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【ドル円・日本株】ベッセント財務長官の発言から考える、トランプ政権の経済政策と日本への影響

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トランプ政権は関税発動等の経済政策を実施しており、全世界に影響が波及している。

日本への影響だと4月2日に発動予定の自動車への関税(25%)や防衛費増額の影響が懸念される。今回はトランプ政権の主要閣僚であるベッセント財務長官の過去の発言内容を読み解き、トランプ政権の関税等の経済政策とその影響を考えていきたい。

【ベッセント財務長官(米国)の発言】

ベッセント財務長官は6日に米国で講演を実施しており、その時及び過去の発言内容からトランプ政権の政策について考えてみる。
尚、ベッセント財務長官は元ソロスファンドのマネージャーであり、経済金融に精通している人物である。氏はトランプ氏と大統領選の最中で急接近し、トランプ陣営に対して経済や金融に関する助言を行ってきた。

各種報道からベッセント氏がの発言内容は概ね以下の通りである。

  • 財政赤字の改善:関税の発動、歳出削減により実現。政府支出を削減する最中で混乱が発生する可能性について言及。経済は「デトックス期間」に移行。ただし、デトックス期間への移行は景気後退を意味しない。
  • 関税の影響:価格転嫁は1回きりであり、影響は一過性。
  • 債券利回りについて:日本、欧州が急上昇している中で米国は下落しており、住宅ローン金利も下落。
  • 原油価格:下落するよう政策を推進。(就任前の発言から)

この他、規制緩和、減税、制裁にも言及があった。

読み取れることとして、重要な点は財政赤字の解消による米国債への信任回復とインフレ沈静化を考えていることである。

ベッセント財務長官は過去に「強いドル政策の継続」や「ドルの基軸通貨としての地位を維持」について言及している。財政赤字の縮小はドルと米国債への信任回復のためには避けられない政策なのかもしれない。

関税については、貿易戦争に発展しない限り一回のみの価格転嫁で済み、輸出元が外国企業の場合は生産国に皺寄せが発生することを考慮して、一過性としているのだろう。

米国は世界最大の市場なので、米国以外の国々にとっては一大事である。筆者もここまで果断に政策を実行するとは思っていなかった。

【日本経済への影響】

影響として関税と防衛費の増額が挙げられるだろう。このままいけば、4月2日から自動車へ25%の関税が発動される。自動車関連に関わる数字を確認しておく。

・日本のGDPに占める輸出の割合は約17%である。
・日銀によると実質輸出の対実質GDP比率は概ね5〜6%である。その内、輸出先では約2割は米国が占め、品目別では23.6%を自動車関連が占める。
・自動車関連産業が占める名目GDPの割合は概ね2.5%程度である。
・自動車関連産業の裾野は幅広く、日本の就業人口は2023年時点で558万人と約8.3%を占める。

トヨタで考えてみると、2024年の販売台数は1082万台であり、その内年間約200万台を日本国内から輸出しており、米国向けは約70万台である。25%の関税だと、単純計算で一台400万円の車が500万円になるので大きな影響である。トヨタの営業利益率はここ数年8〜12%前後で推移しているので、関税の影響分を全て国内の効率化で賄うのでは困難だろう。企業単体で考えると大きな影響である。

上記を踏まえると、冷静に考えれば米国向けの輸出が大幅に減少したとしても、日本経済全体への影響はあるものの、致命傷とまでは言えないだろう。日本はGDPに占める輸出の割合が比較的大きくなく、経済複雑性の高い国であることが幸いしている。

一方で、仮に自動車輸出の内、トヨタの割合通り約30%が米国向けであり米国向け輸出を全て失った場合、実質GDPの約0.4%下押しされることになる。2024年の日本の実質経済成長率が0.5%、2025年の政府予測が1.2%程度であることを考えれば、少なくない影響である。

防衛費増額については米国側はGDP比3%以上への増額を求めている。現状から1%以上の増額になるので、実行した場合の影響度はどちらかと言うと防衛費増額の方が大きい。日本の防衛産業の規模は約3兆円と自動車製造業の56兆円と比較にならないくらい小さい。つまり、産業として育っておらず、大半を輸入に頼ることになる。結果として、防衛費増額による財政赤字拡大はGDPの下押し圧力になるだろう。

今までの歴史や政策の積み重ねを考慮する必要もあるが、国際情勢を踏まえると、防衛産業を育成し後押しする政策へ大きく転換すべきである。

今のところ、関税は予定通り発動、防衛費増額は日本政府が拒否しているが、今後変化する可能性も高い。今後の動向を注視する必要がある。(とは言え、日本に対する関税については米国企業に大きなマイナスが無い限り、実施される公算が大きいだろう。発動後の交渉で下げられる可能性はあるかもしれないが、予測困難である)

【為替への影響】

トランプ政権の経済政策は、日本単体で考えれば円安への圧力になるのではないか。経済成長にマイナスであり、日本の財政赤字を拡大させる為である。ただし、日本がマイナス成長になることまでは考えにくい。4月以降に影響を見極めることになるだろう。

トランプ政権の政策は、関税、防衛費増額要求、経済制裁、エネルギー価格低下の志向等、基本的に諸外国に対して財政赤字、貿易赤字を求めるものである。その為、クロス円については影響は不明瞭ながら、対ドル程には下落せず、日銀の利上げ基調を考えれば相対的に円高になる可能性はある。

【まとめ 〜世界経済リバランスの可能性〜】

ベッセント財務長官の6日の講演内容を要約すると、諸外国の需要不足と防衛費不足を米国が財政赤字を拡大することで補ってきたが、これを是正するとしている。つまり、今まで担ってきた米国の政府支出や財政赤字を諸外国に負担させ、供給については米国内の企業や生産拠点で賄うことを目指すことになる。そう考えれば、トランプ政権の政策には一貫性があり、違和感が無くなる。

諸外国は需要不足を急に補うことは難しく、利下げと財政赤字拡大によってバランスを取るようになるだろう。財政赤字の拡大には限界があるので、最終的には需要不足により、世界的にディスインフレに傾く可能性がある。また、ドル高が続く可能性も高くなる。

日本経済へも少なく無い影響をもたらすが、日本の経済成長率や経済複雑性を考えれば相対的には有利である。世界的なディスインフレは日本の貿易赤字を縮小し、内需関連企業を後押しすることだろう。また、日本企業による対米投資は2024年に過去最高を更新しており、首位を維持している。その意味でも相対的に影響は受けにくいだろう。ただし、ミクロの視点では、自動車産業関連銘柄や輸出銘柄には細心の注意を要する。

トランプ政権が現在の対中政策を維持する限り、日本への要求は比較的穏当に済む可能性が高い。ホンダやアサヒビールの対米投資に関するトランプ政権の「間違った」発言が報道されているが、米国内向けには日本企業がトランプ政権に対応し、米国投資に寄与しているように映るかもしれない。

トランプ政権の政策決定については、まだまだ不明瞭な部分が多い。今後の決定に注意していきたい。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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