経済金融

【ドル円・クロス円】今後の日銀利上げシナリオを考える

yuta8068@gmail.com

ジャクソンホール会議での講演の中でFRBパウエル議長は実質的に9月からの利下げ開始を事実上宣言した。FRBの役割は「雇用の最大化」と「物価の安定」であり、物価の安定については見通しが立ったので、今後は労働市場の悪化に注意を向けるということになる。利下げ見通しが確定的になり、今年5月に106台だったドルインデックスは現在100台まで下落している。今年6月に160円だったドル円は現在144円台まで下落している。FRBの政策転換を考えると今後もこの傾向は続くだろう。

一方で日銀は7月31日の金融政策決定会合で利上げを実施した。これについては筆者としても予想外だったが、米国雇用統計発表の時期と重なり市場は乱高下した。
今後の日本株・日本市場への投資を考える上で為替(円安か円高か)は日経平均株価に影響を与える事が多いため大変重要である。

今回は7月30日・31日の日銀金融政策決定会合の「主な意見」(8月8日公表)に注目し、今後の日銀利上げシナリオを考えていきたい。「主な意見」については日銀のホームページに公開されているのでご一読をお勧めする。
従前の筆者の日銀の動向と円高に対する予想は以下の通りであった。

【日銀の「主な意見」(8月8日公表)】

内容を要約すると、日銀としては現在の日本経済は穏やかに回復しており2%以上の物価上昇が3年続いていて、実質賃金も今後改善の見通しであるので利上げを行うのに適切な環境が整っていると考えている、というものだ。


筆者が特に重要と考える文章を抜粋しておく、

「2025年度後半の「物価安定の目標」実現を前提とすると、そこに向けて、政策金利を中立金利まで引き上げていくべきである。 中立金利は最低でも1%程度とみているが、急ピッチの利上げを避けるためには、経済・物価の反応を確認しつつ、適時かつ 段階的に利上げしていく必要がある。」

つまり日銀は現在のところ、2025年後半には1%程度までの利上げを考えているのだ。
また、実質金利について「実質金利は過去25年間で最も深いマイナス」と言及している。おそらく利上げ根拠の一つとしているのだろう。マイナス金利・ゼロ金利政策を続けていたので当然の結果だが、今後のインフレによって利上げ度合いは左右されるという事だろう。

【実質金利とは】

実質金利とは端的に表すと、

実質金利=名目金利ー期待インフレ率

である。期待インフレ率は市場の予測であるブレークイーブンインフレ率(BEI)が使用される。BEIがプラスということは、市場が将来的なインフレを予想しているということである。名目金利は中央銀行が利上げ又は利下げすることで調整することができる。

実質金利がマイナスの状態は一言で表すと「預金の目減り」を意味する。マイナスの度合いによって目減りの度合いも決まってくるが、日銀は現在のマイナス度合いを「過去25年で最も深い」としており、そのため利上げ(名目金利の上昇)が必要としている。
確かに、金融資産における預金(現金)の割合が大きい日本ではよりマイナス金利の影響が大きくなるので、重要である。

【日銀の利上げペースを考える】

仮に1%まで利上げするとして、既に0.25%まで利上げしているので残り3回利上げ実施することになる。利上げの機会は年8回あるが、来年後半までにとなると、今年あと1回、来年2回というのが妥当ではないだろうか。何となくではあるが。

今年に関しては、急ピッチの利上げを避けるのであれば2会合連続の利上げは考えにくい。秋に自民党総裁戦と、もしかすると衆院解散も考えられるので政治日程を避けるなら10月も考えにくい。消去法で考えるなら、12月に利上げがもう1回あってもおかしくないだろう。

【ドル円・クロス円への影響】

欧米諸国が利下げに足並みが揃う中で日銀は利上げを進める意思を示している。
当然、円高が進むことになるだろう。現在はドル円140円〜145円で推移しているが、実際に追加利上げとなれば130円台に突入することだろう。

【経済と株価への影響】

一般的に、利上げは株価にマイナスである。経済にとっても米国の個人消費の状況を鑑みるに、住宅ローンや企業の借り入れに影響が出るので当然マイナスである。また、今までの日経平均株価上昇は円安に支えられていた部分がある。よって、利上げによって日経平均株価にプラスの要素は無いに等しい。


一方で、仮に1%まで利上げしたとしても、現在の米国とEUの金利はそれぞれ5%台と4%台である。欧米は利下げを予定しているが、それでも中立金利が1%台になるとは考えにくい。それならば、日本はまだまだ緩和的な状況が続くとも言える。相対的に緩和的な状況が続くのであれば、企業業績が大幅に落ち込まない限り、日経平均株価は持ち堪える可能性がある。

前述の通り、円安による恩恵は無くなっていくので、今後は日経平均株価は上値が重い展開が続くと予想する。今までのような幅広い銘柄が上昇することは考えにくい。
業績の見通しが良く成長が期待できる企業、円高や不況時にも強い企業が選好されるのではないか。

筆者は特に円高メリット株に注目している。以下記事も参照されたい。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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