【ドル円・日本株】円高か円安か、為替と株価を考える
参院選終了後、日米関税交渉が大筋で妥結された。日本の相互関税は15%とのことで自動車も対象の為、大幅な下げ幅となる。合意発表後、トヨタの株価は10%以上上昇した。国内の製造拠点は存続できるため、今回の日米合意によって、輸出企業、国内経済を基盤とする内需企業にも恩恵がある。
日米関税交渉が妥結した場合、筆者は株高、穏やかな円高を予想していた。23日に一旦円高に傾いたが、その後石破政権の退陣観測が出て再び円安基調になっている。
今回は円高、円安のどちらに今後傾きやすいかを考えて、株価の値動きに備えていきたい。
【ドル円の上値は重くなる可能性】
現在は円高、円安どちらも考えられる展開であり、予想は困難である。
それでもどちらかと言えば、中長期的にはドル円の上値は重くなりやや円高方向傾く可能性が高いだろう。ただし、極端な円高は考えにくい。
まず円安の要因をいくつか考えてみる。
- 政治的要因:石破政権の退陣圧力が自民党内で高まっており、後任が高市氏等、石破政権よりも金融緩和に積極的な人物になる可能性がある。今後石破首相が辞任した場合、後任決定までは円安要因になりうる。石破政権が存続した場合は若干の円高要因になるだろう。
- 円ロングポジション解消の動き:今年の2月以降、投機筋の円ロングポジションは積み上がっていたが4月下旬以降は徐々に解消に向かっている。まだそれなりの円ロングポジションが残っており、円売り圧力になりうる。
一方、考える必要があるのは、投機筋は昨年7月以降は基本的に円を大きく売っておらず、中長期的なトレンドが転換している可能性がある。この動きは日銀の政策転換の時期と重なっており、もしそうなら、しばらくは円ロングが基調となる可能性があるので注意すべきだろう。
続いて円高の要因を考えてみる。
- 日銀による利上げ再開:以前の記事でも触れているが、日銀が利上げを停止している最大の理由はトランプ関税である。日米関税交渉が妥結した以上、利上げ再開の障壁は無くなったと考えるのが自然である。日本のCPIは3%以上で推移しており、実質金利マイナスが続いている。秋以降の利上げ再開が十分に考えられる。
- FRBの利下げ:トランプ政権はパウエル議長に利下げ圧力をかけているが、利下げは実現していない。パウエル議長が任期中に解任される可能性は米国最高裁がFRBを擁護しており、低いだろう。恐らく、パウエル議長は米国の経済、雇用、CPIは安定的なので、直ちに利下げが必要とは考えていないだろう。ただし、仮にパウエル氏在任中に利下げが実現しないか、利下げ幅が僅かであっても、パウエル氏は来年にはFRB議長の任期を終える(任期満了後、理事として留まる可能性はある)。米国は諸外国に比較して政策金利が高いので、常に利下げ観測は燻り続けることになる。
- トランプ政権の意向:トランプ大統領は事あるごとに円安を牽制する発言をしている。日米関税交渉が妥結された後も米側は四半期ごとに合意内容を確認するとしており、確認の際に今回の合意とは無関係としても、極端な円安は米国の不興を買う可能性がある。日本としても極端な円安は望んでおらず、日米政府双方が望まない円安を市場が逆張りするかは不透明である。
政治が不安定になっており、石破首相の辞任や投機筋のポジション解消等、動きがあれば短期的には円安進行の可能性がある。仮に自民党の新総裁が選任された場合、状況によってはそのまま衆院選に突入する可能性もある。政治的不確実性が解消されるまでは為替は不安的な状況が続く事だろう。ただし、トランプ関税という日本経済への大きなマイナス要因が緩和されており、日銀の元々の利上げ基調を考えれば、中長期的には穏やかな円高基調を想定しておきべきだろう。
【株価は上昇基調継続か】
トランプ関税という企業業績への大きなマイナス要因が解消されており、日本のマイナス成長は回避され、日経平均株価は穏やかながら上昇を続ける可能性が高い。ただし、それでも15%の相互関税は残っており、影響度を今後発表される各社の決算で確認していく必要があるだろう。
【まとめ】
状況的には短期的にはやや円安、中長期的には穏やかな円高が考えられる。円安、円高どちらも極端に振れることは考えにくい。
株価は銘柄選択が重要になってくるだろう。輸出企業はトランプ関税による懸念は大幅に後退したが、それはマイナス面の解消以上の意味を持たない。とは言え、今後EUや中国等、他の国々が米国と交渉妥結した場合は海外に売上をもつ企業は若干恩恵を受けるだろう(海外売上が大きい企業は円高では下押し圧力になる。)。
やや円高になるのであれば、内需系企業は少し有利である。日銀の利上げが意識された場合は銀行もやや有利である。