる。今年になり新NISAが始まり国民に投資を促している状況で、さらに早期の衆院解散が見込まれており、来年には参院選が控えているので若干トーンダウンするのではと考えている。
尤も石破氏は格差是正を掲げているので、衆院選と参院選の両方に勝利して政権運営が盤石となり、主要な経済団体が合意した場合は実行される可能性が高くなるだろう。
【日銀の独立性とドル円への影響】
石破氏は27日のテレビ東京の番組内で金融緩和基調を変更しないことを前提に「日銀は政府の子会社だとは思っていない」として日銀の独立性を尊重する発言をしている。さらに過去を遡ると円安是正を容認する発言もしている。岸田政権でも連携はするものの基本的に日銀の金融政策は尊重されてきた。今後も日銀の考える金融政策が尊重され、実行される可能性は高いだろう。
そうなると、現在の金融正常化路線をそのまま進むことになり、日銀の目指す中立金利1%へ向けて年内の利上げ確率が高まったと言える。まもなく今月の日銀政策決定会合の「主な意見」が公表されるので要注目である。
日銀の動向に関しては以下の記事でも考察している。
日銀にとっては石破政権誕生により、政策は実行しやすくなったのではないか。少なくておも総裁選による政治的なリスクや障害は消えたと言える。米国側の状況にもよるが、円高基調が続く可能性が高まったのではないか。円高が続くと言うことは日経平均の上値が重くなることを意味する。
【防災と地方創生】
石破氏は総裁選を通じて防災や地方創生に力を注ぐ意向を示している。特に防災については復興を担う「防災省」を創設すると言う。災害大国の日本では、確かに防災の観点は重要である。また、東京と首都圏一極集中や人口減少が大きな課題であるので地方創生もかなり重要なのは確かだ。一方で、経済の成長戦略に関する具体的な言及が乏しいことは気になる点である。日本のGDPは米国ほどではないがドイツや韓国と異なり個人消費が半分以上を占める国である。国内経済の成長によって企業業績が向上し最終的には株価に反映されるので、経済の成長戦略は示してほしいところだ。(とはいえ、大半の経済政策は岸田政権のものが踏襲されることだろう。)
【まとめ 〜日経平均株価の上値が重い状況は続くのか〜】
石破政権誕生を受けて、日経平均先物は6%程度下落している。大幅下落で反応しているが、上述の通り石破政権の経済金融政策は基本的に岸田政権の路線を継承する可能性が高い。また、日銀の利上げ路線も継続である。つまり、首相が変わることで急に金融引き締めに動くわけではなく岸田政権時の状況が続くことになるので、日経平均の上値は重いものの大幅下落が続くとも考えにくい。早期の衆院解散によって株価が下支えされる可能性もある。
ドル円については円高基調は継続するだろうが、その度合いは米国側の状況にかなり左右される。10月4日にはいよいよ9月分の米国雇用統計が発表され、10月上旬はその他重要指標が目白押しである。さらに10月下旬〜11月にかけては日米ともに第二四半期決算の時期に入る。これらのイベントに要注目である。
【関連記事】