経済金融

【ドル円・クロス円】ソフトランディング時の為替について考える

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米国経済は堅調であり、このまま行けばソフトランディングする可能性が高まっている。直近のCPIも下落傾向にあるものの、市場予想を上回っていた。米国家計も徐々に健全さを取り戻している。NYダウが過去最高株価を更新が続けば、資産効果で個人消費がさらに加速することになる。

今回はソフトランディング時のドル円シナリオについて考察していく。

【米国家計は徐々に健全さを取り戻す】

11日に米銀大手が相次いで決算を発表したが、各社好決算であった。クレジットローン延滞率は改善しており米国家計が徐々に健全さを取り戻していることが分かる。クレジットローン延滞率については8月時点でアメリカンエキスプレスも5月からの改善を報告しており、米国経済を支える個人消費の余力が徐々に蓄積されていることが分かる。

今週以降、本格的に決算シーズンを迎えるが大企業の決算が好調を維持できるならば雇用も維持される可能性が高い。米国では、会社数のわずか0.13%に過ぎない大企業が米国全体の雇用の半分を支えている。

雇用が維持されるならば米国家計の回復傾向は維持され、物価の低下や利下げによる利払い減少も家計を支援するだろう。また、利下げは米国株に有利に働き、米国株上昇は相対的に富裕層に恩恵をもたらし資産効果により個人消費を加速させることになる。(米国の構造的に個人消費の4割は富裕層が占めている)

米国では異例の好循環が生まれており、このままいけばソフトランディング達成の公算が大きい。

【新規失業保険申請件数は急上昇】

先週発表された新規失業保険申請件数は25万人を超えて、市場予想を上回り急上昇となった(約3万人増加)。内容を確認するとハリケーンが直撃した州で失業者が増加した他、ミシガン州等ハリケーンと関係ない州でも大幅な増加が確認されている。

ハリケーンの影響により今後数週間に渡り増加傾向が見られる可能性は高い。また、ミシガン州ではUAWによる大規模なストライキが発生しており、この影響も示唆されている。

今後の大企業の決算発表にもよるが、レイオフが業績悪化によるものでなければ過度の懸念は不要だろう。ただし、一時的にせよ失業者数が増加し、それが来月発表の雇用統計に反映されるのであれば、FRBによる利下げを正当化することになるだろう。

【ドル円の行方】

このところのドル円チャートは日米金利差に綺麗に相関しており、今後のドル円は日米両国の金融政策に左右されるところが大きいだろう。

まず、米国は上述の通り、利下げサイクルに入っているが経済が好調の為、当初想定された中立金利からさらに引き上げられる可能性が高い。現在の市場予想は来年半ばに3.5%程度までの利下げである。

一方で日銀は中立金利1%に向けて利上げの意思を示しており、石破首相は日銀の独立性を確保する意向を示しているので、このまま行けば追加利上げが実施される可能性が高い。(直近の日銀「主な意見」では若干トーンダウンしているが、根本的な利上げに向けた意思に変更はなさそうである)

過去の円高サイクルでは1年以上かけて概ね20%以上円高方向に為替が動いている。今年付けた最高値である161円から20%程度となると概ね130円前後まで円高が進むことになる。この130円を基準に米国経済次第で前後することになるのではないだろうか。例えば、米国が利下げ速度を緩めたり、利下げ停止する事態となれば140円前後で止まる可能性も高いだろう。

【まとめ】

中長期的なドル円は現在のところは日米の金融政策の方向性を反映して円高方向に進む可能性が高い。(というより、円高トレンドに突入している可能性が高い)

ただし、その度合いは日米両国の経済状況に左右されることになる。各種経済統計に注意が必要である。

特に、来月発表の米国雇用統計はハリケーンやストライキの影響で好調な企業業績に反して再度悪化する可能性があり、これをFRBがノイズと捉えるかどうかでシナリオも変わってくるだろう。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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