経済金融

【円高・原油安メリット】スカイマークの個人的な2Q業績予想について

yuta8068@gmail.com

日米共に決算シーズンに入り、様々結果が出ているが、今回は以前より注目しているスカイマークの2Q決算について考察をしておきたい。

筆者が着目している航空業界の中でも国内線のみの業態のため、個人投資家でもある程度の推測は可能である。その上で、株価の上昇が見込めるのか合わせて考えていきたい。(あくまで筆者の趣味的かつ簡単な推論である。参考程度でお願いしたい)

【スカイマークの営業利益について】

企業の営業利益は端的に表すと

  • 営業利益=営業収益ー営業費用

である。そして搭乗者数を単価で掛けると航空事業収入となり、スカイマークの場合は
営業収益のほとんどが航空事業収入である。

また、営業費用についても過去の営業費用を参考に為替と原油価格からある程度の数字を出すことは可能である。

【営業収益について】

スカイマークの営業収益はほとんどが航空事業収入だが、付帯事業収入もわずかに存在する。概ね6億円〜8億円で推移しているが、例年2Qは1Qよりも若干高めに出ることが多いので、ざっくり7億円としておく。

続いて航空事業収入であるが、こちらは

  • 航空事業収入=単価✖️有償旅客数(人)

で計算できる。(有償旅客数は毎月IRで公表されている)
今年2Qの有償旅客数は2156390人(前年比103.5%)である。

単価は完全に推論なってくるが、昨年度や今期1Qや他社の状況が参考になる。

  • 昨年2Q単価:13983円
  • 今年1Q単価:11469円(前年比0.7%増)
  • 今年ANA国内線1Q単価:15502円(前年比5.2%増)
  • 今年JAL国内線1Q単価:15556円(前年比9.5%増)

1Q単価は会社計画よりも低く着地している。要因はセールによって単価を下げたことにあるようだ。大手航空会社よりもブランド力が弱く、国内旅行の需要が一巡していることから、大幅な単価増は望めそうにない。
ただし、昨年の傾向だと、大手航空会社に追従しており、2Qは最も需給がタイトになり単価が上昇する時期なので1Qよりは値上げしている可能性が高いだろう。
会社計画の単価上昇見込みは年間4.9%増である。

  • 保守的な単価予想:14080円(1Qと同じ値上げ率)
  • それなりに値上げした場合の単価予想:14821円(前年比6%増)

ざっくりした予想だが、航空事業収入は302億円〜320億円程度だろうか。ここに付帯事業収入が若干加わり、309億円〜329億円程度と予想する。
1Q同様に2Qも営業収益は過去最高になる予想である。

【営業費用について】

続いて、営業費用を考えていく。
航空会社の営業費用は固定でそれなりに発生している。内訳は燃油費、機材等のリース料、整備費用、人件費、空港使用料、等である。


多くが固定で発生する費用だが、特に燃油費、リース料、整備費用は為替や原油価格に左右されやすい。機材や燃料は基本的に海外から調達しているからである。例えば、円高、原油安だと航空会社の運用コストは下がる。

国際線だと燃油サーチャージである程度市場変動による影響を緩和できるが、国内線しか持たないスカイマークは市況による影響に対し業績が鋭敏に反応しやすい。
(為替と原油価格の感応度については、IRで公表されている)

ちなみに、スカイマークは航空需要の回復と値上げによって過去最高営業収益になっているが、昨今の円安と原油高で営業費用も過去最大になっている。(しかも営業費用は営業収益を上回る勢いで増加)

2Qについても為替、原油価格それぞれ考えていく必要がある。
また、人件費等も昨今の賃上げや世界的なインフレによって上昇していることを考えれば直近の1Qをベースに考えるのが妥当だろう。(昨年度のデータだと1Qと2Qで運行便数に大きな差はない)

為替について、2Qのドル円は1Q比で4.4%下落している。また、ドバイ原油(円換算)は13%下落している。これを各費用に当てはめていくと概ね、244億円程度と計算することができる。ここに賞与を昨年並みとして14億円足すと、258億円程度となる。さらに期ズレの費用が4億円発生するはずなので、合計262億円程度と予想する。

【営業利益と経常利益予想】

上記の計算の結果、個人的には2Q単独の営業利益は47億円〜67億円と予想する。
為替差益については、2Q期間は平すと会社想定のドル円145円程度で推移していた為見込めないとしておく。

ここからさらに営業外費用、1Q分の赤字を補填することになるので、上半期の経常利益は32億円〜52億円程度と予想する。

この数字はコンセンサス予想の32億円には届くものの、事業構造上、下半期に利益の上乗せがあまり期待できない上に円安が長引いている為、単価の引き上げができていなければ苦しい展開が予想される。

※筆者の予想通りだと、32億円という数字は単価がほとんど動いていないことを意味するので、結構保守的な数字である。スカイマークは決算の度に株価が下落しており、その様な歴史から、市場の期待値はかなり低くなっていると思われる。

【まとめ】

市況の大幅な改善が見られないため、2Qもコスト増をある程度織り込んだ決算になりそうだ。運賃を値上げできているかが運命の分かれ道となる。筆者の予想通りだと、通期で考えれば会社計画は着地できる可能性が高まる。

今後の市況にもよるが、最繁忙期の2Qに大幅な単価の引き上げが見られない場合は業績改善は見込みにくくなる。その場合は現在続いている株価の低迷が続くことになる。

先行して発表されるANAとJALの決算内容が重要である。そこである程度単価の傾向についても確認することができる。

また、昨今の大きな市況変動や国内外の政治経済情勢の不安定なことから、航空会社のビジネス環境は安定的とは言えず、仮に好決算であっても見通しを立てにくいという意味で上方修正や増配等は発表しにくいと考える。

※11月3日追記
ANAとJALの決算が先週発表された。国内線の単価(2Q単独)を確認しておこう。

  • ANA国内線単価:16356円(前年比2.8%減)
  • JAL国内線単価:16803円(前年比1.9%減)
  • ピーチ国内線単価(ANA):前年比4%増
  • JAL系列LCC:いずれも単価は10%以上増(国際線も含む)

1Qと異なり、ANAとJALの単価が前年比減となっていることは気掛かりである。(ちなみに国際線単価も減少している)
一方で、LCCの単価は上昇している。スカイマークはフルキャリアとLCCの間に位置しややLCC寄りの単価設定である。おそらく単価は微減〜微増の間ではないかと考える。ピーチ以上に単価が上昇しているとは考えにくいので、最大でも4%増であり、下手すると前年比減まで考えられる。座席利用率は高止まりしているので、どちらかと言うと単価上昇の可能性が高いだろう。

いずれにせよ、大幅な単価上昇が期待できる状況では無いので、2Q決算は無難なもの或いは微妙なものに着地するのではないか。市場の反応は読みにくい。少なくとも決算後にS高とか、そう言った事は考えにくく仮に株価大幅上昇となったとしても依然割安な株価水準である。株式の新規又は追加購入を検討しているのであれば、リスク考えれば、11日の2Q決算内容を確認してからでも遅くはないだろう。

【関連記事】

ABOUT ME
青髭
青髭
会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
記事URLをコピーしました