【円高メリット】スカイマークに注目する
各種経済指標を消化し、円高基調が続いている。現時点でドル円は1ドル145円である。米国経済が大幅に改善する可能性が低いことや、FRB理事が相次いで利下げに言及していることを考えると今後もこの基調が続くことだろう。
日本の企業の多くは今期の為替前提をドル円140〜145円に設定しているが、節目の145円はもう少しで割りそうである。今まで円高によって苦しめられてきた企業が本来の力を発揮する時期になってきている。
円高メリット株については従前の考えは以下の通りで、考えに変更はない。
今回は円高で恩恵を受ける航空業界の中でも今まで触れていなかった、業界第3位のスカイマークについてまとめていきたい。
【スカイマークの概要】
ANA、JALに次ぐ国内第3位の航空会社である。第3位と言っても、時価総額は500億円以下の小型株でグロース市場に上場しており、国内のシェアは7〜8%程度に止まり、上位2社とは規模のレベルで大きく引き離されている。
スカイマークといえば「LCC」を想起する方もいるだろうが、位置付け的には価格やサービスがANAやJAL等の「FSC」と「LCC」の中間である「MCC」になるように運営している。
羽田空港を起点に神戸空港や福岡空港等、拠点を絞り、航空機等の機材もできるだけ統一しコストダウン、効率化を図っているのが特徴だ。
現在のところ将来的な意欲はあるものの国際線は無く、国内線オンリーである。
【業績に連動して株価の低迷が続いている】
スカイマークは2015年に為替の影響を受けて破綻し、一度上場廃止になり、2022年12月に再び上場している。破綻原因にあるように、為替の影響を強く受ける。当然のことながら航空機の燃油費を調達しなかればならないので、原油価格にも業績が左右される。
スカイマークは今期の為替前提をドル円145円、ドバイ原油1バレル当たり80ドルで設定してる。為替や原油価格の感度は決算補足説明資料で公表している。
スカイマークは昨今の円安、原油高を受けて前期4Q、今期1Qが営業赤字となった。円安基調が続いていたこともあり、株価は8月20日時点で674円と低迷し年初来33%下落、上場時(1300円前後)からは約半値になっている。
上場している東証グロース市場自体も低迷しており、東証グロース250指数は過去10年で比較しても現在が最低値レベルの株価水準である。
上記のように株価は低迷している状況だが、逆風であった円安と原油高が解消されつつあり、割安感が強まっている。
【スカイマークに投資妙味がある理由】
投資妙味がある理由を整理してみる。
- 中東情勢の緊張緩和、OPECプラスの減産縮小方針、中国経済と米国経済の減速により原油価格が落ち着いてきており、8月に入りドバイ原油が1バレル当たり80ドルを割り込む日が発生している。
- 今年4〜6月のドル円は平均して155円前後で推移していたが、円安は解消しつつあり、前提為替の145円を下回る可能性が出てきている。
- 座席利用率は昨年を上回っており、提供するサービスに対する需要が堅調であること。また、昨年から今年にかけて運賃値上げに成功しており赤字であるものの、事業収益は過去最高である。
- 2024年3月期の決算説明補足資料によると、年間の為替や原油価格等の市況要因による営業利益に対するマイナスが前年比81億円発生している。2024年3月期の経常利益が74億円だったことを考えると、市況要因が解消された場合のインパクトが大きい。
- 主要な拠点の一つである神戸空港の拡張が2025年春に見込まれている。
- 将来的に国際線の就航に意欲がある。
- ANAやJALと比較して、今までの株価下落率が大きく逆に考えると伸び代が大きい。また、国内線しかない為、円高の恩恵をより受けやすい正味の内需株である。
- 機材整備等の費用発生が前期と今期に集中しており、来期以降業績の改善が見込める。
会社予想のEPSは71円である。PERが10倍だったとしても株価は710円となる。700円を割る現在の株価は十分割安ということになる。この予想は、会社想定以上に業績が着地しないといけない点で注意が必要だ。一方で会社発表によると1Qは赤字だったものの業績予想に対する進捗状況は想定通りとなっており、現在の為替等を考慮するとその確度は高まってきていると言えるだろう。
為替と原油価格等の市況状況が今後改善した場合、上振れも期待できる。
【注意すべき点】
手放しで買い向かえる状況でないことに注意が必要だ。こちらも整理してみる。
- コロナ禍でそれまで無かった有利子負債が300億円程度発生しており、発生した利益の一部は債務返済に充てられる。(ANAとJALも金額は異なるが同じ様な状況)
- 米国景気の後退が懸念されており、相場全体の不安定な状態が続く可能性が高い。特に9月の雇用統計に十分注意する必要がある。
- 日銀が利上げを継続するリスクは依然解消されておらず、利上げによる円高の恩恵は大きいが、一方で返済する利子が増加する可能性はあり。また、一般論としてグロース株等の小型株は財務体質が盤石でないので、利上げによる逆風を受けやすい。
- 米国経済がソフトランディングした場合、さほど円高にならず、株価が上昇したとしても日経平均にアンダーパフォームする可能性がある。
米国経済に対する相場感は以下の通りである。スカイマークも例外なく影響を受けることだろう。
【まとめ】
今回紹介したスカイマーク等、内需株は今後投資妙味が増していきそうだ。値頃感ある株は慎重に買い向かっていきたい。ただし、日米の相場全体を考えるとまだまだ警戒すべき時期が続きそうだ。
雇用統計が最大の山場になりそうだが、経済指標一つ一つに市場が一喜一憂する日々が続くことだろう。