【日本株】東日本旅客鉄道の経営ビジョンの実現可能性について
JR東日本は7月1日に経営ビジョン「勇翔2034」を発表した。
内容は2033年度に2024年度比で営業利益を倍増させ、配当性向も段階的に向上させる計画である。
今回はJR東日本の新たな経営ビジョンについて、その実現可能性と株価について考えてみたい。
【経営ビジョンの内容と実現可能性】
改めて新経営ビジョンを確認しておこう。会社発表によると計画値や内容は以下の通りである。
- 内容:既存のモビリティ事業(鉄道)と生活ソリューション事業(不動産、ホテル、金融等)の内、特に生活ソリューション事業の成長を加速させ、それぞれの事業のシナジー効果で企業として成長していくというもの。
- 営業利益:10年で倍増を計画(モビリティ:2,500億円、生活ソリューション:4,500億円)。2027年のKPIは4850億円。
- 配当性向:2027年度に40%を目指す。(現状は30%程度)
JR東日本の経営ビジョンが実現するかどうかが重要である。将来のことは誰にも分からない。
それでも一応考えてみると、直近の決算で非運輸事業は既に営業利益の40%を稼いでいる。また、まだ1年目の第一四半期ではあるが経常利益の進捗率も30%程度と悪くない数字である。来年度からの電車運賃値上げが承認されたことも重要である。
JR各社は既に駅ビル開発を中心に不動産事業を拡大させているが、その中でもJR東日本は首都圏に優良な立地と交通網を保有する点で大きなアドバンテージを持つ。
総務省の発表によると東京圏への人口流入は2024年で13万5,843人と加速しており、歯止めがかからない状況である。日本の人口減少が続く中で、この人口流入加速は実需面で支えになるだろう。
懸念点として日本全体の人口減少や日銀の利上げによる不動産市況の悪化が挙げられる。ただし、それでも首都圏の人口流入が今後も続くことが考えられることや、日銀が仮に1%程度まで政策金利を引き上げたとしても、政府目標のインフレ率2%以上が継続する限りマイナス金利に変わりは無く、大幅に不動産市況が悪化するとは考えにくい(ただし、都心部を除いて不動産市況に鈍化の兆しが出ていることは要注意である)。
中長期的には日銀の利上げ、ドル安によって穏やかな円高になるかも知れず、内需系企業がやや有利な状況が続く可能性があり、そのことはJR各社には追い風である。
【株価の目安について】
経営ビジョンの目標が達成された場合、PER15倍だと10年間で概ね6,000円程度まで株価が上昇することになり、一つの目安になるだろう。
ただし、目標達成の確度が高まるにつれて、先回りして上昇することも考えられるし、当然今後の決算内容が悪ければ株価は下落することになる。
【まとめ 〜全ては今後の決算内容次第〜】
JR東日本の株価は年初来で27%上昇しており、日経平均株価をアウトパフォームしている。今後穏やかな円高に傾けば、内需系企業にとってさらに追い風である。
ただし、この状況が続くかは決算内容次第であり、経営ビジョンで示した目標達成の確度を確認していく必要が続くだろう。特に不動産事業の行方に注目していく必要があるだろう。
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