経済金融

【ドル円・日本株】日米関税交渉と米国雇用統計結果、市場の行方について

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7月3日に米国雇用統計(6月)が発表された。内容は市場予想を上回り、米国の労働市場が堅調なことを表す結果であった。その結果から、FRBによる利下げ観測は後退している。

今回は米国雇用統計の結果を振り返り、今後のドル円や株式市場の動向を考えていきたい。

【米国雇用統計(6月)の結果と市場の反応】

米国雇用統計の結果は以下の通りであった。

  • 非農業部門雇用者数(前月比):14.7万人(予想:11.4万人)
  • 失業率:4.1%(予想:4.2%)

特に失業率が予想外に改善したことはサプライズである。結果から、4月に発動したトランプ関税の影響が労働市場に波及しているとは考えにくい。

雇用統計発表後、米国市場ではNYダウを始め、株式は上昇して取引を終えている。予想外に強い内容により、FRBによる利下げ観測が後退したものの景気後退リスクも同時後退し最終的に株価上昇となったのであろう。

パウエル議長を始め、FRB理事メンバーは関税による影響を慎重に見極めており、今回の雇用統計結果を受けて利下げは遠のいたと考えて良いだろう。また、トランプ政権の減税法案も成立している状況から、当面米国が利下げが必要な事態になるとは考えにくい。

ちなみに、ドルインデックスは穏やかな下落が続いている。ドル安が続く理由として、トランプ政権の姿勢、関税交渉が不透明であり、減税による財政赤字悪化懸念等様々考えられる。

【決算シーズンに入る株式市場】

7月になり、日米ともにこれから決算シーズンに入る。
4月以降のトランプ関税による影響がどの程度発生しているのか、主要企業の決算内容で確認していくことになるだろう。

日本市場にとっては、日米関税交渉の行方が重要である。7月9日に迎える交渉期限内での妥結は各種報道からは困難と予想できる。ひとまず現状維持のまま交渉継続となる可能性もあるが、不透明感が増している。

ベッセント財務長官は日本の参院選挙が交渉進展の足枷になっていることを言及している。つまり、7月20日投開票の参院選後であれば、日本側が妥協等して交渉が進展することを米国側が期待している可能性がある。

自動車産業など、関税のよる影響を直接受ける業界は交渉妥結までは業績の見通しは暗いままだが、逆に言えば不透明感の高い現在がマイナスの織り込みが進んでいると言え、ある意味投資チャンスとも考えられるだろう。

【まとめ】

米国雇用統計は堅調であり、一方で以前の記事でも紹介したがPCE指数は下落傾向でインフレ圧力は徐々に緩和されてきている。トランプ政権は関税の影響が米国企業へ及ぶことに注意を払っており、その結果今後の決算で企業業績が思いの外悪くないとなれば、米国経済は堅調に進む可能性が高まる。

インフレ圧力が緩和されているとは言え、関税の影響をFRBが慎重に見極めており、経済も堅調となれば利下げ幅はさほど大きくない可能性がある。

米国企業業績も米国経済も堅調となれば、自然と米国株式市場は上昇していくことになる。

日本の株式市場は米国市場に引っ張られる形で穏やかな上昇が続く可能性がある。また、関税交渉の行方が不透明な間は日銀の追加利上げがストップするので、円高も穏やかなものになるだろう。

日米関税交渉がこのまま継続となるかはトランプ大統領次第だが、如何なる経過を辿ったとしても両国は妥結に向けて進むことだろう。少なくとも日本側にはそうすべき理由がある。ベッセント氏の発言から、7月20日の参院選後に交渉が加速する可能性が高い。仮に企業活動を促進する何等かの合意が報道されれば、関税の影響を受ける関連銘柄の株価には大きな影響が出ることになる。

今後も交渉に関する報道には要注目である。

※追記
雇用統計は堅調であったが、その中でも平均時給は予想を下回っており、直前のADP雇用統計はマイナス、JOLTS求人件数は予想を上回っていた。また、ISM非製造業景気指数は50を超えて改善していた。
一方で、直近のPCE指数が弱かったことを考えれば、経済は堅調であるのの、インフレ圧力や労働市場の逼迫は緩和傾向にあり利下げへの下地が整いつつあると言う、やや複雑さを増した状況と言える。
雇用統計が概ね堅調だった理由に、トランプ政権が出来るだけ米国企業への関税による悪影響が生じないよう配慮した為と考えられる。ただし、この配慮が十分なのかは不明であり、それは今後本格化する決算発表の内容で明らかになるだろう。
配慮が不十分であるならば、トランプ政権も諸外国との関税交渉で妥協するしかなく、それは日本にとっては追い風である。果たしてどうなるだろうか。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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