【ドル円・日本株】日米経済の現状と今後について
昨年夏〜秋にかけての状況を覚えているだろうか。
8月に米国雇用統計での失業率急上昇を受けて、米国経済のハードランディングが意識され、日米の株式市場は大幅下落を経験した。その後、米国経済のソフトランディングとハードランディングの予想の間で市場は揺れ動いた。専門家や著名投資家の大半はハードランディング、或いはソフトランディングを予想し、米国金利の低下に備えていた。
結果は、景気後退は起きず、かと言ってインフレが再燃することも無く現在に至っている。今回は1月の米国経済指標を振り返り、これからのドル円と日本株への影響を考えていく。
【米国経済と株式市場の状況】
1月発表の主要な米国経済指標を振り返ってみる。
- CPI(コア前年比):3.2%
- 失業率:4.1%
- 小売売上高(コア前月比):0.4%
- PMI(製造業):50.1
- PMI(非製造業):52.8
上記の通り、米国経済は堅調である。一方で、非製造業PMIが市場予想を下回り、50を上回っているが下落傾向にあり経済の過熱感は見られない。それはCPIにも現れている。1月のFOMCでFRBは政策金利を据え置いたが、その背景の一つに好調な経済状況があることは確かだろう。
米国経済が堅調という事は、米国企業の業績も堅調さが続くことを意味する。そして米国企業の業績が堅調だと、株価も堅調であり、資産効果の大きい米国では株価の堅調さは物価と実体経済を底上げする。(ある意味ループが発生していると言える)
企業業績の堅調さ、期待感からNYダウの状況は良さそうである。
PERが29を超えており、ここ10年で見てもやや高めの水準であることは気になるところである。ただし、FRBの政策金利が高めで維持されている点で、あまり不安視する必要もなさそうだ。実体経済が弱まり、不景気が企業業績に波及する段階で利下げを実施すれば良い話で、FRBは少なくとも16回以上ゼロ金利まで利下げを実施できる。政策金利という点で、日欧より余裕がある。
現在の経済と金融環境を考慮すると、実体経済が堅調である限り、米国市場に対し過度な不安は不要かもしれない。
また、トランプ政権がカナダ、メキシコ、中国に関税を発動しているが一部の国だけに実施したところで経済や金融への影響は限定的だろう。以前の記事でも紹介しているが、関税によるインフレや経済への影響はやや過大評価の感がある。もちろんミクロでは大きな影響があるが、ベッセント財務長官は段階的な関税の引き上げに言及する等、米国政権内でも協議が続いていることである。トリプルレッドとは言え、米国議会は共和党と民主党でほぼ均衡になっており、その影響度を試しながら、トランプ政権の政策は手探りかつ米国企業にマイナスになることは避けて、穏当なものになると予想する。
個人投資家としては、ミクロで影響を受ける銘柄について対策を講じ、共和党の政策に過度に左右されないことへ注力すべきと考える。
【日銀の動向とドル円の行方】
日本経済と市場の現状を振り返っておく。
- 実質賃金:11月分は4カ月ぶりにプラス
- CPI(コア12月):3.0%
- 日経平均株価PER:16前後
- PMI(サービス業1月):52.7
- PMI(製造業1月):48.8
この状況をどう見るかだが、米国ほどの堅調さは見られない。ただし、不景気とも言えず、日銀の言うところのオントラックな状況が続いているのではないか。CPI2.0%以上が続いており、このまま行けば、年内に中立金利の1.0%までの追加利上げが行われる公算が大きい。
仮に1.0%まで利上げが行われても、米欧に比較して低金利である。昨年秋ごろから再び日米金利差が拡大していることを考えれば、日銀の利上げによるドル円への影響度は限定的かもしれない。(一方で、追加利上げへの織り込みから、昨年同様の円安は考えにくい。昨年比で穏やかな円高基調が予想される)
やはり、本格的な円高基調への回帰は、米国側の利下げ、つまり米国経済の落ち込みが必要になってくる。その意味で、今後も米国のCPIと経済指標は重要であり注視すべきである。
【まとめ】
今のところ堅調な米国経済によって、ドル円、株価共に堅調に推移することが予想される。とは言え、既に中立金利まで利下げされた可能性のある米国に比較して、日本はこれからまだ追加利上げの予定がある。その為、ドル円に関しては穏やかな円高基調になっていくと考えられる。
今後、米国経済が失速した場合はFRBによる利下げが意識されるので、一気に円高に振れる可能性もあるので注意が必要である。
日本株全体については、利上げ幅が限定的で、米国市場が好調なことを考えると過度に不安に感じる必要は無いだろう。日本のGDPの約半分以上は個人消費に支えられているので、実質賃金のプラスが今年定着するかが重要になってくる。
個別株については、米国新政権の政策がまだ不透明なところがあり、輸出株よりも内需株にやや部があると考える。
今後も日米経済、物価には注視していきたい。
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