円高メリットかつ出遅れ銘柄を考える
2024年秋に向けてFRBの利下げ、日銀の利上げが意識される中でいよいよ歴史的な円安が終了する可能性が高まっている。
日銀がFRBの利下げ待ち状態なので、特にFRBの動向には要注目だ。8月2日の米国雇用統計、8月14日の米国CPI次第では円安が大幅に巻き戻される可能性がある。
円高の可能性については、以下記事でも考察した。
もし円高になるのであれば、円高メリット銘柄、その中でも日経平均にアンダーパフォームしている銘柄を考えおいて損はないだろう。円高時、金利上昇時は日経平均に逆風なので相場が不安定になり得る。その中で安定して収益が伸長すると予想される円高メリット企業は、収益だけでなく、株価も堅調に推移するはずだ。今回は小売業と空運業を考えて行きたい。
尚、日経平均は2024年7月22日時点で年初から21%上昇している。
【小売業】
ニトリ、良品計画、イオン、セリアなど、事業内容や海外比率が多種多様である。ニトリは年初から3%程度の上昇であり大きく出遅れている。一方で良品計画は好調は業績を背景に年初から60%以上の上昇を見せている。
海外に商品の生産拠点がある企業は円高時に調達コストを下がることになる。大きなメリットになるだろう。
やはり注目は円安で逆風を受けて大きく出遅れているニトリ、成長が続き業績好調でこれから円高によるメリットや日経平均採用が予想されている良品計画だろう。
ニトリは今期の為替見通しをドル円150円に設定しているが、150円以上の円高になる可能性は大いにある。また、商品開発もドル円160円で利益が出るよう設計し直しており、今後円高に振れた場合は利益率が大幅に改善する可能性がある。5月の通期業績見通しを発表後に株価が大幅下落しているが、その分投資妙味があると言える。
良品計画は元ユニクロの堂前社長が手腕を発揮し商品力が戻り、国内既存店の売り上げと単価が改善している。また、インテリアだけでなく、化粧品、食品、衣類と取り扱う商品が幅広く、宿泊等の幅広い業態で暮らし全体を無印ブランドでコーディネートしている点が強みだろう。野心的な中長期経営計画に基づき国内外で積極的な出店を行なっている。既に株価は上昇しているが、日経平均採用予想が下支えし、今後の成長を見越すとまだ投資妙味があると言える。
ニトリ、良品計画に共通しているのは経営陣が強力な事だ。
良品計画については別記事でさらに掘り下げる予定である。
【空運業】
本邦で大手航空会社といえばANAとJALであり、中堅航空会社としてスカイマークがある。ANAは年始か12%、JALは18%株価が下落しており、航空各社はかなりの出遅れ銘柄である。
注意点として、ANAとJALはコロナ禍で公募増資を実施しており、株価が希薄化されている。EPSで見るとANAはコロナ禍前の水準に戻りつつあるが、JALは未だ5〜6割程度だ。さらに回復傾向にあるものの、やはりコロナ禍で債務が増え自己資本比率が低下している。ただし、それを差し引いても日経平均がコロナ禍前から80%近く上昇していることを考えれば、まだまだ上昇余地はあるのではないか。
航空会社は為替の影響を大きく受ける。航空機や機材の購入やリース費用、整備費用、燃油費はドル建てで支払う為だ。円安が進むとこれらの営業費用が嵩んでいく。円高になれば営業費用を節約できるだろう。
ANA、JAL共に業績は既に回復しており、円安下の2024年3月期の純利益はANAは1570億円、JALは955億円である。訪日外国人数はコロナ禍前から右肩上がりであり、過去最高を更新した。円高になり出国する日本人がコロナ禍前の水準(現在の倍程度)になればさらなる上積み、単価上昇が見込める。
日本政府観光局によれば米旅行雑誌「世界で最も魅力的な国ランキング2023」で1位に選ばれ、世界的に日本は人気の旅行先になっている。もちろん円安が寄与している側面もあるが、そもそもコロナ禍前から訪日外国人数が伸びていたことを考えると、日本の文化や伝統が廃れない限りこの傾向が続くのではないか。
尚、航空会社は為替だけでなく原油価格にも業績が左右される難しい業界である。現状ではANAとJALの想定為替レートを超える円安が続いており、直近の決算は注意を要する。今後別記事でさらに掘り下げていきたい。