【ドル円・日本株】トランプ関税前の状況を考える
4月24日にトランプ政権は、自動車やアルミの関税軽減を検討するとした。
さらにトランプ大統領は4月25日は日本との関税交渉について「合意が近い」としている。トランプ関税発動からもうすぐ1ヶ月が経とうとしているが、トランプ政権は現実路線に軌道修正を繰り返している。
関税による影響が軽微になるのであれば、トランプ関税前の状況を考える必要がある。
それは為替や株価がファンダメンタルズに基づく状況に回帰することを意味する。
今回は日米両国の経済状況を考え、今後のシナリオを考えていきたい。
【米国の経済指標】
まず、米国の各種経済指標を確認しておく。
- CPI(前年比、3月):2.4%(予想:2.6%)
- CPI(前月比、3月):-0.1%(予想:0.1%)
- PPI(前年比、3月):3.3%(予想:3.6%)
- PPI(前月比、3月):-0.1%(予想:0.3%)
- 小売売上高(前月比、3月):1.4%(予想:1.4%)
- 3月雇用統計:非農業部門雇用者数は22.8万人増、失業率4.2%へ上昇。
トランプ関税発動前である3月の経済指標は総じて底堅い内容である。労働市場も堅調である。
ただし、気になる点もある。小売売上高は関税前の駆け込みもあり大幅増となっているが、CPIとPPIは減速している。小売売上高は駆け込み需要の反動で今後やや落ち着いた数字が出てくる可能性はある。CPIはコア前年比が3%を切っており、これはインフレ後では見られなかった数字である。
CPIはトランプ関税の影響で上昇する可能性はあるものの、ウォラーFRB理事やベッセント財務長官はその影響は一時的としている。仮にCPIの下落傾向が続き、失業率が微増することになれば、FRBの利下げが意識されることになる。
利下げは一般的には、株価上昇、金利低下、ドル安方向になる。米国は5%以上の政策金利を維持しており、相対的に利下げ幅が大きいことも重要である。5月では政策金利は維持される可能性が高いが、経済指標次第ではあるが、その後の6月か7月に利下げが実施されてもおかしくはない。
【日本の経済指標】
日本の経済指標も確認しておこう。
- CPI(前年比、3月):3.6%(予想:3.7%)
- 実質賃金(2月):-1.2%(2ヶ月連続のマイナス)
- 東京都消費者物価指数(4月):3.4%(予想:3.2%)
米国と異なり、昨年後半からCPI等の物価指標は徐々に上昇してきている。一方で実質賃金は依然マイナスである。関税の影響により輸出が鈍化した場合、内需にも影響が出てくるだろう。
日銀はトランプ関税前は中立金利1%を目指して追加利上げを実施していた。マイナス金利解除が2024年3月だったので、これまででは考えられないスピード感での利上げである。
トランプ関税前に回帰するのであれば、日銀の基本姿勢は追加利上げ継続である。関税の影響、関税交渉の行方を見極める為、5月では追加利上げが実施されない可能性が高い。ただし、物価高とマイナス金利が解消されていない為、その後の6月か7月に追加利上げが実施されてもおかしくないだろう。
利上げは一般的に、株価下落、金利上昇、円高方向になる。
【まとめ】
米国経済は堅調であり、インフレは鈍化傾向だが、関税の影響が軽微であればディスインフレ傾向も鈍る可能性がある。利下げがあったとしても、利下げ幅は大きくないかもしれない。ただし、主要国の中では政策金利は大きく、いざとなれば大幅利下げが可能である。その点で、株価と経済には安心感がある。
日本経済は関税と関税交渉の影響と物価動向を見極める必要があるだろう。現状は物価高とそれに伴う、マイナス金利、実質賃金マイナスという大きな問題を抱えている。
また、日本の輸入ぺネトレーション比率は上昇傾向にあり、以前よりも円安による物価上昇の影響は大きくなっている。そして、日本は主要国の中では低金利であり、緩和的な状況である。不況時の利下げ幅はほとんど無い。
日銀としては、関税の影響が軽微なのであれば、国内の賃上げが続いていて尚且つ米国や欧州の経済状況が堅調な内に追加利上げを実施したいのが本音であろう。実際、あくまで3月28日の内容になるが、日銀の「主な意見」は総じて利上げに意欲的で焦点はいつ利上げするかの「時期」の問題に移っている。
日本が利上げしたとしても、依然として極めて緩和的な水準である。米国や欧州の経済が堅調であれば、日経平均株価の下落や円高は穏やかになる可能性が高い。
仮に日米両国が6月或いは7月頃にそれぞれ利上げ、利下げを実施するのであれば、為替は円高方向に進むことになる。いくつかシナリオを考えてみる。日米両国の経済が不況で無いことを前提とする。
- 日本利上げ、米国利下げ:円高へ振れる。米国市場は利下げによって上昇することが見込まれるので、日経平均株価への影響は軽微。
- 日本利上げ、米国利下げなし:やや円高へ振れる。米国の利下げが無いということは、米国経済が堅調であることを意味する。日経平均株価は横ばい。
- 日米ともに変化なし:現状維持。
現在の情勢を考えると、日本は基本的に利上げ姿勢、米国は利上げの可能性がほとんど無い。この先は穏やかな円高、穏やかな株高(又は横ばい)が予想できる。ただし、株価全体が上がるというより、個別銘柄の選定が重要になってくるだろう。
トランプ関税の交渉とその影響など、不確実性は完全に解消されていない。今後も日米両国の経済状況に注視が必要な状況が続くことになる。
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