経済金融

【ドル円・日本株】ドル円のシナリオと円高メリット株を考える

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先週のドル円は149円台で着地し、ついに52週移動平均線を下回る値まで円高が進んでいる。筆者は基本路線は中長期的な円高トレンドに突入しており、今後も穏やかな円高が進むと考えている。

今回は日米両国の中央銀行の動向を踏まえつつ、ドル円のシナリオと円高時の銘柄選択や業種選択について考えていきたい。

【米国インフレ再燃による円安シナリオ】

米国のインフレ再燃により、ここから再び円安トレンドになるシナリオである。インフレ再燃リスクついては何人かの著名投資家が指摘している話で、実際に米国のCPIは下げ渋っていてFRBが目標にしている2.0まで到達していない。

このところの米国経済指標は強弱が入り混じっているが、概ね堅調である。2025年も堅調なGDP成長率が予想されており、雇用統計の失業率も安定し完全雇用状態である。唯一、製造業の経済指標は一貫して弱いが、米国GDPに占める製造業の割合は10%程度なので、大きな影響は無いだろう。(トランプ氏は米国製造業の復活を掲げている)

CPIが下げ渋っている状態で経済成長が続けばインフレが再燃し、FRBによる利下げが停止し高金利が維持された結果、ドル高円安が拡大する可能性はある。

ただ、筆者はこのシナリオの可能性はそう高くないと考える。理由として、マネタリーベースが挙げられる。米国のマネタリーベースはコロナ前3.4兆ドルだったが、コロナ後に6.4兆ドルと倍近くまで上昇し、現在は約5.5兆ドルである。インフレの原因は様々なので一概には言えないが、この数字を見るとコロナ後のインフレの原因の一つにマネタリーベース増加があった事は確かだろう。マネタリーベース増加分は家計の過剰貯蓄からの個人消費や株式や不動産等の資産価格向上に寄与してきたと考えられるが、既に一巡し価値や価格に織り込まれているのではなかろうか。

米国の次期財務長官ベッセント氏は財政赤字の削減を志向しており、FRBも現在以上に量的緩和を実施しないのであれば、過度のインフレ再燃リスクは避けられると考えられる。ただし、FRBが目指す3%前後の中立金利まで利下げを継続する場合、道のりの途中で株価上昇や住宅購入増加等が予想できる。それが過熱した場合は注意を要するが、以前の記事でも触れているように、米国家計の過剰貯蓄は既に払底しており現在は回復の途上である。過熱までは至らないと考える。

仮にインフレ再燃となった場合は、ドル高円安トレンドが継続することになるが、嘗てと異なり日銀が追加利上げを基本姿勢にしているためドル円の上値は限られるのではないか。また、インフレ再燃、米国利上げ再開となったとしても、米国家計の余力はコロナ直後ほどでは無く労働市場も落ち着いているため、インフレの過熱具合も限られたものになるだろう。

【長期円高トレンドシナリオ】

こちらが筆者が考えるメインシナリオである。上記のインフレ再燃リスクが低いのであれば、単純にFRBは利下げ、日銀は利上げ方向に動いているため円高になるという考えである。過去の記事で何度も触れている話題なので、詳細は割愛する。

過去の円高トレンドを考慮すると130円前後まで円高が進行してもおかしくは無いが、当然、過去と現在では様々な環境が異なる。今回はどうなるだろうか。

【円高メリット株について】

一般論として円高になると日経平均株価は下がりやすい。日本の大型株には海外進出している銘柄や輸出銘柄が多いためである。その為、日経平均株価に組み込まれている銘柄や大型株についてはやや上値の重い展開が続く可能性が高いだろう。一方で、このところの155円台を超える円安や現在の149円台の円高になっても日経平均は38000円から39000円前後で安定しており、ある程度円高に対して織り込み済みが発生している可能性はあるだろう。

日本株全体の上値が重いのであれば、銘柄選択の重要性は増す事になる。参考程度に今後有利になりそうな円高メリット株や業種をいくつか考えてみたい。あくまで筆者の個人的な考えである。円高メリット株であっても今年の歴史的な円安時の低迷した株価からは脱して、既に値上がりしている銘柄もあるので注意が必要である。

  • 内需株:国内市場に比重の大きい企業は円高の影響を受けにくく、相対的に業績が安定しやすい。中国経済が低迷し少子高齢化が進み、インドの経済成長がやや鈍化しており、米国の対中シフトが進む中で地政学的な日本の重要度を考えれば、今後も日本へ一定程度投資がなされると予想できる。日本経済が堅調であれば内需株に恩恵があるだろう。
    銀行は日銀追加利上げ期待もあり、やや有利である。
    鉄道も海外旅行客の増加が今後も見込まれるため、やや有利である。
    不動産については追加利上げは逆風なので、様子見が必要と考える。
    鉄鋼については、第二次トランプ政権の政策が得意先の自動車産業へ与える影響度の見極めが必要になってくるだろう。
    電力業界は円高の恩恵を受けやすく、昨今の原油安によるメリットも享受できるのでやや有利である。ただし、日本の電気消費量が大幅に増える見通しは無く、今後海外からの日本へ直接投資の増加があるのか慎重に見極める必要があるだろう。
    内需株全体に言えるのは、日本自体は低成長、少子高齢化が定着しているのでこれから爆発的な成長は期待できない。ただ、今後損をしにくいという意味では有望な投資先と考える。
  • 小売業:一般に円高時は仕入れ価格が低下するので、業績の好転が期待できる。中でも国内比率の高い銘柄は恩恵を受けやすいので円高メリット株と言える。代表的な銘柄にニトリ、パルグループ、セリアなどが挙げられる。良品計画もかつては明確に円高メリット株だったが、現在は海外比率が上昇しているので、恩恵を受けにくくなっている。
  • 空運業:一般に円高時はドル建ての航空機材整備費用や購入費用、燃料費が低下するので業績の好転が期待できる。コロナ禍で業績と財務状況が悪化し、コロナ後は業績が回復しているが、公募増資等の影響もあり株価は低迷している。代表的には銘柄はANA、JAL、スカイマークがある。特にスカイマークは国内線のみの運行なので円安によって深刻な影響を受けてきた。
    空運業は原油安メリット株でもあるので今後は有利な展開になりそうである。

やはり、まだ値上がりしておらず、需要が堅調な航空株に目移りしてしまう。以前から注目しているが一向に成果が上がらない状況である。筆者の目が節穴で無いことを祈るばかりである。

【まとめ】

中長期的なトレンドは円高方向に進む可能性が高そうである。その場合、日経平均の上値は重くなるので注意が必要である。

銘柄選択の重要度がより増すことになるが、為替や原油等の外部環境だけでなく、その会社自体の成長期待、業績が根本的には重要である。

果たして本当に円高になるのか、今後も為替と株価の動向に注視していきたい。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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