【日本株】円高時の銘柄選択について
以前の記事で考察しているが、本日時点でもドル円週足チャートは52週移動平均線を割り込んでおり、コロナ後の円安トレンドが開始となってから52週移動平均線を割り込む期間が最長となった。また、FRB、ECB、日銀等の各国中央銀行の意思を鑑みるとこの傾向は続きそうである。
以前の記事についてはこちらを参照されたい。
現状で判断すると、円高トレンド形成の可能性が極めて高くなったと言えるだろう。日米はこれから大きな政治イベントを迎えるため、その結果によって影響を受けることが考えられるが、その影響とはトレンドを覆す程ではなく、例えば125円までの円高が130円程度に止まると言った微調整がかけられることになると考える。また、米国経済のソフトランディング期待(過度のハードランディング後退)についても、それは利下げ回数の減少を意味するものの、利下げをしない限り達成できないことには変わりはないので、やはり同様のことが言えるだろう。
昨日時点で140円台であったドル円だが日米金利差を考慮するといつ130円台に突入してもおかしくはない。少なくとも、この先1年程度は円高を意識したトレードが必要になる。今回は改めて銘柄選択について考えていきたい。特に以前考察した小売業と空運業について再確認しておきたい。
【円高メリット株】
前提として話しておくと、あくまでも為替は企業の業績を決める要因の一つに過ぎないということである。為替以前に提供している商品・サービスに対する需要があること、将来的にも成長を続けることが重要である。円高によってコストを下げたとしても、魅力的なものを提供できなければ成長を続けることは難しい。
また、為替による影響は企業個々によって大きく異なる。日本企業の多くがグローバル化しており、海外展開している企業が増加している。事業内容の比重がより国内に多くある企業の方が円高による恩恵が大きいと言える。
本格的な円高が始まる前の7月に筆者は円高メリット株として小売業、空運業について株価の推移を再確認しておこう。
<小売業の状況:2カ月前からの株価推移>
海外で生産されたものを国内で販売する場合、円高になると安く仕入れが可能になり営業費用を低く抑えることができるため、円高メリットが存在する。
- ニトリ:現在22610円。30%上昇。小売大手。海外売り上げ比率5%以下。
- セリア:現在3455円。11%上昇。100円ショップ2位。国内オンリー。
- パルグループホールディングス:現在2404円。41%上昇。3コインズを運営。国内オンリー。
- 良品計画:現在2538円。4%下落。小売大手。海外売り上げ比率41%。
- 日経平均株価:現在36581円。12%下落。
あくまでも、この2カ月の間だけだが、総じて小売業で成長を続けている企業は日経平均にアウトパフォームしていることがわかる。重要な点はどの銘柄もこの2カ月の間に発表された決算内容が株価に反映されていることである。また、円高による業容回復による期待も加味されていると思われる。
良品計画については日経平均をアウトパフォームしたものの、株価が冴えない状況が続いている。日経平均構成銘柄への採用、決算の上方修正、値上げ等の明るい話題の出尽くし感がある一方で、積極展開している中国経済の状況が著しく悪いためと考えられる。今後発表される本決算が今までの好調を維持でき、中国事業の懸念を払拭できる(あるいは今後を見通せる)内容であれば問題は無いだろう。
<空運業の状況:2カ月前からの株価推移>
空運業は整備費や燃料費、リース料をドル建てで支払うため為替による影響を受けやすい。また、国際線については2023年の日本人出国者数がコロナ前の半分程度にとどまっており円高によって回復が見込まれる。
- ANA:現在2995円。2%下落。国内最大手。海外売り上げ比率28%。
- JAL:現在2427円。7%下落。国内2位大手。海外売り上げ比率48%。
- スカイマーク:現在677円。9%下落。国内3位中堅。国内オンリー。
一応、日経平均にはアウトパフォームしているが、悲しいことに主要3社は全て下落している。航空会社の株価はコロナ後に総じて苦戦を強いられている。
空運業の営業費用は為替と原油価格に大きく左右され、企業努力だけではどうにもならない部分が多い。それだけに、現在の円高と原油安が反映されてくる第二四半期決算に期待がかかる。運賃の値上げは実施できているので、円高によるコスト安と日本人出国者数増加によって業績回復が見込める。
ニッセイ基礎研究所の「中期経済見通し(2023~2033年度)」によると、今後も訪日外国人の増加が見込まれ、需要は堅調に推移すると考えられる。航空会社はまだまだ割安感がある。
【まとめ】
円高メリット株を比べると企業によって株価の推移は大きく異なる。企業にとって、為替は一要因に過ぎないことを心に留めて銘柄選択を行う必要がある。一方で、下落している銘柄であっても日経平均に比べればマシであること、現在の円高が通過点に過ぎないことを考えればまだまだ投資妙味がありそうだ。特に空運業は円高の恩恵が第二四半期決算以降に業績へ反映されそうである。
小売業や空運業以外にも円高メリット株は数多く存在する。今後興味が湧いた銘柄については考察していきたい。
円高メリット株の多くは日本経済の影響を鋭敏に受けやすい。日本経済への状況に継続して目配りが必要である。
※トヨタを筆頭に円安メリット銘柄の株価はしばらくの間上値の重い展開が予想される。ただし、例えばトヨタは元々ドル円100〜110円の時代でも堅調に成長を続けていた優良企業であることを考えれば、今後も株価下落が続けば過小評価に至る可能性がある。その時は絶好の買い場になるかもしれない。
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