経済金融

【ドル円・日本株】日銀の主な意見と追加利上げの可能性及びその影響について

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先月の日銀金融政策決定会合で利上げが決定し、日本の政策金利は0.5%まで引き上げられた。日銀の追加利上げ可能性について、いつも通り直近の「主な意見」(2月3日発表)を読み解き、今後の動きに備えたい。併せてドル円の動きも考えていく。

【日銀「主な意見」(2月3日付)と今後の追加利上げ見通し】

1月に日銀は追加利上げを実施したが、主な意見を読むとその理由について以下の通りと考えられる。

  • 日本の景気は回復傾向にあり、日銀のほぼ想定通りである。
  • 日本経済はオントラックな状態にある。
  • 2025年春の賃上げは昨年と遜色ないレベルで実施される見込みである。
  • 米国経済はソフトランディングとなる見通しであり、今後加速する可能性がある。
  • 物価の安定目標である2%を継続的に超えていく可能性が高い。今後は物価の上振れリスクに注意すべき局面である。

つまり、日本の経済も物価も安定しており、米国経済も安定的であることから追加利上げしても問題ないという判断である。尚、問題ないとは、日銀としてその様に考えているという意味である。

では今後の追加利上げについてはどうだろうか。追加利上げの観点から、主な意見で気になるポイントは以下の通りである。

  • 中立金利1%の文言が無くなっている。(昨年までは何度も言及されている)
  • 今後は、「物価の上振れリスクに注意していくべき局面」と言及。尚、物価或いはインフレの上振れリスクについては何度も言及されている。
  • 「利上げ後も、実質金利は大幅なマイナスであり、経済・物価がオントラックであれば、それに応じて、引き続き利上げをしていくことで、そのマイナス幅を縮小していく必要がある。」と言及。
  • 「今後、過度な緩和継続期待の醸成による円安進行や金融の過熱を避ける観点から、金融緩和度合いの調整を行うことも必要である。」と言及。

いかがだろうか。昨年までの日銀の「主な意見」ではオントラックな経済状況下では、今年後半までに中立金利1%までの追加利上げを目指す方針が示されていた。恐らくその方針は継続されることだろう。

主な意見でも言及されているように、追加利上げ後でも日本の実質金利は大幅マイナスであり、それは国民の現金の目減りを表す。日銀の見通しだと、2025年の予想物価上昇率は2.5%、2026年は2%である。このまま行けば、大幅なマイナス金利が続くことになり、追加利上げの根拠の一つと成り続けるだろう。

中立金利1%の言及が無くなっていることはやや気になる点である。マイナス金利の解消は昨年から継続的に日銀が指摘していることであり、その解消には2%程度まで追加利上げする必要があり、英米に近づけるのなら3%以上の利上げが必要である。日銀としては、その水準までの利上げが妥当と考えている可能性がある。

1%以上の利上げには、常識的には実質賃金プラスの定着(直近の12月分はプラス)や日本の経済成長が必要になってくる。不動産や株価への影響も大きいので慎重に実行されるべきである。

まとめると、1月の追加利上げは今年後半までの1%までの利上げ(残り2回分)を考えれば妥当なペースと言える。つまり、このままの経済状況が続くのならば、今後も同様のペースで追加利上げが実施される可能性は高いと考える。

【まとめ 〜追加利上げの影響について〜】

利上げについて考えるべきは不動産価格と株価への影響である。
いずれも、仮に1%まで利上げされたとしても諸外国よりはまだ緩和的なので、大きな下落は考えにくい。日本のインフレ基調が続くのであれば、それらの資産価値も穏やかに上昇していくことが考えられる為である。ただし、流動性を弱め、価格の上値を抑える可能性はあるだろう。

続いて家計への影響はどうだろうか。
特に住宅ローンへの影響は大きいと考える。日本の住宅ローンの内、7割以上が変動金利型である。激変緩和処置があるので、直ぐに大きな影響は出ないだろうが、ローンの支払いは毎月確実に発生する出費なので、将来的に家計の可処分所得を圧迫する懸念はある。
一方で、マイナス金利解消や実質賃金のプラスにより、資産や家計の経済状況が好転する層が出てくることだろう。特に賃上げが可能な産業や組織に属しているかどうかで格差が拡大する可能性はある。資産を持っているかどうかも重要な点である。

最後にドル円への影響を考えたい。
シンプルに考えれば円高への支援になる可能性が高い。この前提はFRBが現在の金利水準を維持した場合に成り立つ。直近の米国CPIとPPIは市場予想を上回っている一方で、小売売上高は様々な要因があるにせよマイナスであった。小売売上高等の経済指標が今後好転或いは回復し、CPIやPPIも上昇を続けるのなら米国のインフレ再燃リスクが意識されることになる。ただし、その場合であっても日本も追加利上げを実施している状況の為、米国側の大幅な利上げが市場に意識されない限り、穏やかな円高になると考える。
テクニカル的にはドル円は昨年のピークを超えられず、52週移動平均線を再び割り込む様相を示している。
とは言え、基本的にはドル円は日米両国の経済状況に左右される。今後も日米両国の経済金融政策に注視していきたい。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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