【ドル円・日本株】トランプ政権の動向と円高トレンド継続の可能性について
ドル円は今年の2月中旬ごろに52週移動平均線を割り込み、以降、下落トレンドが続いている。トランプ関税により日本経済の成長率は下押しされ、日銀の追加利上げ観測はやや後退しているが、伴い円高が進んでいる。果たしてこのまま円高トレンドは継続するのか、今回は考えていきたい。
【トランプ政権の動向と、ここ1年間のドル円の動向を振り返る】
ドル円は昨年7月に161円台までの歴史的な円安を記録した。その後、8月ごろに米国雇用統計が発表されると失業率の悪化が示され、米国経済のリセッション懸念から急激な円高に進み、9月に140円台になった。
その後は米国大統領選挙で第2次トランプ政権が発足。年末にかけて、トランプ政権の経済政策への期待感から、株高と同時にドル高円安が進行した。トランプラリーの再来である。
その後、1月にトランプ大統領が正式に就任すると、一転して円高が進行している。
今年4月に市場関係者(というより、世界中)の予想を遥かに超える関税がトランプ大統領から発表されると、さらにドル安が進行。3月末には149円台だったドル円は、4月中に一時140円を割り込む局面もあった。
関税交渉について、米中間の進展が見られず、米中対立が世界的にも意識されている。
トランプ政権は規制緩和と減税を推進している。
実を言うと、順序や到達までの期間が異なるにせよ、これまでのトランプ政権の動向とドル円の動きは第一次トランプ政権時によく似ている。考えれば、同じ人物がトップの座についている。当然と言えば当然である。
第一次トランプ政権では、大統領選後から年末までドル高となったが、その後は2017年の株高ドル安、FRBの利上げ、2018年の米中貿易摩擦から2019年のFRB利下げまで、基本的にはドル安となった。ちなみに、原油価格も2015年とコロナ禍を除けば、基本的に就任期間中は前後の数年間と比較して原油安であった。
ただし、関税が世界規模になったり、米国が対中でより強硬になっている点は第一政権と異なる点である。特に対日関税は日本経済にとって明確にマイナスであり、日米交渉が長期化すると円安要因に成るだろう。
【テクニカル的には円高トレンド継続】
テクニカル的にはドル円は52週移動平均線を割り込み、円高が進行している。また、ソロスチャートもドル円と大幅な乖離がある。
今の所、円高トレンドは継続しそうである。
【まとめ 〜中長期的なドル円の着地点と日経平均株価について〜】
このまま円高トレンドが継続した場合、何処までドル円が下がるのだろうか。
以前の記事でも紹介しているが、1〜3年かけて130円前後までの円高は歴史的に見ても十分有り得るので、備えておくべきだろう。
また、日経平均株価についてだが、通常円高が進むと株価は上昇しにくい。第一次トランプ政権時に日本はアベノミクスであった為、基本的には株価は穏やかな上昇傾向にあった。現在日本は日銀が利上げ姿勢を示しているものの、政策金利は0.5%と主要国の中では緩和的な水準である。実質金利もマイナスである。その為、アベノミクス程ではないが、現在も比較的株価上昇の素地はあると言える。米国へ流れていた資金の一部が日本に向かうことも考えられるだろう。
仮に日米関税交渉がこのまま停滞し、自動車関税等が実施された場合、日本は輸出産業を中心大きなダメージを受ける。現に日銀は関税発動後、今年度のGDP成長率予想を1.1%から0.5%へ下方修正し、追加利上げを停止している。日米交渉の停滞は円安要因になるだろう。
一方で、アトランタ連銀のGDPナウは直近の5月1日では1.1%と、4月からは戻してきているが、関税発表前と比較すると半分以下である。実際にどの程度のGDP成長率に落ち着くのは不明瞭だが、米国は元々の経済規模と経済成長率が日本より大きいため、同程度の下方修正率でも、企業業績に与えるインパクトは米国の方が大きくなる。その上、米国は主要先進国の中では高い水準で政策金利を維持しており、利下げ幅は大きく残されている。そう考えれば、中長期的にはドル円の下落トレンドが継続してもおかしくはない。
円高トレンドは、通常は日経平均株価の上値を抑えることになる。特に自動車産業を中心に輸出産業や海外売上比率の大きい企業の業績は注意を要する。個別の銘柄選別が重要になってくるだろう。
兎に角、今後はトランプ政権と各国との関税交渉の行方、米国経済と物価動向が重要となる。注目を続けていきたい。
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