経済金融

【ドル円・日本経済】米国の覇権は継続するのか

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4月21日の米国市場ではドル安、株安、債券安のトリプル安が発生した。原因はトランプ政権の関税政策やトランプ大統領のFRBパウエル議長へのプレッシャーを与える言動によって、米国への信認が低下したことが考えられる。

このまま行けばドルは基軸通貨では無くなり、米国は覇権国としての地位を失うとする言説まで出てきている。また、ヘッジファンド創設者のレイ・ダリオ氏は米国の覇権は最終局面に入っており、次の覇権国は中国としている。

また、トランプ政権はバイデン政権に続き、中国を覇権挑戦国とみなしており、最大限警戒している。

果たして次の覇権国はどこだろうか、今回はやや経済金融の話からはズレた内容になるかもしれないが、思索してみたい。

【基軸通貨の恩恵】

米国は基軸通貨のドルを発行することができる。これにより米国は大きな恩恵を受ける。わずか数セントで印刷したドルで世界中の物を購入したり、輸入することが可能である。これは普通に考えて物凄いことである。その上、基軸通貨である以上、その価値は毀損しない。世界中の国々や企業が取引に必要になるので、需要が常に存在する為である。

基軸通貨国の条件は様々な言説があるが、まとめると、世界最大の経済大国かつ軍事大国で、法治国家かつ自由経済であり、中央銀行に独立性があることで信認が担保されることが条件である。結果、米ドルは圧倒的な流通性を誇る。

その恩恵から、米国は基軸通貨の対抗馬に敏感であり、トランプ大統領はかつてBRICs共通通貨構想を激しく批判したことがある。

一方で、基軸通貨国には弊害も存在する。恒常的なドル高と財政赤字である。ドル高によって米国内の製造業は空洞化し、財政赤字によるインフレで米国民は苦しむことになる(他方で、高金利による利払いによって米国民の家計が潤うことも忘れてはならない)。こうした弊害を解決する手立てとしてトランプ政権は関税という手段を考え、トランプ関税騒動につながっていく。

基軸通貨国の条件を考えると、覇権国は自然と基軸通貨国となる。

【中国は次の覇権国なのか】

2024年にノーベル経済学賞を受賞したアセモグル氏、ロビンソン氏、ジョンソン氏は国家が繁栄或いは衰退する理由は政治経済制度に依るとして、収奪的制度の国はやがて衰退するとした。

中国は共産党による独裁政治であり、法治国家ではない。ジャックマー氏が雲隠れするなど、経営者は常に監視下に置かれている。世界的な有力企業も少ない。ノーベル経済学者の理論が正しければ、収奪的制度改めない限り、中国が覇権国になることは難しいだろう。

米国はトランプ関税による騒動(方針の二転三転)やトランプ氏が大統領に選出されていることが象徴するように、歴然とした民主主義国家である。

筆者はもっと単純に中国が覇権国になることが困難と考える。

そもそも、米国、EU、日本や英国等の西側諸国のGDPと軍事費のシェアは世界の6割弱を占めており、世界の過半である。確かに中国はGDPでは世界2位で2割を占めるが、これは人口が多い為で一人当たりのGDPは2024年で1万3630ドルに過ぎない。長期間の高成長に関わらず、未だに日本の半分以下である。中国はまだまだ豊かな国とは言えないのである。

また、中国は出生率が低く少子高齢化が進んでおり、日本が少子高齢化によって衰退するのであれば、中国も同様である(一応、少子化は先進国共通の課題である)。

中国はGDPの2割を占めるに過ぎず、西側諸国以外の残り2割の国々と同盟関係というわけでもなく、これから大きな経済成長がない限り覇権国になるのは難しいだろう。

サマーズ元財務長官は2022年に中国が持つ様々な課題から、中国が米国の経済規模を上回る可能性は低いとした。2025年現在もそうである。今後も恐らくそうなるのではないか。

【まとめ 〜今後も米国覇権は継続か〜】

今の所、中国以上の対抗馬は見つかっていない。その中国が覇権国になる可能性が低いのであれば、他に選択肢は無く、米国による覇権は継続しそうである。それは米ドルが基軸通貨であり続けることを意味する。

現状、ドル安が進んでおり、ドルインデックスは100を割り込んでいる。これはユーロ高、円高の裏返しでもある。EUは既にECBが2%台まで利下げを実施し、ドイツが財政出動に積極的になっている。日本はインフレが定着し始めており、日銀が利上げに積極的である。

歴史的に見れば、ドルインデックスはまだまだ下がる余地があり、米国の政策金利は諸外国と比べて高水準で利下げ幅は大きく残されている。また、基軸通貨である以上避けられないが、程度の問題として、トランプ政権は政策的に財政赤字を縮小しインフレを沈静化させる方向に動くだろう。その為、まだドル安は続く可能性はある。

トランプ政権の政策による、日本経済への影響は複雑である。関税によって自動車等の輸出産業はダメージを受けるが、一方で円高が進んだ場合は内需関係で恩恵を受ける業界も存在する。米国と諸外国の交渉によって関税率が変動した場合、日本への影響も複雑化する可能性がある。

今後も各種報道に目が離せない日々が続きそうである。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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