経済金融

【日本株・中国経済】中国経済とデフレ、米中関税交渉の行方

yuta8068@gmail.com

5月14日、米中両国は関税交渉を開始することによりお互いの関税を大幅に引き下げた。米国の対中関税は30%、その逆は10%となった。今後交渉の進展によって、さらなる引き下げが実施されるのか注目である。

日本にとって中国は貿易輸出額で第2の国であり、その動向は日本経済にも大きな影響を及ぼす。また、中国のCPIとPPIは低下傾向にあり、これは米国による関税発動前から見られた傾向である。

今回は中国のデフレと日本経済及び日本株への影響を考えていきたい。

【デフレに陥る中国経済】

中国のCPIは2022年10月以降、CPIが前年比で2%を超えることはなく、デフレ傾向が続いている。直近3ヶ月(2月〜4月)は連続して低下している。
PPI前年比は2022年9月以降、マイナスが続いている。直近3ヶ月(2月〜4月)はマイナス幅が拡大している。

CPI、PPIともに直近3ヶ月は下落傾向が続いているが、これは米国が対中関税を発動した時期と重なり、影響が考えられる。一方で、CPIとPPIの下落傾向はトランプ政権前からの傾向であり、昨今の不動産不況の影響が考えられる。不動産不況の影響は長引きそうであり、今年に入っても尚5年分の不動産在庫が積み上がっている状況である。

中国経済は日本や欧米と異なり、GDPの個人消費が占める割合は4割に満たない。不動産関連がGDPの3割を占める(ハーバード大ロゴフ教授の推計)という、偏った経済構造である。日本における自動車産業がGDPの3%前後であることを考えると、いかに偏っているかが分かる。不動産不況が解消されるか個人消費が刺激されない限り、中国経済のデフレは続きそうである。

中国で個人消費が日欧米ほど伸びない理由の一つに、中国人自体の購買力が伸び悩んでいることが挙げられる。中国は世界2位の経済大国だが、一人当たりのGDPは未だ12,600ドル程度で日本や台湾の半分以下である。人口規模によって経済そのものは拡大しているが、中身はまだ途上国(中進国)である。

加えて、中国は不動産や鉄鋼、小売等、供給量を増やし国民に仕事を与える政策を中心に実施してきた。大きな経済ショック時を除けば相対的に需要面や景気への刺激策は採ってこなかった。これは一党独裁政治の結果でもあり、国体的な構造の問題なので当面解消は難しいだろう。ちなみに、中国の供給過剰は国際問題に発展し、米国の関税発動に繋がることになる。

経済的、政治的理由からしばらくはデフレが続きそうである。

【米中関税交渉の行方】

米中両国は一旦お互いの関税を引き下げることで合意している。今後の注目点は両国、特に中国がどの程度政策転換するかである。

米国のベッセント財務長官が4月のIMF総会で講演を実施した。その中で、中国に対して変化を呼びかけている。具体的には不均衡の是正(恐らく貿易赤字のこと)、特に製造業の消費以上の輸出に言及している。もう一つが非関税障壁の撤廃、つまり市場の解放である。非関税障壁については日本でも自動車産業に関わる部分で話題になっている。要は米国企業と米国人のビジネス環境をより充実させて欲しいと言うことなのだろう(そして結果的に貿易赤字が減る)。

トランプ政権は世界的に関税を発動しているので、貿易赤字是正は看板政策となっている。ただし、今回の関税発動は以前の記事でも言及しているが、中国対策の側面も大きい。

日本企業にとっては中国の非関税障壁の撤廃も影響を受けるが、より大きな影響を受けるのは米国から見た不均衡の是正である。米国の要求は中国の内需拡大を意味するからである。ただし、内需拡大の為には大規模な財政出動が必要であり、仮に内需拡大した場合、中国の政治体制に影響を及ぼす可能性があるので、中国にとって簡単な話ではない。

今後の交渉の推移に要注目である。

【まとめ 〜日本株への影響を考える〜】

今回は中国のデフレ、そして米中交渉の行方について考えてみた。

日本企業にとって、デフレ継続、内需拡大のいずれもビジネスチャンスとなる。
日本は長らくデフレだった為、厳しい経済環境の中で幸か不幸か日本企業にはデフレの耐性(ノウハウ等)ができている。今の中国経済は日本企業にとって辿ってきた道であり、デフレ環境で生き残っている日本企業にとって有利な側面がある。

具体的には良品計画、ニトリ、ファーストリテイリング等の小売業は日本のデフレを勝ち抜いて来た企業なので、中国文化にマッチした場合さらに成長する可能性はある。

中国でもし内需拡大策が採用された場合、個人消費が刺激されるので、中国関連銘柄の他旅行関係やインバウンドも若干有望である。

今後の米中関税交渉の行方に要注目である。

【関連記事】

ABOUT ME
青髭
青髭
会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
記事URLをコピーしました