【ドル円・日本株】日銀の追加利上げ可能性を考える
6月16日・6月17日に開催された日銀の金融政策決定会合で、政策金利は据え置きとなった。トランプ関税発動前は少なくとも1%までの中立金利に向けて、年内数回の利上げが予想されていたが、追加利上げの実現性に疑義が生じている状況である。
今回は日銀の追加利上げの可能性について考えていきたい。
【日米関税交渉が終了するまでは困難か】
日米関税交渉が終結するまでは追加利上げの可能性は低いだろう。
5月の日銀会合で公表した展望リポートでは物価安定目標の実現時期を2026年から2027年に先送りしている。理由として、トランプ関税の影響を考慮しているようだ。
先日のG7サミットで日米首脳会談が実施されたが進展は無く、日米関税交渉の妥結までの道のりは長くなりそうである。日銀が追加利上げを躊躇している理由が日米関税交渉による経済への影響なのであれば、当面は追加利上げは無いことになる。
【自動車関税の影響】
トヨタ自動車は4月〜5月の関税コストを1800億円と試算している。ホンダは通年で4500億円である。
日米関税交渉が長引けば長引くほど影響は大きくなる。
ただし、考えなければならないのは、米国による追加関税は日本のGDPを押し下げるが、マイナス成長や景気後退まで影響を及ぼすかは微妙である。
自動車産業が日本のGDPに占める割合は2.5%程度である。
筆者は以前の記事でトランプ関税が日本のGDPへ及ぼす影響度は概ね0.4%の下押しと予想したが、この程度で済むのであればマイナス成長にはならない。
また、日米関税交渉自体は難航しているが、過去の日米交渉はいずれも妥結に至っており、今回の交渉もいつかは妥結に至ることだろう。あくまで現在の状況が一時的なのであれば、現在は影響を過度に織り込んでいる状況とも言える。
【FRBの利下げ予測】
6月のFOMCでFRBは年内の利下げ予想を2回としていた。また、6月24日にボウマン副議長がインフレ圧力が低下した場合の7月利下げに言及している。
米国のCPIは穏やかな下落が続いているが、この傾向が続けば年内に利下げが実施される可能性が高いだろう。その場合は、円高方向に進むことになる。円高に振れた場合は日銀が利上げする理由が一つ減ることになる。
ただし、FRBの利下げ決定は経済状況、物価状況に左右されるので、まだまだ不透明な状況が続くだろう。
【まとめ 〜イベント消化後は追加利上げか〜】
日銀はトランプ関税発動前までは追加利上げに積極的な姿勢であった。日本のCPIは3%台で高止まりしており、日銀としても交渉妥結後は速やかに利上げ姿勢に戻ることだろう。
その場合、交渉妥結の時期にもよるが、FRBの利下げ、日銀の利上げの時期が重なるかも知れず、その場合は思ったより円高に進む可能性もある。
また、日本株への影響については円高に振れた場合は日経平均株価の上値は重くなるが、関税交渉妥結やFRBの利下げがあった場合はそれらによって引き上げられる可能性もある。
※追記
6月25日に最新版の日銀「主な意見」が公表された。その中で、追加利上げやへの言及がなくなっている。やはり、現在の経済環境では追加利上げは厳しいということなのだろう。
【関連記事】