経済金融

【円高メリット・原油安メリット】離陸しない航空株の行方

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ドル円は142円台、WTI原油は64ドル台で推移している。
ドル円、原油価格両方とも前年を下回っており、特にドル円が穏やかに下落してきており、円高メリット株がが恩恵を受けやすい状況である。

円高メリット株については、当ブログでも何度か扱ってきたが、円高メリット株の中でも内需株と小売株は既に株価が上昇している銘柄が多くある。

今回は燻っている銘柄筆頭の航空株の行方を考えていきたい。尚、航空株については当ブログでも何度か扱っているので、そちらも参照されたい。

【各社の為替感応度】

航空各社の為替感応度と利益予想を確認してみる。

  • ANA:ドル円1円変動で±3億円程度収益変動。純利益1400億円予想。
  • JAL:ドル円1円変動で±3億円程度収益変動。純利益1000億円予想。
  • スカイマーク:ドル円5円ごとに1億円程度収益変動。純利益15億円予想。

各社ともに円安を前提に会社予想を出しており、直近ではドル円155円を想定している。期初よりは大幅な円安予想である。現在はドル円142円まで円高が進んでいるため、この傾向が続けば今後は恩恵を受けられることになる。

ちなみにPERも各社共に日経平均の14より低い値である。ANAに至っては10を割り込んでいる。元々、空運株のPERは低めに出る傾向にあるが、長らく円安、原油高が続いたためか、また地政学的リスクが世界的に高まっている影響もあり、市場からの航空各社への期待値は低めである。

ドル円の今後については、日銀が利上げ基調、米国がドル安を志向しているため、穏やかな円高に進む可能性が高い。

【原油価格の今後】

原油価格については様々な要因が複合的に絡んでいるため、予想が難しい。
ただし、事実として今年1月に1バレル77ドル(WTI原油)を高値に価格はピークアウトしている。原油安は空運株に恩恵をもたらす。
原油価格に影響を与える事柄を整理しておく。

  • OPECプラス:5月から増産予定。自主減産の縮小分である。尚、既に4月から増産は始まっている。
  • 石油需要見通し:OPECはトランプ関税による混乱を受けて、4月14日に石油需要見通しを引き下げ。(一方で増産は撤回しない不思議な状況)
  • 世界的な物価の動向:米国3月分のCPIとPPIは共にブレーキがかかっている。中国の3月分CPIはマイナス。英国、カナダ、EUは利下げを続けており、全体的にはディスインフレ傾向である。
  • 世界的な経済見通し:物価に通じる話だが、トランプ関税によって米国と中国の経済見通しが不透明に。元々中国経済は不調なので、拍車が掛かる恐れがある。一方で、関税の撤回や各国の交渉により、関税の影響が最小限となれば一転して原油高要因になりうる。(経済減速の織り込みが進んでいるため)
  • 地政学的リスク:ウクライナ戦争、米国とイランの直接交渉が変動要因。

全体的には原油安方向である。

トランプ関税発動後もOPECプラスが増産撤回していないのは少々不気味である。今までだと、原油価格下支えのために増産撤回を繰り返していた。撤回しない理由は不明だが、OPECプラス内での各国の思惑やシェア争い、或いは世界的にOPECプラスのシェアが低下しており、OPECプラスのみで減産する意味が薄れている等様々考えられる。

尚、現状の原油価格水準だと恐らくサウジアラビアの採算ライン(国家予算との均衡)は割っている可能性が高い。世界最大の産油国米国のシェールオイル各社の採算ラインは1バレル57ドル前後なので、その水準下がってくると、下がり幅が鈍くなる可能性はある。(ただし、エクソンモービルやシェブロン等の米国石油大手はさらに低価格でも採算を取ることが可能)

トランプ政権はエネルギー価格の低下を政策の一つに掲げている。簡単では無いが、様々な手を打って実現するようにするだろう。そう考えると、現在の水準から大幅に原油高になるとは考えにくい。

【まとめ 〜業績は堅調に進む可能性が高い〜】

航空各社は国際線の競争激化等厳しいビジネス環境に置かれている。
一方で、旺盛な訪日需要に加え、2024年の出国者数は2019年比で未だ23%低い水準である。日本人の海外旅行等はコロナ禍前の水準に戻っていない。この部分は伸び代と言える。

航空各社ともに売上高自体は過去最高を更新している。これは世界的なインフレの影響によるものだろうが、費用面ではインフレ以上の原油高と円安に苦しんできた。
今後営業費用を抑えられる時期になれば、収益面でも期待を持てるようになるだろう。

航空会社はインフラの一つとも言えるので、大幅な業績向上は望めない。しかし、円高の時代には堅調な業績と株価が期待できるセクターの一つである。

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青髭
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会社員、個人投資家
日本個別株に投資を続ける個人投資家です。本業が会社員のため限られた時間でしっかり成績を残し、本業に支障がきたさない事を念頭に投資を続けています。 経済、金融、投資に関する適切な情報発信を心掛けていきます。
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