【日本株】良品計画、3ヵ年ローリング計画について
11月15日に良品計画が「3ヵ年ローリング計画」を発表した。以前に発表していた中期計画に比べると、やや保守的で落ち着いた内容であった。今回は中期計画との比較、ローリング計画の実現可能性について考えていきたい。
【3ヵ年ローリング計画の概要】
端的に言えば、国内外で積極的な出店を進め、販管費等で効率化をしていくことで営業利益と営業利益率を向上させる計画である。27年8月時点での具体的な数字目標は以下の通りである。
- 営業収益:8800億円(24年8月期比約1.3倍)
- 営業利益:790億円(24年8月期比約1.4倍)
- 営業利益率:9.0%(24年8月期実績8.5%)
2021年に発表した中期計画では24年8月期時点で営業収益7000億円、営業利益750億円、営業利益率11%を計画していたので、現在の進捗に合わせて軌道修正したことになる。
出店計画も出店数の内、国内を50%、東南アジアを25%、中国を25%として、今まで以上に東南アジアに比重を置くようだ。
営業利益率改善については販管費の削減が言及されていたが、今期でも計上していたグローバル販管費の先行投資もその一環なのだろう。
【実現可能性と株価の見通し】
上記の数字をそのまま信じれば、営業利益が3年で1.4倍になるので純利益もその程度向上するのであれば、株価も1.4倍程度まで上昇が見込めることになる。成長が続くのであれば、良品計画に対する期待値が上がりPERも上昇するかもしれない。
仮に今年の株価から1.4程度上昇が見込めるのであれば、今年の株価推移を考慮して3年後に3200円〜4000円程度まで見込める計算である。ただし、これは計画通りに利益が伸びた場合である。既に以前発表されていた中期計画は未達成なので、注意が必要である。
計画の成功の為には、ローリング計画に「世界で成長に挑戦」とあるように、グローバルに「無印良品」が受け入れられる必要がある。やや哲学的かつ大袈裟な話になるが、無印を突き詰めると禅等の日本文化や価値観に行き着く。日本への海外旅行者は年々増加し、世界的にも日本食や日本文化の人気が高まっているので、受け入れられやすい土壌は出来つつある。また、日本製品(日本の企業)は高品質なイメージがある。ブランディングと品質の維持向上が肝になりそうだ。
世界第3位のアパレルブランドまで成長したユニクロは、世界的に普遍的なものを品質とコスト改善することで成功した、言わば「アパレル版トヨタ」の様なものであり、生活雑貨等トータルで生活をサポートする無印良品と方向性は異なる。その為に、東アジアや東南アジアで開発拠点を置いて、その国々で良品計画が日本でやってきたことを実行していくという事なのだろうか。現地での人材育成や価値観の浸透が重要になってきそうである。
今後東南アジアへの投資を強化するのは、来年東南アジアの経済成長率が中国を超える予測(出典:ジェトロ)が出ていることを考えれば妥当である。また、かつてIKEAが一度日本から撤退した歴史を考えれば、一旦欧米は置いといて、まずはアジアから重点的に出店していくことも理に適っている。
営業収益については、中期計画未達とはいえ94.5%の進捗率だったことを考えれば、順調に出店が進めば達成の難易度はさほど難しくないと言える。問題は営業利益と営業利益率である。いずれにせよ、計画の成否の見通しは何とも言えない。月次実績や各決算での進捗状況の確認が必要である。
【まとめ】
今回会社が発表した3ヵ年ローリング計画は以前の中期計画よりは落ち着いた内容になっている。ただ、その達成については随時進捗を確認し、慎重に見極める必要があるだろう。
ローリング計画の全体的な方向性は理に適っており、直近の本決算も内容は良かったと言えるので中長期的な投資先としては問題ないと言えるのではないか。3年で1.4倍という数字も過去3年での日経平均株価の上昇率が1.3倍程度なことを考えれば、悪くない数字である。
筆者の心情的には無印良品が世界的に受け入れられると言うことは、大袈裟かもしれないが、現地開発で薄まっていたとしても日本文化や考え方が広く浸透したとも言えるので、応援したい気持ちはある。
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