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【日本株】ドンロー主義と関連投資分野を考える

yuta8068@gmail.com

1月2日に米国はベネズエラを強襲し、同国大統領を捕獲するという衝撃的な事件を起こした。その後、ベネズエラは副大統領が大統領になり、米国との原油取引きに応じる構えである。

驚きなのが、米国の行動そのものもそうだが、その軍事力である。ベネズエラはロシアや中国から軍事的支援を受けていたが米国はベネズエラの軍事力を無力化し、米国側の犠牲者は0名という信じられない戦力差を見せつけた。

米国によるベネズエラ侵攻後、トランプ大統領が発した「ドンロー主義」について様々な憶測が生じ、「米国は西半球以外から撤退するのでは」等の言説も出ている。

今回は米国の「ドンロー主義」と関連銘柄について考えていきたい。

【ドンロー主義と国家安全保障戦略】

米国は昨年に「国家安全保障戦略」を公表している。国家安全保障戦略は米国で政権が発足するごとに毎回作成されている。全文はインターネット上で公開されており、各種ツールで和訳するができるので試してみることを薦める。

トランプ政権のモットーは「ドンロー主義」であり、ドンロー主義の具体的な思想、戦略を説明したものが国家安全保障戦略と読み取れる。もっと遡れば第一トランプ政権時から経済政策、経済安保政策のブレーンであるミラン氏の「マールアラーゴ合意」、ナヴァロ氏の思想が参考になる。

筆者は次のように読み取った
「米国はこれまで国際秩序を保つアトラスのように振るまってきたが、アトラスになる為のコストを米国と米国民が負った結果、その間に競合国は増長し同盟国は怠惰で頼りない存在に成り下がった。米国本土やかつて米国の裏庭であったはずの西半球にまで競合国が影響力を及ぼしている。先端技術や経済での優位性の低下や移民や麻薬の流入等によって、米国が脅かされている。米国経済を利用した不公正な貿易や米国への経済的な攻撃を防止し、現在の世界最強の軍事力と経済力を維持する為に強力な行動を起こす。まず西半球での地位を確立し、同時に世界的に同盟国と連携し競合国に対する優位性を保つ」と言うものだ。

読んで思ったのは、西半球以外への不干渉主義というより、覇権維持への危機感である。競合国、特に中国に対する危機感が高まっている印象である。国家安全保障戦略には西半球での戦略的資源戦略の開発にも言及されており、今回のベネズエラ攻撃は中国(競合国)の排除と共に一石二鳥だった可能性が高い。戦略には「米国のような数多くの多様な利益を有する国にとって、非介入主義への硬直的な固執は不可能」とあり、堂々と他国への介入を宣言している(この点はトランプ政権に限らず、米国は歴代政権は何かしら介入をしてきたことに留意が必要である)。また「柔軟な現実主義」の項目で、民主主義や社会制度の変革を求めず、その国の歴史や伝統を重んじるとしており、この点でもベネズエラ攻撃の事後処理に付合する。

ちなみに、国家安全保障戦略は地域の項目で西半球の次にアジアの項目があり、その多くは中国に対する記述である。今までの米国による開放政策や中国への投資、アウトソーシング推進は誤りであり、貿易関係を再調整するとされている。丁寧に中国製品の間接輸入の説明までなされている。

日本にとって特に重要なのはアジア、中国、台湾問題なので、同盟国や中国に関する項目や関連する項目を確認しておこう。筆者の要約で記載するので、興味がある方は原文を確認することをお勧めする。

  • 勢力均衡:次の覇権国の台頭を許さない。世界的・地域的な勢力均衡を維持する。他国による地域支配を阻止。その為には米国が先端技術を開発し、軍事力と経済力で優位に立つ必要がある。
  • 台湾有事の抑止:南シナ海は海上輸送の3分の1を占めており、ここが恣意的に運用されることを抑止しなければならない。米国は従来の宣言的政策を維持。台湾海峡における現状の一方的な変更を支持しない。第一列島線全域における侵略を防止できる軍隊を構築する。しかし、米軍が単独でこれを担うことはできず、担うべきでもない。
  • 同盟国への軍備増強要請:日本、韓国、オーストラリア、台湾等の同盟国に対して軍備費増強や抑止力強化への投資を要請。
  • 同盟国との連携強化:クアッドの推進。同盟国の経済がいかなる競合勢力にも従属しないよう確保。技術力等の強化でも連携。
  • 米国民と経済の保護:国家主導の掠奪的な補助金と産業戦略、不公正は貿易慣行、雇用破壊と産業空洞化、大規模な知的財産窃盗と産業スパイ活動、レアアースのサプライチェーンへの脅威、フェンタニルの米国への輸出、プロパガンダ等、を終わらせるとしている。ちなみにこれらの項目は全て「アジア地域」で言及されており、特定はされていないがある競合国に対する言及だと思われる。米中のレアアース輸出の合意(1年間)とパックスシリカ宣言、ナヴァロ氏の「中国によるレアアース支配を終わらせる。それまでの間は外交する」等の言及はこれに沿った動きと考えるのが自然だろう。
  • 貿易赤字の均衡:同盟国、競合国を問わず求めている。特に競合国の過剰生産や上述の経済慣行を問題視しており、競合国の政策転換を要求している。具体的には財政出動による内需拡大である。
  • グローバルサウスへの投資:中国に対抗し、欧州、日本、韓国と共同して投資する計画を立てる。

トランプ政権は決して不干渉主義ではなく、西半球、ついでアジア地域を重要視しており、重要度に応じて戦力を再構築する構えである。トランプ大統領はベネズエラ攻撃に関し「中国による台湾侵攻の前例にはならない」と言及している。

イランやイスラム国へ対応しており、ウクライナ戦争にも介入しており、覇権国家から降りる気はない。西半球以外では同盟国に抑止力を担うよう要求している。欧州ではNATOを維持するものの、欧州各国の自立した運営を要求している。その間に国力をリカバリーし自国の世界におけるGDP占有率を向上させ、中国の頭を抑え、覇権的な地位を維持したい意図が見える。

【関連投資分野について】

国家安全保障戦略で重要視されている分野を確認しておく。ちなみにこれらの分野は高市政権の重点17分野にも重なっている部分が多い。

  • AI、バイオテクノロジー、量子
  • 半導体
  • レアアースサプライチェーン
  • 防衛
  • エネルギー(石油、石炭、天然ガス、原子力)

AIはバブルの懸念が生じているが、米国が国家安全保障上の戦略に位置付けている以上当面の間は投資が続く可能性が高いだろう。ただし、株価が高水準で推移していることは確かなので注意は必要である。

【まとめ】

日本は米国の戦略に完全に巻き込まれており、中国という米国最大の競合国に接していることもあり、今後様々な影響が予想される。国家安全保障戦略を読むと、一見すると荒唐無稽なトランプ大統領の言動が全て戦略に沿ったものだと分かる。

日本は同盟国としてこれまで以上にアジアで抑止力を発揮することを求められそうである。今後、防衛、先端技術、重要鉱物、経済的自立に向けた投資は増加が予想されるので、備えておいて損はないだろう。

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青髭
青髭
会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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