経済金融

【ドル円・日本株】日銀の追加利上げの可能性について

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週末時点で日経平均株価は38981円を付け、ドル円は149.52円で推移している。ドル円は日米金利差に影響を受け、両国のファンダメンタルズに裏付けられている。

27日に日本は衆院選挙、11月5日に米国大統領選挙と大きな政治イベントを控えこのところ為替も株価も方向感無い動きを見せている。

今回は10月1日に公表されている直近の日銀「主な意見」と、日米両国の政治イベント、経済状況を踏まえた今後の日銀の追加利上げの可能性と、それに伴う株価の推移や銘柄選択について考えていきたい。

【日銀の主な意見】

基本的に日銀は中立金利1%を目指して利上げを進める意思を示している。ただし、実際に追加利上げの可否は日本経済と株価の動向に左右されそうだ。
以下、10月1日に公表されている日銀の「主な意見」の内容を自分なりにまとめてみた。8月8日公表分からやや追加利上げについて若干トーンダウンしていることである。利上げの根拠としていた「マイナス金利」の文言は無くなっている。

  • 日銀は米国経済のソフトランディングを予想している。可能性の一つとして、インフレ再燃リスクを考慮している。そして、米国の利下げ幅によって為替が大きな影響を受けるので、米国の動向を時間をかけて確認する必要がある。
  • ドル安、円高、株安をリスクと捉えている。
  • 円高進行と原油価格下落から、物価上振れリスクは後退している。
  • 各種データから7月の利上げは正当と考えており、日本経済がこのままの状況(現状をオントラックと認識)で推移するのであれば、早ければ2025年後半の1%という水準に向けて段階的に利上げしていくパスを考えている。
  • 次回利上げに向けて、当面、①消費者物価、②来年の春闘に向けたモメンタム、③米国経済の推移に注目している。

前回の主な意見で利上げの根拠としていた、マイナス金利に対する言及が無くなった理由は、おそらく歴史的な円安が若干和らいだ為であろう。

また、前回との大きな違いとして全体的に米国経済に関する言及が増えており、少なくともソフトランディングを予想しており、インフレ再燃リスクも考慮しているようである。
ドル円は日米10年債利回り差によって概ね決まってくるので、強い米国経済によって日米金利差が拡大するようであれば、より早いペースで利上げする必要に迫られるということだろう。

筆者は今回の「主な意見」は全体を通して利上げに対する文言は柔らかくなったものの、日銀の追加利上げに対する意思に大きな変化は無いと考える。理由を次項で述べる。

【日銀の追加利上げに対する意思】

筆者はおそらく来年後半に1%になるよう、追加利上げを進めたいのが本音だろうと考える。利上げありきでは無いものの、根拠を固めつつある。理由は以下の3つである。

  • 日本のCPIは物価安定目標である2%以上が続いている。
  • 連合が来年の春闘に向けて今年以上の賃上げを要求している。
  • 米国経済のソフトランディングは市場関係者の中でコンセンサスになりつつあり、FRB理事の相次ぐ発言からも、利下げペースは市場予想よりも穏やかになる可能性がある。

日本のCPIは下落傾向であるものの、まだ2%を下回りそうにない。
春闘については経済同友会代表の新浪氏が早くも連合の方針を妥当としており、十倉会長の過去の発言を考えると経団連も受け入れる可能性は高い。
米国の利下げペースが穏やかになるのであれば、円安是正の為に日銀は追加利上げを正当化することができる。

日銀が次回利上げに向けて注目しているポイントは、現状どれも利上げの理由になりうるものばかりである。
正当な理由が存在する内に1%までの利上げを実施して、マイナス金利を解消したいのが本音ではないだろうか。

【日米の政治イベントについて】

今後、日米ともに大きな政治イベントを迎える。

衆院選挙だが、各種報道によると与党の連立政権は維持されるが、自民党の単独過半数維持は困難又は微妙な公算が大きい。いずれにしても与党は議席を減らす見込みである。10月17日に時事通信が発表した世論調査によると、石破政権の支持率は政権末期並である。

