【原油・日本株】原油価格の今後を考える
WTI原油価格は2022年に1バレル90ドル台まで上昇し、その後下落し、2024年は平均すると1バレル76ドル前後で落ち着いている。2024年も80ドルを超える期間があったが、現在は70ドル前後に止まっている。
今回は原油価格について、その見通しと日本株への影響を考えていきたい。
【産油国と消費国の動向と原油価格の見通し】
原油の価格と需給については産油国と消費国の動向を確認しておく必要があるだろう。主だった国々の動向を示しておく。
まず、産油国についてだが、各種報道によると概ね以下の通りである。
- 米国:世界最大の産油国。2024年はエネルギー省の見通しを5%上回る産油量。2025年は微増に止まる見通し。トランプ政権の政策により大幅な増産が実現する可能性は低い。
- OPECプラス:現在の減産の枠組みを2026年末まで維持の方針。
- カナダ:世界4位の産油国。2030年まで生産量増加が続く見通し。アジア圏でシェア拡大。
- 中国:世界7位の産油国。輸入国でもあり、産油量については既に最大化されていると考えられる。
- ブラジル:世界8位の産油国。今後も生産量増加の見通し。また、探鉱山についても今後5年間で75億ドル投じられる計画である。
その他、ガイアナ、スリナム、ナミビアで油田の発見が相次いでいる。石油は主だった産業のない国々にとって天の恵みである。今後も開発と生産が続くことだろう。
消費国についてだが、最大の消費国は米国である。中国、インド、サウジアラビアと続く。自足率の低い国に絞って確認しておく。
- 中国:米国に比肩する消費量。世界最大の石油輸入国。中国石油最大手のCNPCは従来の予想を前倒しして2025年に原油需要のピークを迎える見通しを示している。中国経済の低迷や電動化の進展により需要は鈍化傾向。中国での新車販売に占めるEVシェアは既に50%に達している。
- インド:2030年まで消費量拡大の見通し。
- 日本:経済産業省の見通し(2028年まで)によると、今後微減する見通し。
尚、電動化やEVの普及は中国以外の国でも進んでいることである。
上記を総合すると、今後も原油生産量は増加傾向に、消費量は鈍化傾向になりそうである。特にインド経済が足踏みしている中で、中国の原油需要がピークを迎えそうなことは原油価格に大きな影響を与えそうである。
現在のWTI原油価格は1バレル70ドル前後で推移しているが、コロナ前は50ドル前後で推移していた。産油国と消費国の動向が大きく変化しない限り、原油価格は下落傾向と考える。
ちなみに、国際エネルギー機関(IEA)は2030年までに大幅な供給過剰になることを予想している。
【まとめ 〜日本株への影響について〜】
原油価格は短期的には地政学的リスクにも大きく影響を受けるので、予測が難しい。ただし、上述の通り中長期的には下落していくことが予想できる。
原油価格が下落するのであれば、輸入国の日本では物価が下がり消費が喚起されることが考えられる。また、原油安は円高の支援材料である。
そして、当然の事ながら、原油安は燃料を使用する企業に恩恵をもたらすことになる。空運、海運、エネルギー各社にとっては業績に直結する話である。この中で特に空運はコロナ後の影響を引きずっており、株価の推移はあまり思わしくない。空運は現在の円安水準では業績に逆風なので難しいところだが、原油安を考えると中長期的な目線では投資妙味があるのではないだろうか。また、今後仮にドル安に振れたとしても、需給を考えれば大幅な原油高は考えにくい。
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