経済金融

米国株価の行方、米国経済の景気後退は回避できるのか?

yuta8068@gmail.com

8月5日に日経平均株価が4,451円急落するとその翌日には3,217円急騰し、どちらも過去最大の急落と急騰になった。市場は歴史的な混乱期に入っている。

原因は諸説あるが、ドル円相場の円売り巻き戻しが原因の一つだろう。これは日米両国の金融政策に変化が予想されるか、実際に変化が生じたために起きた。今後もこの傾向が続くのか、今回は特に米国側の状況を考えていきたい。米国景気後退とそれに伴う円高が進行した場合、日本市場も少なからず影響を受けるためだ。

日本側の要因は言うまでもなく7月の日銀金融政策決定会合での利上げと量的緩和縮小だろう。今週に入り日銀側が火消しに回っている状況だ。8日に公表された会合の「主な意見」でも今後の段階的な利上げが言及されている。個人投資家はこれまでの大規模な緩和状況に変化が生じつつあることを念頭におく必要があるだろう。

とは言え、未だ日本は諸外国に比べればかなりの低金利だ。欧米のような高金利政策を採る余力が今の日本経済にあるように思えない。そう思うとより米国の状況分析が今後の鍵を握りそうだ。

【米国の経済状況】

米国のGDPの内、実に個人消費が67.5%を占める。日本以上に家計の状況には気をつけるべきだろう。いくつか経済指標を確認しておこう。

  • 2024年7月時点で失業率4.3%(サームルール点灯)
  • JOLTS求人件数は2021年3月をピークに下落傾向
  • 2024年第一四半期GDP成長率は前年比年率+1.6%(2023年第三四半期をピークに下落傾向)
  • 米国家計の余剰貯蓄は2024年3月に払底(サンフランシスコ連銀調査)
  • 4〜6月期米クレジットカードローン残高、延滞率が過去最高(ニューヨーク連銀調査)
  • 7月労働参加率は62.7%と上昇傾向(ただし、コロナ前よりは低い水準)
  • コアPCEデフレータは下落傾向
  • NYダウPERは24程度

ざっと確認すると中々苦しそうだ。家計は高金利と物価高に苦しんでおり、余裕は無いもののローンを組んだり新たに働きに出ることで何とか消費を支えている状況が見えてくる。そしてローンを組むと高金利に苦しむという構図もありそうだ。個人消費は昨年までの勢いは無くなっており、それが企業収益を圧迫し求人件数減少、失業率上昇につながっているようだ。金利を上げると経済活動にブレーキがかかるので当然の結果である。

【サームルールについて】

元FRBエコノミストのサーム氏が考案した指標で「直近3ヶ月の失業率が過去12ヶ月の最低失業率から0.5ポイント上回る場合は景気後退に入った可能性が高い」と言うものだ。7月の失業率が4.3%だった為点灯となった。この指標の精度は極めて高く、過去の景気後退局面ではほとんどの場合点灯していた。

考案者のサーム氏は今回の点灯について、明確に景気後退に至っていない点を考慮して「リセッションに不快なほど近く、利下げが必要」と述べている。

これは過去の利下げ局面でFRBが後手に回ることがほとんどだったことを考えると真っ当な意見だろう。

【まとめ】

米国家計の状況から景気後退に限りなく近く、このまま行けば景気後退は免れないだろう。気になるのがNYダウのPERが24と比較的高水準なことだ。コロナ直前の水準からもまだ高く、歴史的にも現在の水準から高く保った期間は短い。また、7月8月の企業決算はまだリセッションを織り込んでいない為、今後株価が下落する可能性が高そうである。

市場は9月の利下げを予想しており、FRBもそれを示唆している。ただし、景気後退を伴う場合はその速度が現在の予想を超えてくるのではないか。そうなると、円高が一気に進むことになるので注意が必要だ。日本市場も大いに影響を受けることになる。

以上のことから、現在はかなり慎重な運用を行うことが大切だろう。

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青髭
青髭
会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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