【原油】OPECプラスの動向と原油価格の見通しを考える
石油輸出国機構(OPEC)とロシア等で構成するOPECプラスは従前の計画通り10月から現在の減産の一部解除のため、増産を実施するという。この件については以下記事でも言及していた。
今回は原油価格の見通しと影響を受ける銘柄について考えていきたい。
【OPECプラスとは】
OPECプラスはサウジアラビアやUAE等の中東産油国とロシア等の非OPEC参加国で構成されており、世界の原油産出量シェアの内約50%を占めており、原油市況に大きな影響力を及ぼす。ただし近年はアメリカ、カナダ、ブラジル、ノルウェー等の非OPECプラス諸国の原油生産量が増加しており、OPECプラスの影響力は徐々に低下している。
OPECプラスの構成国も一枚岩では無い。各国の経済産業状況が異なるためだ。例えば、サウジアラビアは輸出総額の9割、財政収入の8割、GDPの4割を石油に依存している。一方でUAEの石油産業はGDPの3割程度と、比較的産業の多角化が進んでいる。とはいえ、構成国の多くにとって原油は経済財政の大きな柱である。過去には原油増産を望むUAEと価格維持を望むサウジアラビアの対立、ロシアとサウジアラビアの対立等があった。
【OPECプラスが減産一部解除予定】
今月に入りロイター通信等の各報道機関がOPECプラスの10月からの増産実施(減産の一部解除)観測を報道している。この決定自体は上記の記事内にもあるように今年の6月ごろにOPECプラスから発表されていた内容だ。また、6月時点での報道だと現在実施されいてる減産自体も2025年の年末を目処に解消する計画であるという。(ただ、減産の縮小や終了はこれまでも延期を繰り返していおり、市況の変動によってまた変化する可能性は高い)
減産を徐々に解消していくのであれば、当然原油価格は下がっていくものと思われる。
【原油価格の見通し】
原油価格の見通しを立てるのは難しい。市況の下落が続けばOPECプラスが減産維持等の何らかの策を講じてくる可能性があるためだ。今回は市況に影響を与えそうな要素を考察し今後の価格推移を推理していく。
- 主要な消費国である米国と中国の経済は減退している。(ただし、米国にはソフトランディング期待が存在)
- 米国の利下げによるドル安により原油価格を下支えする可能性(ただし、ソフトランディング達成時はドル安は穏やかになる)
- イランは国内でのハマス最高幹部殺害への報復を実施しておらず、イスラエルや欧米諸国との全面対立を避けている。新大統領も前大統領に比較して親欧米路線であるため、地政学的リスクは後退していると思われる。
- IEAの6月時点の予測だと原油需要は2029年をピークにその後縮小し、供給過剰になる。
- OPECプラスは現在の減産を10月以降徐々に解除し、2025年末に解消する予定。
- アメリカ、カナダ、ブラジル等の非OPECプラス国は増産傾向。
上記の内多くは既に織り込み済みの可能性が高いが、ソフトランディング期待が残っている米国経済の動向に大きく左右されそうだ。今週発表の各種経済指標で短期的には方向性が決定付けられそうである。
全体的には、消費側の経済は徐々に減退しており、供給側は増産傾向にある。原油価格の推移は抑制的に進むと考えて良いのではないか。
※9月7日追記:原油価格下落を受けて、OPECプラスは5日、予定していた減産幅縮小を11月末まで延長することを決定し、場合によっては撤回する可能性があることを発表した。市場の反応は限定的である。やはり、現時点では米国経済の行方に注目が集まっている、ということなのだろう。
【原油安は航空株にはプラス】
航空燃料は原油を元に製造されているので、原油安傾向が続くのであれば、当然航空各社には恩恵をもたらす。その他、海運業界、製紙業界、電力業界にも恩恵がある。
筆者は円高進行を予想しているので、その場合は日経平均の上値が抑えられることになる。全体的には積極的に買いに向かえる展開は続かないと思われるが、円高メリットと原油安メリットが重なる銘柄であればまだまだ投資妙味があると考えている。
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