経済金融

米国経済のソフトランディングはあり得るのか?

yuta8068@gmail.com

8月1日以降に急落していたNYダウは各種経済指標に一喜一憂しつつも8月14日には40000ドル台を回復しそのまま上昇傾向が続いている。過度の景気後退懸念が後退した為、利下げ期待からの金利低下等様々な要因が考えられる。

株価と異なりドル円は150円台を回復しておらず、債券市場は株式市場以上に米国経済の減速を織り込んでいそうだ。

筆者の米国経済に対する認識は以下の記事から変更はない。理由は発表される経済指標は強弱様々で、個人消費の落ち込みが考えられる中で大幅な改善傾向を示す経済指標が出ていない為である。様々な経済指標が一貫して景気の加熱傾向を示すものであれば考えを改めることになるだろう。

今回は米国経済のソフトランディングの可能性について、そして日米株価の行方について考えていきたい。

【ソフトランディングの可能性】

ソフトランディングシナリオの全てはFRBの利下げが来月で間に合うかどうかである。米国経済の7割弱を占めるのは個人消費だ。しかし、家計の過剰貯蓄は無く、カードローン残高は過去最高で延滞率も13年ぶりの高率である。そして、失業率は上昇傾向であり、物価は下落傾向である。個人消費の主体の家計に余力はほとんど無く、高金利に苦しんでいる姿が浮かび上がる。

一方で、労働関係の統計について以下の点は考慮は必要だ。

  • 労働参加率はコロナ前の水準に回復していない。
  • 失業率は上昇傾向だが、歴史的に見ると低い水準(ただし、サームルールのサーム氏は8月8日付のブルームバーグの記事で失業率の水準よりも変化が重要と言及している)

企業の大規模のリストラは生じていないので、今はまだ労働市場が持ち堪えているのかもしれない。

15日に通期売上高及び利益の上方修正を発表した、ウォルマートのレイニーCFOはインタビューで消費者がお買い得感を求めているとしつつも「消費者の財務健全性に綻びは見られない」と述べたという。ウォルマートは7200品目で値下げを実施していたが、それが集客につながったようだ。家計の余力を反映してか、消費者が安価な商品や生活必需品の購入に充てる資金の割合が増加しているのではないか。

米国の家計は余力は無いが、労働市場が崩壊していないため、買い物の工夫等で凌げている状況なのかもしれない。消費の先細りは確実に企業業績に反映されるがまだ猶予があるのかもしれない。非常に厳しい状況ではあるが、9月の雇用統計が市場予想より悪化しなかった場合、ギリギリのタイミングで利下げが間に合う可能性もゼロでは無いだろう。ただ、やはり総合的に考えてソフトランディングシナリオは可能性が低い。

【米国株価の行方】

ソフトランディングシナリオの場合、企業収益が大きく落ち込まず悪化したとしても早期の回復が見込まれる為、利下げ効果・期待も相まって株価は大幅上昇すると思われる。その場合、インフレ再燃も考慮する必要があるが、家計はかなり傷ついているので可能性としてはあまり高くないと考える。

筆者はハードランディングをメインシナリオに考えている。その場合、過去の歴史を振り返ると多くの場合、利下げ開始(市場参加者が景気後退をはっきりと認識)と共に株価は大幅調整を強いられている。現在のNYダウ平均PERが25とコロナ前に比べるとやや高めの水準であることも考慮するべきだろう。

米国市場の行方は9月の雇用統計に全てがかかっている。予想外に悪化となれば一気に市場が崩れる可能性があるので注意が必要だ。良化となればソフトランディングに傾くことになる。

【日本株への影響】

いずれのシナリオであっても、FRBによる9月利下げ開始は規定路線になりつつある。ジャクソンフォール会議を見極める必要もあるだろうが、基本的には円高が市場に織り込まれていくはずだ。

多くの日本企業が想定のドル円相場を140〜145円に想定しており、円安メリットの思惑により買われていた企業には逆風になる。8月の相場の動きを見ると、ドル円相場と共に日経平均も下落している。

とはいえ、日本の家計は米国に比べるとまだマシな状況であり、実質賃金プラスやGDPのプラス転換等、これから明るい話題が続きそうである。

積極的に買い向かえる状況では無いが、値頃な内需株で円高メリットの恩恵が大きい銘柄であれば投資妙味がありそうだ。

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青髭
青髭
会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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