【日本株】実質賃金と日本株について
12月6日に厚労省が発表した毎月勤労統計によると、3ヶ月ぶりに日本の実質賃金はマイナスを脱却した。実質賃金で経済の全てが決まる訳ではないが、日本のGDPの過半を占める個人消費のことを考えれば大変重要である。今回は実質賃金を軸に日本経済の今後と日本株について考えていきたい。
【実質賃金について】
実質賃金は端的に以下のように表すことができる。
実質賃金=名目賃金ー物価の変動
例えば、今回発表された10月分の実質賃金は前年同月比で名目賃金が+2.6%、CPIが+2.6%だったので、プラスマイナス0というわけである。(マイナス圏から脱却)
名目賃金は一言で表すと額面の賃金であり、実質賃金は家計において最終的に自由に使えるお金とも言える。支払われる賃金が増加しても、それ以上に物価が上昇して手元に残るお金が増えなければ、生活は豊かにならない。そして新たな投資やサービスが生み出されるのを阻害する。
日本は今年の6月まで過去最長の27ヶ月連続で実質賃金がマイナスだった。いくらインフレの時代と言っても異常である。
過去を振り返っても、1999年から2023年まで、先進国で実質賃金がマイナスだったのは日本とイタリアのみであり、英米に至っては実質賃金が1.3〜1.4倍になっている。米国は物価高のイメージがあるが、現在も実質賃金プラスの状況が続いている。米国経済の堅調さの裏付けになっている。
日本とイタリアに共通しているのは、グローバル化での対応時に、他の先進国と異なり安価なサービス提供を新興国と競ったことにあるだろう。高付加価値のサービス、製品の提供に投資すべきであり、過去の実績から、それは政府が支援できても意図的に生み出すことは困難である。政府にできるのは新たな投資が生まれる環境作りであり、その意味で現在の実質賃金プラスへの取り組みは正しいと言える。(とはいえ、過去の失策については大いに反省すべきである)
日本の政財界は実質賃金の状況をようやく正面から向き合い始めており、昨今の賃上げ機運、物価引き下げ策から、実質賃金プラスの定着が見えてきている。名目賃金の上昇は堅調なので、日銀は12月あるいは1月に利上げする可能性が高いだろう。政府による燃料費の補助も続き、今後実質賃金プラスが定着する可能性が高まっている。
この流れは日本のGDPの過半を占める個人消費の追い風となる。
日本のGDP実質成長率は2024年は+0.2〜0.4%程度、2025年は+1%前後が見込まれている。2025年はより高い経済成長が見込まれる。
【まとめ 〜内需株がより有利か〜】
中国とインドは高成長が続き、有望な投資先に変わりはないが、一方で特に中国では成長スピードがやや鈍化している。アジア経済ではこの2カ国の存在感が大きいので、海外比率の大きい企業は若干注意が必要である(ただし、それでも日本より高成長なことには留意が必要)。
来年以降、相対的にやや日本の内需の重要性が増すと考えられる。トランプ政権の対中政策にもよるが、相対的に日本への投資が増加する可能性もある。
そう考えると、内需株がより有利になる可能性は高い。また、本格的な円高になるためには日本が米国以上に経済成長する必要があるが、米国の2025年の実質GDP成長率は2%前後と予想されており日本よりも依然として高成長だが、その開きは今年よりも若干縮小する。そのため、日米の経済状況に左右されるが、今後は穏やかに日米金利差が縮小していき徐々に円高方向に進む可能性が高い。その意味で内需株はやや有利と言えるだろう。具体的には銀行・金融、小売、航空等は相対的にやや有利である。
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