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【ドル円・米国株・日本株】米国雇用統計結果と株式市場、インフレ再燃リスクついて

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1月10日に米国で12月雇用統計が発表された。結果は米国労働市場と米国経済の好調さを裏付けるものであった。結果を受けて、NYダウは1.63%安、日経平均先物も1.1%安でそれぞれ反応している。

筆者が恐れていたインフレ再燃リスクが浮上しつつある。今回は米国雇用統計の結果を振り返り、株式市場とインフレ再燃リスク、ドル円への影響について考えていきたい。

【12月米国雇用統計結果】

1月10日に米労務省発表の雇用統計結果について振り返っておこう。結果は以下の通りである。

  • 非農業部門雇用者数・前月比:25.6万人 (予想16.4万人)
  • 平均時給・前月比:0.3% (予想0.3%)
  • 平均時給・前年比:3.9% (予想4.0%)
  • 失業率:4.1% (予想4.2%)

全体的に市場予想を上回っており、前回分までの傾向を合わせると米国労働市場は堅調かつ安定的だと言えるだろう。特に失業率が依然として完全雇用の水準にあり、前回より下がってきているのは注目である。米国経済は堅調であり、雇用も問題ないようである。

経済も労働市場も堅調であるならば、物価は下がりにくい事を意味する。次の焦点は来週発表のCPIだろう。ここでCPIが上昇することになれば、インフレ再燃リスクがかなり意識されることになる。いずれにせよ、今回の結果を受けてFRBはインフレ再燃を意識した金融政策を実行することになるし、それは利下げ回数の低下を意味する。

平均時給の前年比はCPIの伸びを上回っており、貧富の差が激しいとは言え、消費に回る可処分所得は確保されている。米国経済を支える個人消費が問題ないのであれば米国経済と企業業績は問題ないことになる。

【株式市場への影響】

雇用統計発表後、米国金利上昇に伴いNYダウは下落で反応したが、今後についてはいくつかシナリオが考えられる。問題なのはNYダウのPERはここ10年で見て高値圏であることだ。何かを契機に市場が崩れる可能性は大いにある。既にNYダウは昨年12月4日をピークに下落しており注意が必要だ。

まず、今後CPIも大きな変化が見られず安定化してきた場合、既に中立金利まで利下げがなされている可能性がある。その場合は、市場にはややネガティブである。ただし、既に市場予想は年内の利下げ回数を2回まで引き下げており、今回の雇用統計を踏まえてさらに回数が減少する可能性が高い。一旦ネガティブな反応が続くが、好調な米国経済に支えられた企業収益により、最終的には株価は回復すると考える。この辺りは企業業績と債権金利の綱引きになるだろう。いずれにしても市場の大崩れは避けられるシナリオである。

考えにくいがCPIが下落した場合は市場にはポジティブである。経済と企業業績の好調さも相まって市場はややバブルの様相になるかもしれない。

最後に今後CPIが上昇し始めるインフレ再燃リスクについてであるが、この場合は要注意である。このシナリオでは利上げ再開まで織り込みが進むので、株式市場には大きなマイナスとなる。ただし、複雑なのはそれでも米国経済は好調なことである。既にコロナ後の過剰貯蓄は消えており、米国経済と物価にバブル感は無い。順調な経済と企業業績に裏付けされた利上げは健全である。株式市場にとってはマイナスであっても、どこまでマイナスが続くかは不透明である。

米国は資産効果が効きやすい国なので、株式の下落が続けば経済に大きく影響を及ぼすことだろう。その場合は、過去最高を更新している米国の家計債務が重しとなり、連鎖的に経済や金融に悪影響を及ぼす可能性はあるだろう。

今後はトランプ政権の政策も絡まり、状況が複雑化していくことだろう。株式市場の不安定さは増す可能性が高い。全体的には米国株式市場が順調に上昇し続けるとは考えにくい。そして、株式市場が下落し、それが実体経済に影響を及ぼし始めたら要注意である。

【ドル円について】

雇用統計発表後、一時的にドル円は上昇したが、最終的には下落して終えた。
難しいところだが、高金利よる株価下落を織り込んでの動きかもしれない。ただし、現在の金利水準が続くのであれば、円高方向進んだとしても、ドル円は底堅い動きをする可能性が高いだろう。特にインフレ再燃となれば、160円台を目指す動きはあり得るかもしれない。

一方で、インフレ再燃リスクがそれ程でも無いとなれば、ドル買いは一旦落ち着くのではないか。それは円高基調への変換を意味するので、インフレ指標を注意深く確認していく必要がある。

【まとめ 〜日本株への影響について〜】

日本は米国株式市場に影響を受けるので、米国株の下落は日本株にとってマイナスである。その意味で、しばらくは日経平均全体にとって上値の重い展開が続くことだろう。

その為、個別銘柄の選別が重要になってくる。

日本経済は実質賃金マイナスから抜け出せていない。一方で大企業を中心に今年も賃上げが続きそうである。結果として実質賃金プラスが定着したら、日本経済は拡大し、日銀の1%までの追加利上げも実行されるかもしれない。(そもそも、1月に追加利上げの可能性はある)

特に若年層の賃上げや転職活動が今後も進む可能性が高い。インバウンドも好調が続くことが予想される。それらを背景とした銘柄を選ぶことが重要かもしれない。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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