【作戦会議室】秋に向けた日本株の戦略を考える
筆者は個別株に関しては100%日本株で運用している。日本の個別株だと決算書等の情報を集めやすく、投資先のことを理解しやすい為だ。
今まで考察してきた市場の状況を総合して、これから秋に向けた戦略を考えたい。日本と米国の状況については下記の記事でも言及している。日本経済への基本的な考えは7月時点と変化は無い。ただし、日銀が予想外に利上げを実施し円高が進んでいる。
【米国経済は大ピンチ、日本経済はまだ余力がある】
まず日米両国の経済状況をおさらいしておく。
米国は日本にとって輸出相手国として第一位、輸入相手国としては第二位である。多くの取引をドル建てで実施しているし、東証での外国人投資家の割合が多く米国市場に連れ安や連れ高が度々生じている。つまり、日本は米国経済、米国市場の影響を受けやすいのだ。
上記の記事にも記載しているが、米国経済の状況は芳しくない。このまま行けば、秋〜年末にかけてはっきりと景気後退や雇用情勢の悪化が観測され、FRBによる利下げが実施されることになる。過去の景気後退局面ではFRBの利下げが後手に回り1回0.5%以上の利下げを繰り返すことが何度かあった。(パウエル議長がコロナ後のインフレ局面を「一時的」と述べてFRBの対応が後手に回ったことを忘れてはならない。)
FRBの使命は「雇用の最大化」と「物価の安定」なので、今後の雇用統計で失業率上昇が加速した場合は大幅利下げもありえるだろう。
一方で、日本経済については家計が健全であり、7月の利上げや政府の補助により物価が下がり、実質賃金がプラスになると内需や個人消費が喚起されて、案外このまま持ち堪えつつ緩やかに回復していくのではないか。米国経済が失速すると大企業を中心に業績が悪化し、日本経済と日本株に影を落とす可能性がある。
日銀は今月の株価暴落で今後の利上げについて火消しに回ったが、基本的には1.0%程度まで利上げを行う意志を示している。
【ドル円の動きについて】
米国が利下げ、日本が利上げ基調である以上、現在のドル円下落(円高)基調は継続するだろう。貿易赤字等、実需において円売りが続いているのでベースは円安とする向きもあるが、そもそも為替市場において実需は1割程度であり残り9割は投機筋である。金利差の縮小がより意識されるのではないか。
多くの企業が今期のドル円為替想定レートを140〜145円に設定している。輸出企業を中心に円安メリット株には逆風になるし、輸入企業や内需株等の円高メリット株には追い風が吹いている。
【焦点は9月の雇用統計】
今月発表の雇用統計で予想外に失業率が上昇し、失業率の悪化のトレンド形成が意識されNYダウは大幅下落、日銀の利上げも重なり東証も大幅下落となった。今後の株式市場の動向や投資タイミングを考える上で9月の雇用統計が最重要と言える。
今後の米国経済のイベントだが、
- 8月14日:米国CPI発表
- 8月22日〜24日:ジャクソンホール会議(パウエル議長講演)
- 9月6日:米国雇用統計
である。
8月14日に米国物価の下落が確認された場合、雇用の安定化に視点が向けられるのではないか。ジャクソンホール会議でパウエル議長から今後の利下げについて市場にメッセージが発せられるはずだ。そして、雇用統計を受けて市場の動向が決定付けられるだろう。上記以外の経済指標も注意深く見ていく必要がある。
米国経済の状況を鑑みるとNYダウは上がる可能性より、下がる可能性の方が高い。そして日本市場も影響を受けて大荒れになるのではないだろうか。
【日経平均株価の下値はどこか】
もし米国市場の下落を受けて日経平均が下落するとして、下値はどこだろうか。現在日経平均のPERは14.5前後だ。大規模金融緩和が開始される直前の2012年は12前後だったことを加味すると現在値からあと20%程度調整はあってもおかしくない。その為、28000円程度までは下がることを覚悟しておいて良さそうだ。
これは仮定の話なので、各種経済指標を注意深く確認しておく必要があるだろう。
【まとめ〜今後の戦略について〜】
短期と中長期で分ける必要がある。
iDeCo等のインデックス長期積み立て投資はそのまま継続すべきだろう。過去の歴史を振り返ると米国市場も日本市場も一貫して上昇している。不景気の次は好景気が来るし、資本主義経済において大企業は前年利益を上回るよう計画が立てられるし、それに向けて施策を継続する。(それによって現場は大いに疲弊するわけだが。。。)。長い目で見ればインデックス投資は利益が出る構造だ。
短期や個別株だと事情が異なる。
現在の状況を精査すると、これから現金比率を大幅に下げたり、信用売買等にフルベットする行為は非常に危険でリスクが高いと言える。少なくとも今月の経済イベントを消化し、9月の雇用統計とそれに伴う市場の反応を見届けてからでも遅くないだろう。また、あまり根拠は無い話だが、歴史的に見て9月は日米の市場パフォーマンスが最も低い。
日本株は米国株よりは下がりにくいかもしれない。米国株から資金が引き上げられて日本株や債券等に資金が振り向けれる可能性もあるし、日本経済はまだ少し余力がある状況だ。
予想外に米国経済がソフトランディングに成功して、このまま株価が上昇し続けることもゼロではない。長い目で見れば優良株の株価は上昇していることが多い。その為、保有する株を全て売り払う行為も考えものである。
もし買い進めるとしたら、内需株、輸入関連株等の円高メリット株あるいは増収増益の優良株を慎重に買うのが良いと考える。ただ、今月の大暴落時もそうだったが、株価下落局面ではどの株も関係なく売られるので注意が必要だ。予め20%前後の下落は織り込んでおくと心持ちが穏やかだろう。
円高メリット株に関しては以下の記事でも言及している。