報道の通りだと、このまま行けば衆院選挙後に弱い政権が誕生することになるが、来年の参院選に向けて世論に不人気な施策は実施しにくい状況が生まれることになるだろう。つまり、株価にマイナスなるような不人気施策である、金融所得課税強化や円高になりやすい追加利上げは敬遠されがちになることが考えられる。

一方で、石破政権は岸田政権の経済政策を継承しているため、実質賃金のプラスと金融正常化を目指す可能性が高い。その意味で、実質賃金がプラスになる環境下では追加利上げを容認すると考えられる。

米国大統領選は接戦が続いているが、リアルクリアポリティクスや各種世論調査によると、勝敗を決する接戦州の支持率は徐々にトランプ氏が優勢になっている。このまま行けば、トランプ氏が当選する可能性がやや高い。
仮にハリス氏が当選したとしても、上下両院で民主党が過半数の議席を取得する可能性は低いようである。

トランプ氏は利下げやドル安を標榜しているので、トランプ氏勝利の場合は中長期的にドル円は下落する可能性が高まる。ただし、政策的にインフレリスク意識されて、短期的にドル高に傾く可能性があるだろう。
実際、前回トランプ政権発足した際は短期的にドル高になったが、その後ドルは下落に転じている。

為替に対する政治イベントの影響を総合すると、日本が現状維持で米国がドル安方向になりやすいことを考えれば、中長期的にやや円高方向になりやすいと言えるだろう。(もちろん、かなり流動的ではある)

【米国のインフレ再燃リスク】

FRBは利下げサイクルに入り、11月にも追加利下げが想定されている。ただし、インフレが完全に沈静化しているわけでは無いので、日銀が指摘したようにインフレ再燃リスクが存在することも考慮するべきである。

  • 米銀大手各行の決算は好調。家計は健全を取り戻しつつあることを示唆。
  • 米国GDPはプラス成長を維持。
  • 直近の米国小売売上高、米国CPIはいずれも市場予想を上回る。
  • 雇用環境は安定しており、大規模な失業者が発生する可能性は低い。(ただし来月公表の米国雇用統計で失業率は悪化する可能性がある)
  • NYダウは最高値の更新が続く。

米国の実質金利はプラスが続いているが、現状を考えると果たして抑制的な金利水準かどうかは議論を呼ぶところだろう。

過去の記事でも触れているが、米国経済は二極化しており、個人消費の多くを占める富裕層や中間層にとって現在の金利水準は抑制的でない可能性がある。

PCE、原油価格、帰属家賃は低下傾向の為、このまま行けばCPIは下がり続けFRBによる連続利下げが可能になるが、果たしてどうなるだろうか。

【まとめ 〜日経平均株価の上値は重い〜】

現在、ドル円が160円台を付けた時期のように、日米10年債利回り差以上にドル円が上昇する傾向が見られている。インフレ再燃リスクや米国利下げ停止による将来的な米国債利回り上昇を見越したドル買いが発生しているのではないか。再び過度の円安が発生している可能性がある。

ただし、今までと異なり日銀の追加利上げ可能性を市場は考慮せざる得ない。日本の名目賃金は上昇を続けているので、年末から来年にかけて実質賃金のプラスが定着するのではないか。
実質賃金プラスの定着が意識されれば、追加利上げが実施されることだろう。

また、欧州は経済状況が芳しなくECBが連続利下げを決定し、中国経済も低迷している。中国経済が低迷した場合、東南アジア経済もネガティブな影響を受ける。
世界的に見れば経済はやや停滞気味であり、ディスインフレ傾向になるのではないか。そうなれば、中長期的には米国のインフレ圧力も弱まり、徐々に円高方向になるだろう。

まとめると、中長期的に考えて全体的にはやはり円高方向である。上記の過度の円安が巻き戻されれば急速な円高も考えられるだろう。

円高になった場合、ドル円とやや強い相関関係にある日経平均株価は上値が重い展開になるだろう。また、歴史的な円安が解消されたため、海外売り上げ比率が大きい大企業はEPSが下落したり、鈍化することが考えられる。グローバル企業が増えているので注意が必要である。

他方で、このところの円安で割りを食っている円高メリット株への投資妙味は高まっていると言えるだろう。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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