経済金融

【米国雇用統計】米国経済、ソフトランディングへ

yuta8068@gmail.com

10月4日に米国雇用統計が発表され、結果は予想外であった。
今まで筆者はハードランディングを予想していたが、今回の結果を受けてソフトランディングの可能性が大幅に高まったと考える。今後の米国経済、米国市場、そして日本株への影響を考えていきたい。

また、今回もしソフトランディングを達成することになれば大いに反省である。米国経済は過去の記事でも触れていたが、リセッションしておらず、その中で大幅利下げが行われているのである。米国雇用統計の失業率にフォーカスしていたが、それ以外の要素も同じくらい考慮すべきだった。

これまでの筆者の予想、前回雇用統計時の考察は以下の通りである。

【米国雇用統計の結果】

まずは、米国雇用統計の結果をおさらいしておく。全てにおいて市場予想を上回る結果である。

  • 非農業雇用者数(前月比):25.4万人(予想:14.8万人)
  • 失業率:4.1%(予想:4.2%)
  • 平均時給(前月比):0.4%(予想:0.3%)
  • 平均時給(前年比):4.0%(予想:3.7%)

驚くべきことに失業率は前月に続き改善している。非農業雇用者数は大幅増加であり、どの証券会社であっても予測困難な数字である。平均時給も上昇した。平均時給は下落傾向ではあるがこのまま上昇を続ける場合、今度はインフレリスクが再燃することになるだろう。

【米国経済と米国市場の行方】

雇用統計の結果を受けて、NYダウは最高値を更新した。米国経済の現状を確認しておこう。

  • 雇用:米国雇用統計は上振れ、失業率は2ヶ月連続で改善。JOLTS求人件数、ADP雇用統計も上振れしている。失業保険申請件数の悪化の兆候は見られるず大規模な倒産も発生していないため、健全な状況と言える。
  • 実質賃金:プラス圏で推移。CPIの下落と平均時給の上昇が後押ししていくことだろう。
  • 家計の余力:今年5月のSF連銀調査だと過剰貯蓄は払底していた。クレジットカードローン延滞率も過去最高水準である。一方で、9月27日の米国商務省の発表によると、貯蓄率が大幅上方修正され昨年の水準を上回っている。つまり、米国経済を支える個人消費の燃料はまだまだ健在である。米国経済には極端な格差が生まれており、貧困層はよりひどい状況かもしれないが富裕層や中間層以上は健全である可能性が高い。(下記の過去記事も参照されたい)
  • GDP:年率プラス2.8%で更なる上振れの可能性あり。テクニカルリセッションに陥る可能性は極めて低い状況。
  • FRBの動向:直近のFOMC後に発表されたドットチャートによると、年内2回の利下げを予定している。また、今回の雇用統計後にシカゴ連銀のグールズビー総裁は現在の金利水準を中立金利よりも「はるかに上回っている」として、今後の利下げ継続を示唆。
  • 米国企業の業績:NYダウの実質EPSはコロナ前をやや上回る水準と堅調。

上記を総合すると、米国経済は現在の金利水準からさらに利下げが必要なのか、FRBは熟慮すべきではないだろうか。本当にFRBが予定通り利下げを継続するならば、インフレの再燃が心配になるレベルである。今後のインフレ指標に要注目である。

FRBが現在のまま利下げサイクルに入る場合、経済と企業業績、金利低下の後押しを受けて米国市場はさらに高みを目指すことになるだろう。

【ドル円の行方】

今回の雇用統計後、ドル円148.7円と大幅に上昇した。ただし、ハードランディング予想時よりはドル円の底値は上昇するものの、マイルドながら円高シナリオは継続する可能性が高い。FRBが利下げ、日銀が利上げの意思を示しているためである。

日銀については、就任早々に石破首相が「追加利上げするような環境にない」と発言したりや閣僚が利上げを牽制する発言をしていたが、その後の円安を受けて発言をさらに軌道修正している。石破首相は首相就任前に日銀の独立性を確保する方針を示唆していたため、選挙後に日銀が予定通り追加利上げを開始する可能性は根強く残っている。

ドル円が160円台を着けたときの状況と異なり、日本経済は実質賃金はプラスになり、CPIは目標の2%を上回る状態が続いている。さらに日銀が利上げ、FRBが利下げとなれば、再び160円を目指すような円安はかなり考えにくい。

ただし、上述の通り米国景気が再び加熱しインフレに傾き、日米金利差が再拡大するようなことになれば話は別である。やはり、今後は米国のインフレ指標の動向に注意を払うべきだろう。

※追記:現在の米国GDP成長率は年率2.8%だが若干上振れの可能性がある。仮に3%だとして、コロナ前からやや高めの水準である。堅調だが、コロナ前の水準から大幅に高いわけではないので、その意味で現在の金利水準は高いと言える(2019年に一旦2.5%まで上昇したがその後利下げしている)。そう思うと、FRBが示唆している3%台を目指す利下げは妥当なのかもしれない。いずれにしても、現在の金利水準で経済が再度加熱の気配を出しているので、コロナ前より中立金利は高く着地しそうである。

【まとめ〜日本株への影響〜】

米国経済が成長し、米国市場が上昇しFRBが利下げを続けた場合、世界的に投資家心理が改善し日本市場にも資金が流れて、日本株も上昇する可能性は高い。また、米国景気拡大によって利下げ期待が巻き戻され、より円安になることでも日経平均株価は押し上げられるだろう。また、直近では衆院選挙が株価を支援する可能性もある。

ただし、上述の通り日銀とFRBが方針転換しない限り、以前のような投機的な円安は望めないのではないか。そう思うと、今月下旬から本格化する企業決算と日本経済の行方が重要である。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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